ヒンディー語

梵字は古代インドで誕生し、仏教と共にアジアに広まった。「神仏を一字で現す文字」として中国を経て日本に伝わり、空海によって体系化された。古くは悉曇(シッタン)文字と呼ばれ、仏像や仏具、経典等と同等に大切に扱われている。インドや中国での梵字は廃れ主に日本だけで使われている。梵字の意味する仏やご利益も多様化し、一文字が複数の神仏を表したり、一つの神仏に複数の梵字があったりする。

日本語のなかで使われているインドの言葉もある。パジャマは一種の民族服のボトムズ。寝巻として知られているがパは足を指しジャマは服を指す。ベランダは部屋の外の張り出した通路で外が見えバンガローとは一階しかない家。東インドのベンガルで建てられていたバンガローという言葉は世界中に広まった。達磨という言葉はサンスクリット語で「法」のことを表していた。昔インドでは、「ダルマ」という概念は法則、真理、教法や説法などを指した。

サンスクリット語に由来する日本語といえばお盆や旦那、畜生など。

お盆の語源である仏教行事「盂蘭盆会(うらぼんえ)」は、サンスクリット語で倒懸(さかさづり)を意味する「ウランバナ/ウランバーナ(उल्लम्बन)」が語源。地獄の世界で逆さ吊りにされる死者への供養が盂蘭盆会の起源とされている。

お彼岸は浄土信仰と密接な関係にあり「到達・達成」を意味するインドのサンスクリット語「波羅蜜」(はらみた、はらみった、パーラミター)に由来する。

妻が夫を呼ぶ際の呼称「旦那(だんな)」は、仏教用語の檀那(だんな)に由来する。サンスクリット語で「布施(ふせ)」を意味する「ダーナ(दान)」が語源。英語で寄付者・提供者を意味する「ドナー donor」も同じ起源と考えられている。

閻魔は、サンスクリット語の「यम(ヤマ)」が語源。地獄・冥界の王で、死者の生前の罪を裁く。「閻魔大王」。北欧神話における原初の巨人ユミルも同じ語源と考えられている。

畜生(ちくしょう)は、サンスクリット語で人間以外の動物を意味する「तिर्यग्योनि(tiryagyoni) 」が語源と考えられている。悔しい時や相手を罵る「ちくしょう」。

「贅沢三昧(ぜいたくざんまい)」や「ゴルフ三昧」などの「三昧 ざんまい」は、サンスクリット語の「サマーディ(समाधि)」が語源。サマーディは、仏教やヒンドゥー教における瞑想で、精神集中が深まりきった状態を意味する。

刑務所の囚人が外の世界の指して言う「娑婆(しゃば/さば)」は、サンスクリット語の「サハー」を語源とし、仏教においては釈迦が衆生を教化するこの世界、すなわちこの世(現世)を意味する。

仏教における地獄である奈落はサンスクリット語の「ナラカ」に由来する。劇場の舞台下や歌舞伎の花道の床下、コンサートホールのオーケストラピットなども「奈落」と呼ばれる。

「あばたもえくぼ」の「あばた」は、天然痘がなおったあとに残るぶつぶつとした小さなくぼみ。一説によれば、サンスクリット語で「かさぶた」を意味する「アルブタ」が語源と考えられているようだ(真偽不明)。

インターネットのサービス(Webサービス)で、自分(ユーザー)の分身となるキャラクターを意味する「アバター(アヴァター)avatar」は、サンスクリット語で「神仏の化身」を意味するアヴァターラ(अवतार)が語源となっている。

息ぴったりの二人の様子を「阿吽の呼吸(あうんのこきゅう)」などと表現するが、この「阿吽(あうん)」とは、サンスクリット語で口を開いて最初に出す音の「ア」と、口を閉じて出す最後の音の「フーン」が語源となっている。口を開いて最初に出す音は宇宙の始まりを表し、口を閉じて出す最後の音は宇宙の終わりを表す。

『だるまさんがころんだ』の「達磨 だるま」は、中国禅宗の開祖でインド人仏教僧の菩提達磨のこと。菩提達磨はサンスクリット語で「ボーディダルマ(बोधिधर्म)」。「ダルマ」はサンスクリット語で「法」を表す言葉。

金毘羅。薬師如来(やくしにょらい)十二神将の筆頭「宮比羅(くびら)」は、サンスクリット語で「クンビーラ」。金毘羅、金比羅とも書く。クンビーラ(マカラ)はガンジス川に棲むワニを神格化した水神で、金刀比羅宮(ことひらぐう)では海上交通の守り神「金毘羅大権現」として信仰されてきた。

