なぜモーリシャス座礁日本貨物船の重油漏れは懸念となるのか?【環境汚染とインド洋はシーレーンをめぐる中国の海洋進出の舞台】

日本の海運会社、長鋪汽船(岡山県笠岡市)が所有する大型貨物船が7月25日(現地時間)、インド洋の島国モーリシャス南東部の沖合で座礁した。8月6日から燃料の重油が大量に流出している。周辺のサンゴ礁や海洋資源、観光産業への影響が懸念される。紺碧の海、サンゴ礁やラグーン、白砂の岸辺に、燃料が漏出し続けている。
 座礁した「WAKASHIO」は鉄鉱石などを運ぶばら積み船。全長は約300メートル積載重量は20万3130トンと大型。商船三井が長鋪汽船から用船チャーターし、中国江蘇省で積み荷を降ろした後、空の状態でブラジルに向っていた。
 約4000トンの燃料を積んでおり大小5つあるタンクの内、少なくとも1つから燃料が流出。そのタンクから仮に全て流出すれば1180トンの重油が海洋に流れるということで深刻な環境汚染が懸念されている。モーリシャス政府は環境上の緊急事態を宣言した。汚染は広範囲に及んでおり周辺にはサンゴ礁もあり沿岸には湿地を保全するラムサール条約に指定された区域もある。モーリシャスのラビン・ジャグナット(Pravind Jugnauth)首相は7日夜、「環境における緊急事態」を宣言、サンゴ礁や海への汚染を食い止めるため緊急支援を訴えた。海が暮らしと財産のすべてだ。

「わかしおが沈むことはモーリシャスにとって危険を意味する。わが国は座礁した船を再浮上させる技術もノウハウもない。フランスのマクロン大統領に支援を要請した」
 フランスは2020年8月8日、仏海外県レユニオン(La Reunion)から航空機および技術アドバイザーを派遣した。マクロン大統領はツイッター(Twitter)に「生物の多様性が危機的状況にさらされている。モーリシャスの国民に寄り添う」と投稿。ポワントデスニー(Pointe d’Esny)で座礁。
 座礁した船の周囲の広大な範囲の青い海に真っ黒な染みが広がっている。岸辺やラグーンに広がるビーチや繊細な生態系を抱えるマングローブ林がべとべとした濃い燃料に覆われる。

モーリシャス共和国はイギリス連邦加盟国。首都はポートルイス。インド洋のマスカレン諸島に位置するがアフリカ国家に分類される。19世紀にサトウキビ農園の労働力として移入されたインド系住民が過半数を占める。10世紀以前からアラブ人航海者達に知られ15世紀にはインド系とインドネシア・マレー系、1505年にヨーロッパ系としてはポルトガル人が初めて到達した。だいたい流れは同じ。
1638年にオランダがインド航路の補給地として植民を開始。オラニエ公マウリッツ(マウリティウスを英語読みでモーリシャス)の名にちなんでこの島を命名。
 主力産品となってゆくサトウキビの移入、農園の労働力としての奴隷移入などが行われたが植民地経営は成功せぜう1710年にオランダはモーリシャスから完全に撤退。レユニオン島を植民地化していたフランスが再植民、1715年にモーリシャスを占領してフランス島と名付けた。サトウキビのプランテーションのためにアフリカから多くの奴隷が移入された。1814年には正式にイギリス領となり島名は旧名のモーリシャスに戻されたがフランス人大農園主は島に残りフランス語が話される状況が続いた。1835年にはイギリス議会によって可決された奴隷解放が実行に移され奴隷解放によって不足した労働力を補充するために同年にインドからの移民の導入が開始された。1861年にはインド人はモーリシャスで最も多い民族となっていた。インド人が奴隷の穴を埋めた形。インド人系が議員に選出されるのは1926年になってから。
 1968年に英連邦王国として独立を達成。1992年には立憲君主制から共和制に移行。有力な政党としては、インド人ヒンドゥー教徒を中心にクレオールやムスリムにも一部支持を広げる保守の労働党(PTr)、クレオールを基盤とする革新のモーリシャス闘争運動(MMM)、そしてインド人ヒンドゥー教徒を基盤とする革新のモーリシャス社会主義運動(MSM)があある。アフリカ連合 (AU)、南部アフリカ開発コミュニティ (SADC)、インド洋委員会 (COMESA) に属する。南アフリカが最大の貿易相手国だがEUとの結びつきも強い。イギリス連邦の一員でもあり、フランス語圏でもある。
 モーリシャスの空気の質は、世界で最高の水準とされており、世界保健機関(WHO)が公表するAir quality indexでは、モーリシャスは世界2位とされている。日本にとっては遠洋マグロ漁業の中継・補給基地で日本船が停泊。2005年には観光客数は75万人、GDPの15.8%を占めていた。
 インドについてはモーリシャスの現地居住者の会社がインドで上げた収益への課税が免除(無税)されている。このため海外からのインド投資の44.24%(2000-2007年)はモーリシャス居住者籍の投資会社からのものでWEFで取材したこともある。住民はインド系(印僑)が68%、アフリカ系と白人の混血によるクレオールが27%、華人が3%、フランス系が2%である。インド系住民の多くはかつてクーリーとして渡って来た人々で、彼らの受け入れに使われた施設の遺構アープラヴァシ・ガートは、ユネスコの世界遺産に登録されている。モーリシャス人の信仰は、ヒンドゥー教が52%、キリスト教が28.3%イスラム教が16.6%。アフリカ諸国の中でヒンドゥー教が多数を占める国はモーリシャスのみ。

 中国海軍の艦艇11隻がインド洋に入りインドはベンガル湾とアラビア海などで大規模な軍事演習を実施。インドの核ミサイル搭載潜水艦が中国潜水艦に沈められてしまうことやインド洋を通るシーレーンが中国の攻撃にさらされることをインドは懸念する。インドは2016年にはアメリカ政府からディエゴ・ガルシア島、2018年にはオマーン政府からドゥクム港、フランス政府からレ・ユニオン島の海軍基地へのアクセス権を取得した。インド洋に中東から日本に石油を運んでいるシーレーンがあり日本にとって重要だが日本がインド洋に割ける艦艇はわずか。インドが十分な海軍力を持っていれば、日米は東シナ海や南シナ海により多くの戦力を集中させることができる。
 フランスの対応が早い理由は環境だけではない。 

 続きはこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください