RCEP東アジア地域包括的経済連携交渉からインドが離脱した5つの理由【農業、中国、専門職、欧州、アメリカ】

東アジア地域包括的経済連携は、アールセップと呼ばれる。2020年11月15日に署名された。長かった。オーストラリア、ブルネイ、カンボジア、中国、インドネシア、日本、韓国、ラオス、マレーシア、ミャンマー、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの15か国。ASEANが10か国だから、それに東アジアの韓国と中国、オーストラリアとニュージーランドとするとわかりやすいかもしれない。つまり、インド以外のアジアの国々という感じ。ASEANとのFTAパートナー5カ国の協定。アジア太平洋地域の自由貿易協定。世界の人口の3割、世界のGDPの3割を占める。
 2012年にカンボジアで開催されたASEANサミットで、RCEP交渉が正式に始まった。インドは、当初RCEP交渉に参加していたが中国からの製造品やオーストラリアやニュージーランドからの農産物・乳製品のダンピング懸念を理由に、2019年に交渉から離脱した。
 なぜインドは脱退したのか。第3回RCEP首脳会議(2019年11月)では、インドを除く15カ国が全20分野の交渉を妥結したと発表された。この共同声明について15カ国のいわゆる「大筋合意」との見出しも踊った。しかしインド外務省のビジェイ・シン局長は首脳会議後の記者会見で「インド政府は首脳会合でRCEPに参加しない決定を伝えた」と述べ世界を驚かせた。中国が主導することになれば市場アクセスを巡る懸念が消えない。★①自国の農業、消費部門が影響を受ける。これはインドではとても大切。として参加を見送るもの。当時、好調な経済成長を続けてきたモディ政権で初めて景気が減速していた。★②莫大な対中貿易赤字もあった。インドの離脱を受けてインド抜きの協定ともいわれる一方、、インド離脱なら意味がないとして枠組みが崩壊ともいわれた。当時の梶山経済産業大臣は、11月5日「インドを含めた16カ国で署名を目指す」と述べた。RCEPは、協定の縛りが緩く、仲間づくりの第一歩を優先する枠組み。TPPなどとは比較にならない緩さ。二国間のFTAと矛盾しないようにするにはそうせざるを得ない。アメリカのTPP離脱で注目度が急上昇した。ところがところが肝心要のインドが離脱した。日ASEANの経済連携もあれば、二国間のFTAもあまたある。大事なことはインドを輪の中に入れることだった。
 実際にウォールストリートジャーナルのコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」は、「RCEPはインド離脱で張り子の虎に」との見出しを取った。シンガポール国立大学リー・クワンユー公共政策大学院のJ・クラブツリー准教授は「インドの離脱姿勢は歴史的な大失態」。地域の経済的な指導力を発揮したいというインドの目標と食い違いが生じると指摘した。RCEPの交渉開始時には中国が提唱したASEAN+日中韓という枠組みがあった。日本は、インド、オーストラリア、ニュージーランドを加えた16か国を主張、こうなると国際場裏の勢力争い。イデオロギー戦争の様相も呈することになる。自由貿易なのだから。中国としては米中摩擦の激化でRCEPにメリットが生じてきた。アメリカが参加しない貿易の枠組み。12月には安倍首相のインド訪問が予定されていた。そのタイミングでの脱退はドタキャンと受け止められた。インドの離脱については関税引下げ問題というより、★③専門職業の相互承認協定(MRA)だともいわれる。ASEAN+6のなかで日本は優秀な人材の移動の自由に踏み込めない。インドは国内景気の減速でモディ政権が農家の離反をきらった。そこを十分認識するべきだった。日本はインドを知る要の国なのだから。日本との貿易赤字が問題だ。先行合意という言葉もある。インドは戻ってくるのか。先行きは見えない。安倍首相の12月のインド訪問の中止は現地の治安悪化が理由。それがなければどうなっていたのだろう。対話を続けることでインドが妥結後に参加する可能性もないわけではない。ただインドはお仲間にはこだわらないお国がらだし、★④世界はインドに東にも中東、ヨーロッパと広がっている。結局、2020年11月の署名に参加しなかったインド。協定は発効日からインド加入に開かれている。インド以外の国は発効後18か月を経過した後に加入可能。インドがRCEP協定に加入するとの意図を書面により提出すればよい。インドはいつでも交渉を再開できる。

 RCEPは異例のオンライン署名となった。ベトナム政府が主催。中国はASEANやオーストラリアなどとの間ですでに貿易協定があるが大型FTAには参加していなかった。李克強首相は「地域経済の一体化がさらに進む」。民主党のバイデン前副大統領が次期大統領に就いても米国の姿勢に大きな変化はない。香港問題など海外との摩擦があ周辺国との結びつきを強めて国際的な孤立を防ぎたい。相手国の対中依存度を高める。RCEPの実現で★⑤アメリカはどうなるのか。バイデン氏はオバマ前政権でTPPを推し進めた。友好国による中国包囲網を目的にTPP復帰圧力が強まる可能性もあるが、民主党は米国の競争力の強化を優先させている。保護主義的な色彩を強めつつある民主党。自国ファーストの保護主義はトランプ大統領の専売特許ではない。インドがアメリカに倣ってもおかしくはない。

 成長著しいアジア地域に巨大な自由貿易圏を築く意義は大きい。世界に広がる保護貿易の防波堤を固める意味もある。
 インド離脱の影響の大きさよりも、離脱の理由を考えるべきだろう。

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