未来社会映画

ハチャメチャのCG映画と思わせておいて、AIに心が生まれるかを問うた前回作同様に未来社会の映画だった。名優ラジニカントも政界進出の憶測が絶えない。2019年10月25日の公開を見てきた。
 インドで2018年に大ヒットした映画『ロボット2.0』 。インドを代表する俳優のラジニカントが伝説のロボット「チッティ」を演じる。スマホの大群が怪鳥人間を襲う、前代未聞のパニック映画というので、普通は、スマホを通して収集された膨大なビッグデータという怪物が襲来し、人間性というもの存在への危機感をあおる。そんな映画をどう描くのかと期待していたら、スト―リーはまったくの正反対、いい意味で裏切られた。 
 低い通信費を背景にインドで急速に普及したスマホ。それが勝手に動き出し、集合体の生物のように、鳥の形をつくり、空へ飛んでいく。町じゅうのスマホが消え、人びとはパニックになるが、スマホはひと塊となり、巨大な怪鳥へと変身する。イナゴの大群や山のキノコが一つの生命体のように動くのを想起させる。そのエネルギーは「悪」。スマホの基準値を超える強い通信電波で鳥が飛べなくなったことに恨みを抱いて死亡した科学者の恨みのエネルギーが集合体を作るオーラになる。スマホはこの科学者(悪者)に破壊される悪者。設定はわかりやすいのだが、意味は裏返るので、何が悪いのかと考えだすと止まらなくなる。
 インドは、ヒンドゥー教のもとから、自然崇拝が強い国。一方で、IT先進国という矛盾した顔を持つ。ベジタリアンがいたり、プラスチックの使用を禁じたり、遺伝子操作作物や、原発への反対も強い。鳥を守る、という科学者の裏には、そんなインド人の深層心理が映し出される。そしてだからヒットする。
 映画の画面は、そんな理屈は別に148分の長丁場を、頭の中がぐらぐらするようなCGの過激なバトルシーンが何度もやってくる。ハリウッド映画『アベンジャーズ』(2012年)で知られる特殊効果製作工房「レガシー・エフェクツ」が特殊メイクとアニマトロニクスを担当した。翌日の朝は、あまりの音響で耳鳴りがした。
 ラジニカントが演ずるバシー博士は、高性能すぎるがゆえに危険なロボットとして前回作で封印たロボットのチッティを再起動させ、怪鳥退治に乗り出す。今回も天才科学者バシーと最強ロボット「チッティ」の2役を演じ分ける。そしてロボット3.0も。。。
 インドでは携帯の周波数の割り当てをめぐる不正が政治問題化した。それを暗に批判した大衆映画であることを忘れない。ヒットの理由は、それをインドの植木等のラジニカントが演じる。ドット。日本なら携帯電話会社を批判するような映画は協力企業もスポンサーもつかないだろう。一方で、この映画では、ホンダのロゴが露骨に画面をいっぱいにする。マサラ―ムービーにお決まりのダンスシーンがない映画にしたのかと思っていると、最後にまとめてたっぷり見せてくれた。
 製作費90億円は、歴史大作『バーフバリ』の前編後編を合わせた製作費73.5億円を上回る。インド映画史上最大の製作費。興行収入は、『バーフバリ 王の凱旋』(2017年)に次ぐ、インド映画史上歴代2位を記録した。
 元女優のジャヤラリタ州首相が逝去し、映画人政治家がいなくなったチェンナイの政治。今のインドで、モディ首相の人気を上回る人物の一人が、政界入りがささやかれているラジニカント。モディ首相への単独インタビューを行ったアクシャイ・クマールが憎しみの科学者を演じた。こちらも、注目だ。 ###

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