オバマ回想録での“評点”が注目されるインドの政治家【カマラ・ハリスは民主党のアメリカとインドをつなぐことができるのか】

11月12日午前8時20分から約15分間、菅義偉首相はジョセフ・バイデン次期米国大統領と電話会談を行った。冒頭、菅総理から、バイデン次期大統領及び女性初となるハリス次期副大統領の選出に、祝意を伝えた。日米同盟の一層の強化、「自由で開かれたインド太平洋」。バイデン次期大統領からは、日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットする旨の表明。コロナ対策や気候変動問題といった課題についても、日米で緊密に連携。
 モディ首相は、バイデン氏と電話で会談し、大統領選での勝利に祝意を示した。首相は米国の民主主義を高く評価し、戦略的関係の強化を約束した。2020年11月17日遅く、ツイッターで明らかにした。モディ首相は、米大統領選でテレビ局がバイデン氏の勝利を予測した直後にソーシャルメディアでバイデン氏に祝意を示していた。モディ首相はトランプ米大統領と緊密な関係を築いた。昨年はテキサス州ヒューストンの集会にトランプ氏とともに登壇。今年は出身地のグジャラート州でトランプ氏とともに大規模な集会を開いた。モディ首相は電話会談で、インド系移民の子どもであるカマラ・ハリス氏にも祝意を表明した。
 「次期大統領は首相の祝辞に感謝し、南アジア系の初代副大統領とともに米印戦略的パートナーシップを強化し拡大したいという彼の願望を表明した」とカマラ・ハリス。「Covid-19の封じ込め、将来の健康危機への防御、気候変動の脅威への取り組み、世界的な景気回復の開始、民主主義の強化など、共通の世界的課題について首相と緊密に協力。安全で繁栄したインド太平洋地域を維持。テロ対策への協力についての言及はなし。
 ラム・ナート・コビンド大統領は、米国のメディアが結果の予測に基づいて彼を勝者と宣言した直後に、バイデンにお祝いの言葉をツイート。バイデンは2014年のワシントン訪問中にモディに会い、当時のジョン・ケリー国務長官と一緒に昼食会いn参加している。昼食会で、バイデンは、「あなたは、この関係で達成した目標のいくつかについてキャンペーンを行った」11月7日の勝利集会でバイデンはカマラ・ハリスを「南アジア系の最初の女性」と呼んだ。
 米連邦議会でも女性が躍進し史上最多の当選となった。米国初の女性国防長官候補として名前が挙がっているミシェル・フロノイ氏。米国初の女性財務長官候補として名前が挙がっているエリザベス・ウォーレン米上院議員。米国初の女性財務長官候補として名前が挙がっているラエル・ブレイナード元財務次官。共和党女性議員は過去最多。ガラスの天井が一日にして打ち破られたとも。2018年の連邦議会選挙でも過去最多の女性議員が誕生した記録が塗り替えられた。
 バイデン氏が大統領首席補佐官に起用すると発表したロン・クレイン(Ron Klain)氏は、ハリス氏が「重要な」役割を担うことになるとしている。ポストに女性を大勢起用することになるのか。ドナルド政権では女性閣僚はわずか2人。イレーン・チャオ(Elaine Chao)運輸長官とベッツィー・デボス(Betsy DeVos)教育長官だけ。
 米議会の女性議員数は127人で割合は23.7%だが1月の新議会ではその割合は26%に増える。民主党女性議員は下院89人、上院16人の計105人、共和党は下院27人、上院8人の計35人。
 黒人といえば、バラク・オバマ前米大統領の回想録「約束の地」が話題となっている。マンモハン・シン元インド首相が称賛された。オバマ氏はシンを「インドの経済変革のチーフアーキテクトとして情熱に訴えるのではなくより高い生活水準をもたらし腐敗していないという評判を維持することによって人々の信頼を勝ち取った自尊心のあるテクノクラート」と絶賛。ネルー・ガーンディー王朝の50歳の相続人であるラフル・ガンディーについては適性または情熱のいずれかを欠いている学生であるかのように神経質で不定形な資質と厳しい一方、「賢くて真面目そうだ」。この回顧録では鳩山首相の評価も訳が注目された。微妙なニュアンスは原文でなければわからない。モディ氏については評を避けたようだが、ヒンドゥーナショナリストであるインド人民党(BJP)についてオバマは「BJPによって宣伝された分裂的なナショナリズム」についての懸念。オバマ氏はラフルの母親であるソニア・ガンディーを、「強力な知性」を備えた「賢い」人物と表現。
 カマラ・ハリスにはよく知られた蓮を意味する「カマラ(Kamala)」以外に「デビ」という名前もある。こちらの意味は女神。母という意味はない。
