インドの地理

インドにはわからないことがたくさんあります。ただなぜそうなったのか。しらべていくと答えを地理に見出せることも少なくありません。逆に地理をしらないといつまでたっても同じところを迷路のように彷徨うばかりになります。だから地理について、基礎となる知識を得ることはとても大切なことなのです。

インドの地理の特徴は多様性に富んでいることです。雪が積もる山岳地帯もあれば、ラクダが通る砂漠もあります。植物が生い茂る熱帯雨林や、川沿いの平野、それに高原もあります。北インド・中央インドはほぼ全域に肥沃なヒンドゥスターン平野がひろがり、南インドのほぼ全域はデカン高原が占めていて、西部には岩と砂のタール砂漠があります。東部と北東部の国境地帯はヒマラヤ山脈です。カシミール地方には、K2峰(標高8,611m)がそびえています。

どうしてこのような多様な地域が生まれたのでしょうか。それにはインドという国土の成り立ちから考える必要があります。世界で最も高い山はヒマラヤ山脈のエベレスト山。この高い山から海に生息していた生物の化石が見つかります。雪に覆われる山岳地帯はもとは海に沈んでいた土地が9,000 mも隆起してできたものなのです。

●ヒマラヤ誕生

この隆起が起きたのはなぜでしょうか。ヒマラヤ山脈の大規模な隆起は、大陸同士が衝突して押し合った結果、力の行き場が上に向いたことにより生じました。

現在のインドは、かつては独立した大陸で、インド洋の南半球に位置していました。それがプレートの動きとともに北上を続けました。約5000万年前頃にユーラシア大陸と衝突したのです。インド大陸はこの衝突のあとも北上を止めず、やがてユーラシア大陸を持ち上げながらその下にもぐり込み二段重ねの地殻を作り上げました。こうしてヒマラヤ山脈からチベット高原に至る巨大な高地、世界の屋根といわれる山岳地帯が出来たのです。インド領の最高峰はシッキム州と隣国ネパールの国境にあるカンチェンジュンガです。カンチェンジュンガは世界3位。ヒマラヤ山脈の峰の多くが万年雪を冠しています。

この山岳地帯は、ゴンドワナ大陸の一部が分離したインドプレートが移動してユーラシアプレートに衝突してはじまった造山運動により、中生代末から更新世(50万年前)にかけて形成されたものです。山脈に連なる世界の最高峰級の山々は冷たい季節風を遮断しています。山地を水源地とする河川は肥沃なヒンドゥスターン平野を流れます。山脈は侵入者にとって障壁ともなってきました。

プレートが移動してぶつかってできたインドの国土は逆三角形のような形をしています。インド洋に突き出したこの半島の西側にはアラビア海、東側にベンガル湾があります。インド洋を二つに分ける形になっているのです。カンニヤークマリは逆三角形の先端で、インド本土の最南端の港です。

●三つの河が作る水系と広大な平野

平野はヒンドゥスターン平野です。インダス川、ガンジス川、ブラフマプトラ川の3水系が生んだ広大な沖積地です。平野の面積は約70万平方kmで、幅は数百キロメートルである。

ヒンドゥスターンベルトは多数の河川が運ぶシルトが堆積した、世界でもっとも広大な沖積平野です。平野は平坦で樹木が少なく運河による灌漑が容易です。この地域は地下水も豊富であることが知られています。

●ガンジス・インダスのたまもの

この平野は世界でもっとも集約的に農業がおこなわれる地域でもあります。あ主要作物は米や小麦。トウモロコシ、サトウキビ、綿花も栽培されています。農業がさかんな地域なので、人口も増えました。この平野は世界で最も人口密度が高い地域にランクされています。

●西にあるのが砂漠

平野の西にあるのは砂漠はタール砂漠です。ラージャスターンにあるジャイサルメールはタール砂漠の中心地です。タール砂漠は大インド砂漠とも呼ばれています。インド西部にある熱砂漠です。パンジャーブ州、ハリヤーナー州、ラージャスターン州、グジャラート州の4州にまたがり、総面積は約208,110平方キロメートルにも及びます。
砂漠は国境を越えてパキスタンまで続き、チョリスタン砂漠とよばれます。砂漠は最西端地域では砂の砂漠ですが、それは一部で残りの地域では岩だらけの場所です。温度差は極端で夏は摂氏45度以上、冬は氷点下になります。年間降雨量は最西端で120mmと雨が降りません。ベンガル湾のモンスーン(南西風)が通らず、アラビア海からの南西風もアラーヴァリー山脈に遮られて沙漠に雨が降らないのです。

