服を着ながら肌が呼吸するカディの綿
Khadi is the Sun of the village solar system.
カディは村の太陽系における太陽だ。
ガンディーは、英国の機械織製品に対し、手紡ぎ・手織りのカディを纏うことで、その支配に対抗しようとした。チャルカの糸車を回しカディを作り続ける。精神的に自立。
布が好きという気持ち。手仕事を持続可能にする仕組み。インドの農村にテクノロジーを普及させる仕事。庭先に干してあるサリー。インドにとって布は一番古くて難しい産業。
アーツ・アンド・クラフツ運動(Arts and Crafts Movement)。美しいものに囲まれる生活。生活の中の美を取り戻す。昔から受け継がれている手仕事の意匠。技術。文様。花や植物、自然界の動物がモチーフとなる。美しいものは自然界のバランスに近づく。
チャルカーは綿花,羊毛,まゆなどから糸を紡ぐのに使う手動の器械。インド農村手工業。イギリスの植民地化過程で農村手工業は壊滅し手紡ぎ車も放棄された。1920年代の民族運動の中でガンディーがスワデーシー運動の一環として,農村経済自立を目指すチャルカーによる手紡ぎ綿糸とカーディー(手織綿布)の生産奨励に乗り出した。チャルカーが蘇生し国民会議派の運動となった。
イギリス産業革命が進行した18世紀末より、イギリス産機械織り綿布がインドに流入し、インドは綿布輸出国から輸入国に転換し貧困化が進行した。インドはイギリスに対して原料の綿花を生産するモノカルチャー的な状態となった。製品としての綿織物を輸入。インドはイギリス資本主義の原料供給地と市場として組み込まれ自国の工業発展の可能性を奪われた。
「織布工たちの骨はインド平原を白くした」
インド総督「この窮乏たるや商業史上にほとんど類例をみない。木綿織布工たちの骨はインドの平原を白くしている」と述べたのである。<吉岡昭彦『インドとイギリス』1975 岩波新書 p.84-86>イギリス産綿織物のボイコット
イギリス製綿布の流入によるインド農村の疲弊は1850年代のインド大反乱の背景となった。インド国内でも近代的な綿織物生産を行う資本が形成され国民会議派に結集して、1906年にカルカッタ大会四綱領を決定。イギリス製品に対する反発から英貨排斥・スワデーシ(国産品愛用)を提唱。国産綿布の復興が叫ばれた。
第一次世界大戦後の1920年代初めには、ガンディーの指導でインドの反英闘争が展開される。ガンディーは非協力運動を提唱し、まっさきにイギリスのインド支配の象徴であったイギリス製綿織物のボイコット運動を行い、自ら綿糸をつむぐ姿をインド人に示してインド産綿織物の使用を訴えた。
ガンディーは、1921年にインド国民会議に対してスワラージ(民族自決・自治獲得)運動の象徴としての旗のデザインを提案した。最初の旗は白・緑・赤のストライプに、スワラージや英貨排斥・スワデーシー(国産品愛用)の中心であった「糸車運動」に使われた、大量生産方式によって綿織物をインドにダンピングしたイギリスの機械文明に対抗する、伝統的な糸車を配したものであった。1931年に国民会議は新たなスワラージ旗を策定した。それは現在のインド国旗と同じサフラン・白・緑のストライプに、青の糸車を配したものであった。
アーツ・アンド・クラフツ運動は、イギリスの詩人、思想家、デザイナーであるウィリアム・モリス(1834年-1896年)が主導したデザイン運動。美術工芸運動。1880年代から始まった。ヴィクトリア朝の時代、産業革命の結果として大量生産による安価な、しかし粗悪な商品があふれていた。モリスは中世の手仕事に帰り、生活と芸術を統一することを主張しモリス商会を設立、装飾された書籍(ケルムスコット・プレス)やインテリア製品(壁紙や家具、ステンドグラス)などを製作した。
生活と芸術を一致させようとしたモリスの思想は各国にも大きな刺激を与え、アール・ヌーヴォー、ウィーン分離派、ユーゲント・シュティールなど各国の美術運動に影響が見られる。
日本の柳宗悦もトルストイの近代芸術批判の影響から出発し、モリスの運動に共感を寄せ、1929年、かつてモリスが活動していたケルムスコットを訪れた。柳の民芸運動は日用品の中に美(用の美)を見出そうとするもので日本独自のものであるが、アーツ・アンド・クラフツの影響も見られる。
チャルカで紡がれた糸は、「S」字方向にねじれがあり、通常の締め付ける方向に糸を撚ると、糸にはより撚りがかかる。紡績機で紡がれた糸は、「Z」字の方向に反対の撚りを持っている。紡績機で作られた糸の撚りよりも小さく、ねじれが少ないため、吸収特性高くなるという。カディの「糸むら」は風を通しやすく、吸収性、速乾性に優れ、夏は涼しく冬は暖かい。
インドのサリーはシルク。カディ・コットンのサリーも多い。カディ製品に政府認証の証拠とし、KVICの文字。
服を着ていながら、肌が呼吸している感じ。タオル、ショール、赤ちゃんのおくるみ、夏がけ、ひざ掛け等、多目的。肌の弱い人、病気の人にインドならではの伝統工芸品。
コットンの歴史とあたたかさ。
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