アマビエは想像上の存在だが、インドではリアルの「予言者」がコロナを占う

インドの少年占星術師が予言した運命の日が迫っている、と書くとすでに術中にはまっているような気がするが、気にならないわけではない。日本でもアマビエの予言は社会現象として注目された。
 アマビエは日本に伝わる妖怪。海中から光を輝かせるなどの現象を起こし、豊作や疫病などに関する予言をしたと伝えられる。肥後国の夜ごとに海に光り物が起こったため、土地の役人がおもむいたところ、アマビエと名乗るものが出現し、役人に対して「当年より6ヶ年の間は諸国で豊作がつづく。しかし同時に疫病が流行するから、私の姿を描き写した絵を人々に早々に見せよ。」と予言めいたことを告げ、海の中へと帰って行ったとされる。
 
肥後国海中え毎夜光物出ル所之役人行
見るニづの如く者現ス私ハ海中ニ住アマビヱト申
者也当年より六ヶ年之間諸国豊作也併
病流行早々私シ写シ人々二見せ候得と
申て海中へ入けり右ハ写シ役人より江戸え
申来ル写也

弘化三年四月中旬

漫画家・水木しげるのアマビエは水面から半身を出した姿で腕を描き込んでいるのが特徴。水木しげるは、西洋では海の生物には全て予知能力があり、海から人魚が予言を告げる伝承も珍しくないことから、アマビエを西洋の人魚に近いものであろうという解釈を著書で述べている。西洋の人魚の予言の多くは不運の前兆のみである一方で、アマビエは予言のみならず疫病を治すことについても言及している点が、大きく異なるとも述べている。『水木しげるの ノストラダムス大予言で悪魔くんに仕える使徒の一員として登場している。水木しげる画のアマビエは、2020年6月に境港市民に配布された「境港市ふるさと応援地域振興券」(商品券)のデザインに採用。
 厚生労働省が作成した新型コロナウイルス感染症拡大阻止を呼び掛けるアイコン。アマビエをモチーフにしている。イラスト、漫画、動画、ぬいぐるみ、あみぐるみ、刺繍、フィギュア、スタンプ、こいのぼり、その他小物などを次々にSNSに投稿するという動きが起こった。
 日本の予言の主は想像上の存在だが、インドでは「予言者」が実在する。孔雀の羽と水晶玉で飾られた黄金色のオフィスで神秘的なヒーラーが天文学者として未来を覗き見する。「今、人々は自分たちの将来を本当に恐れています」。くすぶっている線香が机の上のアップルのラップトップに香りを広げる。流れる髪と額に大きな朱色の点。「彼らはどのように生き残るのだろうか?彼らには仕事があるのでしょうか?彼らのビジネスは存続するかどうか」。
 健康、財政、精神の問題の解決策を見つけようと、占星術師、タロットカードリーダー、信仰治療者に救いを求める。暗い現実と未来のうつの闇は深い。占星術師、パームリーダー、数値学者、タロットカードリーダーは、年間数億ドルの収益を生み出すと推定されている。料金は、手相占い師との簡単なセッションの100ルピー($ 1.50)から、人気のあるスピリチュアルガイドとの長いセッションの数千ルピーまでさまざま。
ある幼稚園のインド週間の特別授業で『アマビエとインドの神々』が行われたというブログの記述を見つけた。「アマエビじゃないよアマビエだよ」と子どもに語り掛ける。「インダス川の周りで起こった文明がやがてインドとなり、カースト最上位のバラモン教が変容する過程でヒンドゥー教になっていき色々な神様を取り込んで神様だらけな状態になっていったのです」わかりやすくまとまっている。シャーマンが瞑想する時に使っていたものが一般化したシンギングボウル。太めの木の棒で縁をくるくる擦るとフアーンギザギザと超音波のような不思議な音。どんどん大きな音になって響く。
星座を妖怪にたとえると乙女座はアマビエらしい。アマビエは、人魚のような姿で鳥に似たくちばしを持ち、「病が流行ったら私の姿を写した絵を人々に見せなさい」といい残して消えたという伝説を持つ妖怪。乙女座は、地母神とされる女神が星座になったという説があり、慈悲深さや生きものを守り育てる使命感を受け継いでいる。人々を疫病から守ってくれるアマビエと通ずるものがあるとのこと。星占いと伝説の共通項は疫病なのか。
 日本式アマビエもインド式占星術もどちらも想像力を掻き立てるが、不安だけではない厳しい現実があることも忘れてはならない。

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