●南にあるのが高原

高原はデカン高原です。デカン高原は大きな三角形をしています。平坦で標高は300m-600mです。『デカン』というの名称はサンスクリット語で『南』を意味するdakshina に由来します。高原は西から東に緩く傾斜しているので、ゴーダーヴァリ川・クリシュナ川・カヴェリ川がベンガル湾に注ぎ、その北にあるナルマダ川がアラビア海に流れ込んでいます。
デカン高原は両ガーツ山脈の風下になるため半乾燥地帯です。植生は一部に落葉広葉樹林がありますが、ほぼ全域を針葉低木林が覆っています。夏の気候は暑く冬は暖かいところが多いです。

●南の平野は海沿い

海岸平野は東と西にあります。東海岸平野は東ガーツ山脈とベンガル湾に挟まれた細長い平野で、南はタミル・ナードゥ州から北は西ベンガル州まで広がっています。河川の三角州が平野に大きな面積を占めています。
西海岸平野は西ガーツ山脈とアラビア海に挟まれた狭い地域です。北はグジャラート州から始まりケララ州までを縦断します。幅は場所によるが50km-100kmです。小河川と沼沢が多く氾濫しやすいことで知られています。西ガーツ山脈を水源地にアラビア海に流れる河川は流速が高く一年を通じて水量が豊富です。河川が急流であるため三角州ではなく三角江ができやすい形になっています。
南部ケララ州にはマラバール海岸があります。落葉樹が多いことがこの地域の植生の特徴です。マラバール海岸湿潤林という珍しい生態圏があります。

●島は

次に島嶼部です。インドはラッカディブ諸島とアンダマン・ニコバル諸島という2島嶼を領有しています。いずれもインド連邦政府が連邦直轄地として統治しています。ラッカディブ諸島は、ケララ州の沖合200km-300kmのアラビア海に浮かんでいます。12の環礁・3の珊瑚礁・5の小島からなる。このうち10島は有人です。アンダマン・ニコバル諸島は、北緯6度-14度、東経92度-94度に位置しています。コルカタから1,255km、ミャンマーの首都ヤンゴンから約500kmであり、至近のミャンマー領の島まで193kmです。

アンダマン諸島は204の群島で、ニコバル諸島は、アンダマン諸島の南に点在する22の島です。インド最南端のインディラ岬は、このニコバル諸島にあり、インドネシアのスマトラ島まで189kmです。

インド半島の海岸に近い島では、旧ポルトガル領のディーウ島、ムンバイ市街がありインド最大の人口を擁する●サーシュティー島、ボンベイ港の●エレファンタ島、アーンドラプラデーシュ州のシュリーハリコータ砂洲島があります。アッサム州のマジュリ島は、ブラフマプトラ川に浮かぶ巨大な中州です。

●3つの河川

河川を見ます。インドの主要河川は3つの水源地があります。一つがヒマラヤ山脈・カラコルム山脈です。ヒマラヤ水系は氷河の融解水があるので、季節を問わず年間を通じて水流があります。他の2水系はモンスーン次第で乾季には流量が極端に減少します。12の河川が主要河川と分類されていて、総流域面積は2,528,000平方km以上になります。

ヒマラヤからジャンムー・カシミール州を経てパキスタンへと流れるのはインダス川とその支流です。

ガンジス・ブラフマプトラ・メガナ水系の流域面積は1,100,000平方kmでインド最大です。ガンジス川の源流はウッタラーカンド州のガンゴトリ氷河です。それがヒンドゥスターン平野を南東へ流れたあとバングラデシュに入ります。ヤムナー川とゴマティ川もヒマラヤ西部にはじまりヒンドゥスターン平野でガンジス川に合流します。ガンジス川の別の支流ブラフマプトラ川は水源地のチベットからインド最東端のアルナーチャル・プラデーシュ州に流入しています。その後、西に方向を変えバングラデシュでガンジス川に合流しています。ガンジス川のもうひとつの支流は、西に流れナルマダ川となってグジャラート州でアラビア海に流入しています。

三つ目の西ガーツ山脈はデカン高原を流れるすべての河川の水源地です。主要河川は、北からマハーナディー河口三角州を形成するマハーナディー川、ゴーダーヴァリ川、クリシュナ川、カヴェリ川で、すべてベンガル湾に流入しています。

湾として知られているのは、グジャラート州の東西にカンバト湾とカッチ湾です。タミル・ナードゥ州にはマンナル湾があります。海峡にはインドとスリランカを隔てるポーク海峡、アンダマン諸島とニコバル諸島を隔てるテンディグリー海峡があります。

岬は、インド半島の最南端コモリン岬(Kanniya kumari)、インド領の最南端インディラ岬、その他スリランカに近いラームセトゥ(ラーマの橋)、コロマンデル海岸のカヴェリ川河口デルタのカリメレ岬(Kodikkari)があります。

