バラタナティヤム

インドの舞踊は、寺院専属のデーバダーシ (神への奉仕女性) によって伝えられてきた。芸術舞踊のほとんどはインド舞踊,演劇の聖典とされる『ナーティヤ・シャーストラ』の理論と技術に基づいているとされる。五つに分類される。ケララ州周辺の「カタカリ」、オリッサ州の「オディシ」、マニプル州の「マニプリ」、デリー周辺の「カタック」、チェンナイ(マドラス)周辺の「バーラタ・ナーティヤム」である。
インド最古の聖典『リグ・ベーダ』や二大民族叙事詩『マハーバーラタ』『ラーマーヤナ』などに題材をとっており、現在生きている人の肉体によって神話を顕現する。寺院には特定の踊り場があったが、しだいに宗教と舞踊の関係が分離し、都会の劇場で上演されるようになってきている。タゴールの詩などが登場するようになった。古典舞踊は舞踊の神シバや破壊の神カーリーに捧げられることが多く、上演の際その神の紋章が舞台に掲げられる。

(1)カタカリ 男が演ずる演劇性の強いもので、ムードラ(手指の身ぶり)によって物語が展開される。

(2)オディシ 女1人で踊られるもので、上半身の動きが叙情的、官能的である。そのほとんどがクリシュナ神話を題材にとっている。

(3)マニプリ マニプリにもクリシュナ信仰があるが、18世紀までシバ信仰であったマニプル州の住民は、その後ビシュヌ信仰に変わった。マニプリは他の古典舞踊に比べて、東南アジア的な上半身の動きが優越している。

(4)カタック ヒンドゥー教的要素とイスラム教的要素が交じり合ったもので、上半身の動きはほとんどなく、手で語るムードラもほとんどみられない。ただ、足はもっとも激しく、やはりビシュヌ信仰がみられる。

(5)バーラタ・ナーティヤム 足の激しさと手の動きの調和がとれた女性舞踊手のソロ・ダンス。[市川 雅・國吉和子]

バラタナティアムはヒンドゥーの神々を讃える踊り。神への思慕や精神性の希求。官能的な身振りはなく、直線的。幾何学的な動きを組み合わせ、身体で曼荼羅を表現する。踊るヨガ。ハードな動きで、体力と集中力が必要。
神よ我らを共に護りたまえ、
我らを共に養いたまえ、
我らを共に力合わせて 人の善のために働かしめたまえ、
我らの学びを光りある意味深きものとなしたまえ、
我らを憎み合うことなからしめたまえ
平安あれ、平安あれ、全き平安あれ」

視線の行くところに意識が行き、意識が行くところに想いが行く。魅力的な古典舞踊。クラブハウスで議論する。

[subscribe2]