なぜ酒代わりに消毒液を割って飲み9人が死亡したのか?【インドでは密造酒による事故死が絶えない】

新型コロナウイルスの流行に伴う規制で酒屋を閉じたインドの町で、アルコールを主原料とする手指消毒液を飲んで9人が死亡した。アンドラプラデシュ州クリチェドゥで手指消毒液を水やソーダに混ぜて飲んだ人が意識を失い病院に救急搬送された死亡。安価な密造酒の摂取によるアルコール中毒が絶えないがそれすら手に入らなかったのか。

 アルコール依存症の人の中には、高血圧のために手指消毒剤を消費している人もいる。ロックダウンのためアルコールは入手できないが手指消毒剤は簡単に入手できる。アンドラプラデシュ州の中でもクリチェドゥは厳格な封鎖が行われている地域の1つ。アンドラプラデシュ州で報告されたコロナウイルスの症例は1か月で9倍に増加。同じ期間に国全体で約3倍に増加。

 インド北東部のアッサム州では、2019年2月21日、150人以上が死亡し、10人以上が逮捕される事件が発生した。「アッサムの悲劇」と呼ばれる。犠牲になったのは、密造酒を飲んだ茶摘みの女性たち。粗悪なアルコール飲料を飲み二つの地域で150人以上が死亡、治療を受けた患者も数百人に上った。多くが茶畑で働く作業員たち。
 インドでは正規のアルコールの値段が高い。闇マーケットで手に入る酒は極めて安いが密造酒が多い。世界保健機関(WHO)によると、インドの1人当たりのアルコール摂取量は、2005年の2・4リットルから10年には4・3リットルとなり、16年は5・7リットルと増えている。16年の世界平均は6・4リットルで、日本は8・0リットル。インドで消費されるアルコールは蒸留酒92%、ビール8%、ワイン1%。蒸留酒はウイスキーやラム酒のようにアルコール度の高い酒でとにかく酔いたい。密造酒業者は、安く濃い酒をつくるためにメタノールを混ぜる。戦後間もない日本でもメチル酒で失明や死亡が相次いだ。

 2019年2月7日にはウッタルプラデシュ州とウッタラカンド州で密造酒を飲んだ住民が相次いで体調不良を訴え108人が死亡した。有毒なメタノールが含まれる工業用アルコールを加工して味や色を付けてる。味わいよりただ酔うためだけのもの。グジャラート州は1960年5月から原則として酒の販売を禁止。ビハール州は2016年4月に「禁酒法」を制定し酒の消費そのものを全面的に禁止した。それが飲酒を地下に潜らせることになった。飲酒は強姦や暴行事件にもつながる。

 炭化水素の水素原子の部分が水酸基(-OH)になっている状態のものをアルコールと呼ぶ。炭素が1つのものを「メタノール」。炭素が2つのものを「エタノール」。炭素が3つのものが「プロパノール」炭素が4つのものを「ブタノール」。
 糖を酵母で発酵させて作る「発酵エタノール」は飲用に用いられる。メタノールは主に天然ガスから合成される。メタノールの使用用途は、化学薬品製造の中間原料やその反応をさせるための溶媒、工業用の洗浄剤、塗料のシンナー。とても飲めるものではない。メタノールは危険性が高いので消毒用途にも使用されない。皮膚についたら速やかに大量の水で洗い流す。メタノールが体内に入ると、代謝され、ホルムアルデヒドやギ酸が生成され視覚障害や失明、最悪の場合死に至る。毒物及び劇物取締法によって「劇物」とされている。
 メタノール毒性で意識レベルの低下、身体能力の貧弱化、嘔吐、腹痛が起きる。長期的な症状では失明や腎不全。メタノール中毒の多くはウインドウォッシャー液の誤飲後や自殺で発生している。
飲料への混入はアメリカでも起きた。2013年に1700件以上のメタノール中毒が発生。

 やけ酒やふか酒の原因から排除していかなければ事故はなくならない。

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