【イベント】日本インド学生会議に参加して

日本インド学生会議に参加して

NHK元ニューデリー支局長 広瀬公巳

カレーの人気はバターチキンがトップ。

講演の冒頭で行ったオンライン投票の結果だ。ほうれん草、豆など4つの選択肢から好きなカレーを参加者に選んでもらった。会議のテーマのSDGsとは直接の関係がない質問なのだが、コロナ禍のリモート開催で制約があるのなら、むしろ新しいことに挑戦し楽しく明るく議論できる場にしてみたいと思い、リモートならではの取り組みをしてみた。

題材をより身近な「映画」にしたのは正解だったと思う。外国を知るには、その国を訪れることが一番だが、それができない今、次の選択肢は映画になる。インド映画は、わかりやすいストーリーで社会問題の本質を描く。台詞も心に刺さるものが厳選されている。

講演では3つの映画を紹介した。『Toilet – Ek Prem Katha(トイレ ある愛の物語)』、『パッドマン 5億人の女性を救った男』、『ロボット2.0』。いずれも女性の地位や衛生の問題、環境問題などSDGsの問題と深く結びついている。単なる娯楽大作ではない。

映画を使った学生さんの最終報告はいずれも印象的だった。インドと日本の共通の課題を見つけ出し、交互に橋渡しをしながらのプレゼンテーション。個別の具体的な事例やグラフを使った情報を交えながら、SDGsの解決策案も示されていてどれも秀逸だった。

貧困や格差。シングルマザー。ネットいじめ。コロナ禍の中で差別にあう医療従事者。気候変動と激甚災害。エネルギー政策。食品ロス。ヒマラヤの氷河。様々なSDGについて、それぞれの思いを、それぞれの自分の言葉で語ったことが、特に貴重に感じた。

日本から参加の方には、これからもインドの社会問題に目を向けてほしいと思う。インドはSDGsの現場が余るほどにある。それを追っていくと、インドにとどまらず人類共通の課題を学ぶことができる。インドの場合、そうしたSDGsの課題が、あからさまに見える形で表れている。例えば、インドでは女性に対する酸攻撃の映画が公開された。訓練されたジャーナリストでも簡単に扱うことはできない難しい問題でも、インドの人々は目を背けようとはしない。問題を隠さず共有することよって解決策がより早く見つかることもある。

インドから参加した方には、日本のアニメにもっと注目してほしい。インドでは新海誠監督の絵映画『天気の子』が公開された。これは自然との向き合い方をテーマにした作品だ。環境破壊を考える際にはデータや科学の論理性だけではなく人間の直観も大事になる。日本のアニメは聴衆の感性に直接訴えかける。その源流に流れる自然との調和は、インドが得意とする部分でもある。インドと日本が共有できる非常に大切な感覚だ。

参加した皆さんは議論を重ね共同作業をすることで、深く心に刻まれた貴重な思い出になったことと思う。今後もインドと日本の若者が未来社会の理想像を共有していってほしい。メディアの仕事の経験者としてあえてお願いを言うのなら、今後も正しい情報に基づいて問題に取り組んでほしいと思う。私も若い人たちの生の声に接することができてとても光栄に感じている。コロナがこれからどうなるのかまだまだ分からない状態だが、また一緒に考えたり、お手伝いしたりできる機会があることを願っている。(了)