●世界7位の広さ

インドの陸地総面積は3,287,263平方kmあり、世界第7位の国です。国土の北端から南端までの距離は3,214kmあります。インド領の最南端はベンガル湾に浮かぶアンダマン・ニコバル諸島のインディラ岬です。

インドとパキスタンはジャンムー・カシミール州の領有を主張し、それぞれ一部を統治しています。インドはまた中国が実効支配するアクサイチンというラダックの一部地域の領有も主張しています。中国は、インドのアルナーチャル・プラデーシュ州の主権を主張しています。

●サンゴ礁の海もある

海を見ます。インド半島の西に、ベンガル湾はインド半島の東に、インド洋はインド半島の南にありす。小規模な海域としては、ラッカディブ海やアンダマン海がある。珊瑚礁はアンダマン・ニコバル諸島、マンナル湾、ラッカディブ諸島、カッチ湾の4海域にみられます。

●塩水湖、ダル湖

湖沼です。オリッサ州にあるインド最大の塩水湖チルカ湖が有名です。湾のような感じです。ジャンムー・カシミール州のダル湖はボートハウスが有名です。

●世界最大のマングローブ林

湿地帯は地下水位が高く地表が薄ら水に覆われています。海岸線で波による侵食や土壌流出を防ぐ働きがあり、暴風雨による破滅的被害を和らげる緩衝帯になっています。1987年には政府湿原保護計画を策定し、71の湿原を保護対象に指定しています。マングローブ林は三角江や小河川、沼沢地など汽水域となるインドの海岸線のいたるところで見られます。インドのマングローブ林は総面積4,461kmで世界のマングローブ林の7%を占めています。

シュンドルボンは、河口デルタは世界最大のマングローブ林です。ガンジス川の河口にあり、バングラデシュからインドの西ベンガル州に亘って広がっています。ここはユネスコの世界遺産に登録されています。ヒンディー語ではスンダルバンといいます。潮汐の水路となる汽水域、つまり塩水と真水の間の水が広がっています。そのほか干潟や小島もあるマングローブ林です。多様性の豊かな地域には多様性の豊かな動物もいます。有名なベンガルトラのほか、ワニやシカ、鳥やヘビもたくさんの種類がいます。

カッチ湿地(Rann of Kutch)はグジャラート州とパキスタンのシンド州にまたがる大きな汽水の沼です。淡水と海水がまじり合った塩分の少ない水が深く入り込んだ湾や河口部に広がっています。Rannはヒンディー語で『汽水沼沢』を意味します。モンスーンの季節には膝の深さほどに水が溢れる沼沢地となり、モンスーンの季節が終わると乾燥した土壌が現れます。

●4つの土

インドの土です。インドの土壌は、沖積土、黒土、赤土、ラテライト土、
森林土、乾燥砂漠土、アルカリ塩土、泥炭有機土の8種類に分類されます。このうちはじめの4種類が国土の80%を覆います。
沖積土はインドでもっとも多く、数々の河川が運ぶシルトが細粒化したものでです。沖積土は肥沃だが腐植土(有機土)や窒素が少なく、パンジャーブ地方からアッサム渓谷に至る大平野でみられます。
黒土はマハーラーシュトラ州、グジャラート州、マディヤ・プラデーシュ州のデカン洪水玄武岩地帯によくみられます。粘土の含有率が高く保水力に優れています。この特性から乾燥地農業に適し綿花や亜麻仁などが栽培される。アマ油もここから知ると面白い。
赤土は鉄分を多く含有し、タミル・ナードゥ州・カルナータカ高原・アーンドラ高原にみられます。
特に覚えておきたいのがラテライトです。
激しい降雨に見舞われる熱帯地方で形成されます。雨が土壌表層の水溶性物質を洗い流すと、土壌中の鉄やアルミニウムの水酸化反応が進行してケイ酸が少ない赤色土壌が出現する。紅土ともいいます。赤褐色の土壌です。ケイ酸分や塩基類の溶脱作用を経て生じます。溶脱作用というのは、土壌断面の一つの層位から物質が溶液となって移動し除かれることです。土の洗濯です。岩石から可溶物が染み出すのです。ラテライトは西ガーツ山脈地域、東ガーツ山脈地域、北東州の高地など降水量が多い地域に見られます。
森林土はヒマラヤ山脈、西ガーツ山脈、東ガーツ山脈など山岳地帯の斜面に見られます。落葉や腐植土から生まれたもので有機質が多く、茶やコーヒーが栽培に用いられます。
●原子力発電の燃料もある