 カマラ・ハリスへの期待は早くも伝説の域に達しているのかもしれない。VOGUE誌がハリス氏の印象的な発言を集めている。以下引用。「移民によって建国されたアメリカを偉大にするのは、民主主義」「完全ではないかもしれませんが、アメリカは偉大な国であると私は信じています。そし「壁を破ることは、後世のために道をつくること」「母はよく私にこう言いました。『カマラ、あなたは多くのことにおいて、それを最初にする人になるかもしれない。でも決してあなたが最後にならないようにしなさい』と。だからこそ、壁を破ることに価値があるのです。壁を破ることは、何より後世のために道を作ることでもあるのですから」「あなたはパワフルであり、あなたの声は重要であることを忘れないで」「私が若い女性や女の子に知ってほしいことは、あなたはパワフルであり、あなたの声は重要なのだということです。人生やキャリアの中で、自分と似た人や自分と同じような経験を持つ人がいない場所に足を踏み入れることは多くあるでしょう。でもそこにいるときは、あなたは一人ではないことを忘れないでください。私たちはあなたと同じ場所にいて、あなたに拍手を送っています。あなたの声を応援しています。そしてあなたのことを心から誇りに思っています。だから、その声を使って強い心を持ち続けて下さい」
「黒人女性の問題は、すべての人の問題」「私はこれまで黒人女性初となる役職に多く就いてきましたが、その度に、記者などが私に近づいてきて、『黒人女性の問題について教えてください』と言われてきました。興味深いでしょう? そんな時、私は『今後の経済について聞いてくれてもいいですよ』『国の安全保障の話も大歓迎です』と返します。なぜなら、こうした経済や安全保障の話は、すなわち黒人コミュニティに多大な影響を与えるものだからです。シンプルに言えば、すべての問題は黒人女性の問題であり、黒人女性の問題はすべての人の問題なのです」「足を引っ張る言葉にとらわれなくていい。野望を抱き続けて!」「あなたに『出過ぎた真似をするな』と言う人がいるでしょう。そういう人は、過去に縛られ、未来の可能性を見る余裕のない人です。ですから、あなたはその言葉にとらわれないでください。そして常に野望を抱き続けてください」「リーダーたるもの、誠実かつ正直に語るべきです」「自分がリーダーであると主張するなら、リーダーらしい立ち居振る舞いが求められます。つまり、誠実さと真実に裏打ちされた言葉で話すべきだということです」「リードする許可を誰かに求める必要はない」「リードする許可を、誰かに求める必要はありません。これだけは覚えておいて下さい。いいですか、リードしたいと感じた時にリードするのです!」「沈黙することは差別するのと同じです」「真実を語りましょう。人々が抗議しているのは、アメリカでは黒人が人間以下の扱いを受けているからです。そしてアメリカは建国当時から、この国を悩ませてきた構造的な人種差別に真剣に向き合ったことがないからです。これを正すのは、全アメリカ人の責務です。誰も、漸進的な変化を期待するだけの傍観者であってはいけません。このような時代に沈黙することは、差別することと同義です」「過去数年間のアメリカが私たちの象徴ではないと証明しなければなりません」「戦い続ける皆さんが行っていることは、とても意味があることです。皆さんがいるからこそ、私たちはこの国の偉大な約束の実現に近づくことができるのです。しかしその実現には、これまで以上に働き、整理し、投票する必要があります。私たちは、11月3日の勝利以上のことを実現し、実行していかなければいけません。過去数年間の我が国の姿が、私たちの象徴や志とは異なるということを証明する必要があるのです」「最初かもしれないが、最後ではありません」「今日、私がここにいるのはある女性のおかげです。それは私の母シャマラ・ゴパラン・ハリスです。彼女はいつも私の心の中にいます。母が19歳でインドからアメリカに来た時には、このような瞬間が来ることなど想像できなかったでしょう。ですが母は、いつかアメリカにこのような瞬間が訪れることを深く信じてもいました。私は今、母とその世代の女性たちのことを考えています。この国を切り開き、歴史を動かし、今夜この瞬間を迎えさせてくれた黒人、アジア人、白人、ラテン系、そしてネイティブ・アメリカンの女性たちです。女性たちは全ての人の『公平・自由・正義』のために戦い、多くの犠牲を捧げてきました。黒人女性たちの声は、何度も無きものとされてきましたが、自分たちこそ民主主義の根幹であると身をもって証明してきました。ジョー・バイデンはこの国で存在する最も大きい障壁を大胆に打破し、女性を副大統領に選びました。これはジョーの人間性を見事に示すものです。私は副大統領となる最初の女性かもしれませんが、最後ではありません。なぜならこれを見ている全ての少女たちが、アメリカは可能性に満ちた国だと確信するからです」

 印米関係はむしろ緊張に向かうとの見方もある。トランプ訪印の際の米国製軍用ヘリや輸送機などの購入。2018年「通信互換性保護協定(COMCASA)」の締結。2020年10月の2+2の際の「基本的交換・協力協定(BECA)」。人工衛星などで収集した地形や地磁気などの地球観測データを共有し、紛争地の上空で巡航ミサイルやドローンを正確に飛ばすことができるようになる。オバマ政権の2016年に「相互兵站支援協定(LEMOA)」に調印。両国軍は艦艇や航空機の補給や整備のため互いの基地を利用できるようになった。トランプが発給を停止したIT技術者の「H-1Bビザ」は再開される可能性があるが、ラストベルト問題と同様、インド人技術者の大量流入で米国人の雇用が脅かされているとの警戒感は消えない。
 トランプによって国際関係は乱されたものの、外交の課題のありかはより見えやすくなったのかもしれない。

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