インドは天然資源に恵まれています。国土の56%が耕作可能で地下資源も石炭(世界第4位の埋蔵量)、鉄鉱石、マンガン、雲母、ボーキサイト、チタン鉱石、クロム、天然ガス、ダイアモンド、石油、石灰石などがあります。ケララ州の海岸沿いにはトリウム鉱脈があります。採算ベースに見合う世界のトリウム資源の24%を埋蔵しています。原子力発電の燃料です。

石油はマハーラーシュトラ州とグジャラート州の沖合で生産されており、ラージャスターン州とアッサム州で油田が確認されていますが、国内需要の40%を満たすのみで大きくはありません。アーンドラプラデーシュ州の沖合では天然ガス田が相次いで発見され注目されています。アーンドラプラデーシュ州にはウラン鉱が、カルナータカ州には金鉱が知られています。

●春夏秋冬ではない4つの季節

気候です。ケッペンの気候区分によれば、インドは6つの気候区分で分割されます。西部の乾燥砂漠気候、北部の高山性ツンドラ氷河気候、さらに南西部や島嶼部の雨林を涵養する湿潤熱帯気候まで幅広いのが特徴です。
四季がありますが日本の四季とは違います。冬(1-2月)、夏(3-5月)、モンスーン(または雨季:6-9月)、モンスーン明け(10月-12月)。モンスーン以外の季節を乾季ということもあります。

●摂氏50度の暑さ

厳寒期に中央アジアから南下する季節風はヒマラヤ山脈に遮られるので北インドに吹き降ろす頃には暖まり冬の寒さは厳しくなくなります。夏には同じ理由でインドは暑くなります。北回帰線がインドの中央部を通過するのに気候的には国全体が熱帯地方のように暑くなります。緯度が高いのに暑いのにはこんな理由があったのです。

インドのこれまでの最高気温は1955年にラージャスターン州アルワルで記録された50.6℃です。オリッサ州で計測されたという55℃という数字もありますが最高なのがはっきりしていません。

夏には内陸では日中の最高気温が40℃を超えます。海岸部では湿度が高くなります。タール砂漠では気温が45℃を超えます。夏に続いて南西モンスーンがインドのほぼ全域に雨を降らせます。雨雲はタール砂漠にできる低気圧がもたらすものです。ケララ海岸を季節風が渡る時がモンスーン入りとされ、例年6月1日頃です。

●冬は実は寒い

南西モンスーンはベンガル湾風とアラビア海風の二つに分類されます。
ベンガル湾風は6月上旬頃にインド北東部に吹き始めデリーが雨季に入るのは例年6月29日です。アラビア海風は西ガーツ山脈の西側斜面に大量の雨を降らせ7月上旬にはインドのほぼ全域が雨季に入ります。北インドでは8月、ケララ州では10月にはモンスーンが終了します。

モンスーン後の短い期間は穏やかな天気が続く。北部では11月に冬が始まる。 冬は北インドでは11月、南インドでは12月下旬にはじまる。

インド半島の冬は、日中暖かく夜間は涼しいです。平野の一部では氷点下になり北インドでは霧がかかりやすくなります。これまでの最低気温はカシミール州で記録された-45℃というのがあります。

●多様性が生むすべての自然災害

自然災害です。
インドでは自然災害により多くの人命と財産が失われてきました。旱魃、洪水、サイクロン、崖崩れ、豪雨や豪雪など、自然災害のほとんどが起き、被害も甚大になります。夏には、砂嵐もあり、乾燥地方の砂塵を大量に撒き散らし農業に深刻な被害を与えます。霰も収穫前のコメやコムギをだめにします。

モンスーンの南西風が大量の雨をもたらし洪水が起きます。 ブラフマプトラ川などの河川の増水で流域にあふれ出した水が一帯を水没させます。ナイル川と同じように洪水は天然の灌漑と土壌の肥沃化をいう恩恵をもたらしますが、大きな洪水では数百万人の住居が奪われます。

赤道低圧帯で発生するサイクロンは海岸地方に大きな被害をもたらしてきました。インドの農業は農業用水をモンスーンに大きく依存しているので異常で水が不足すると、穀物収穫量が平年を下回ることになります。

過去に旱魃は周期的に起こりたびたびインドは大規模飢饉に襲われました。1770年のベンガル飢饉では旱魃地帯の人口の3分の1が死亡しました。。1876年-1877年飢饉では500万人以上、1899年の飢饉で450万人以上、1943年のベンガル飢饉では500万人以上が飢餓とこれに起因する病気で死亡しました。

●もとにもどって海のプレート

もとにもどって、海のプレートは大きな津波を起こします。
インド洋大津波もその一つということができます。