阿修羅古代インド神話におけるサンスクリット語のアスラ(असुर)が語源。

南無阿弥陀仏の南無(なむ)は、サンスクリット語で敬意、尊敬、崇敬をあらわす「ナモ(नम namo)」が語源。ヒンディー語「ナマステー(नमस्ते)」の「ナマ」も同じ。

阿弥陀(あみだ)は、サンスクリット語の「アミターバ(अमिताभ)」または「アミターユス(अमितायुस्)」に由来する。アミターバは「量りしれない光を持つ者」、アミターユスは「量りしれない寿命を持つ者」を意味している。

仏(ぶつ)は、サンスクリット語で聖人・賢者を意味する「ブッダ Buddha」に由来。「知る」「目覚める」を意味する動詞ブドゥ(budh)の過去分詞形。

長野県民謡『木曽節』(きそぶし)の歌詞にある「ナンジャラホーイ」はサンスクリット語で「盆踊り」を意味する「ナムチャラホイ」が語源とする説がある。

 

ヒンディー語の話者数は4億9000万人(2005年 WA)。インド・ヨーロッパ語族インド・イラン語派。統制機関は中央ヒンディー語理事会。インドの憲法では連邦公用語とされている。原語においては「ヒンディー(Hindi)」のみで言語を表すため「語」を付する必要はほんとうはない。ハングル語と同じ。宗教を表す「ヒンドゥー」を用いた「ヒンドゥー語」は不適切。
「ヒンディー」はヒンドゥ(Hindu)の形容詞形。「ヒンドゥ」はインダス河(Sindhu)に由来し、ペルシア語でインドを意味する語だった。インドを統治したイスラーム系の王朝がペルシア語を公用語としたために「インドの言語」の意味で「ヒンディー」と呼んだ。

19世紀にヒンドゥー教徒の標準語を作ろうとする動きがイギリス領インド帝国で生まれた。「ウルドゥー語」はイスラム教徒の言語。「ヒンドゥスターニー語」は両者の総称を意味するようになった。広義にはヒンドゥスターン平野で話される多様なインド・アーリア語派の諸言語を指し、ラージャスターン語やビハール語を含む。

ヒンディー語はインド・アーリア語派に分類されネパール語にも近い。ウルドゥー語とは基本的な語彙や文法がほぼ共通。歴史的にはデリー一帯の言語をもとに、ペルシア語・アラビア語からの強い影響を受けてウルドゥー語がまず成立した。その後、アラビア語、ペルシア語系の高級語彙をサンスクリット由来の高級語彙に置き換えた。現代ヒンディー語はインド英語とも影響し合って変化を続けている。

憲法の351条でヒンディー語の普及を連邦の義務としている。連邦の公用語をヒンディー語に統一する運動には南部のドラヴィダ語圏で反対が強く死者を出す騒動も発生した。1963年の公用語法で、英語も公用語として使われ続けることになった。

ヒンディー語には10種類の母音がある。a 、i 、uの3つは短く、他の7つは長い。調音そのものが異なる。

ヒンディー語では鼻母音が発達している。

破裂音に無声無気音・無声帯気音・有声無気音・有声帯気音(息もれ声を持つ有声子音)の4種類がある。

文法はSOV 型で、形容詞や名詞が修飾する名詞に前置され後置詞を持つなど語順が日本語に似ている。

名詞は男性名詞と女性名詞から成る。kit?b 「本」はアラビア語では男性だがヒンディー語では女性。格は直格・斜格(主に後置詞とともに用いる)・呼格(人間のみ)がある。
ヒンディー語の動詞はインド・ヨーロッパ語族のほかの語派の言語と異なり、コピュラのみが時制・人称・数による変化を行う。通常の動詞は準動詞(不定詞・分詞)形のみを持ち、これとコピュラを組み合わせることでさまざまな時制・アスペクトを表す。

憲法ではデーヴァナーガリーを用いることを規定している。インド国内の公共表示に見られるラテン文字の表記はハンター式と呼ばれる。これはアラビア文字系のウルドゥー文字で表記されるウルドゥー語の話者と文書で意思疎通する際などにも多く用いられる。

デーヴァナーガリー文字での表記アヌスヴァーラ(?)を表す点(ビンドゥ)のほかに、鼻母音を表す月点(チャンドラビンドゥ)がある。子音の上に母音記号がついている場合は、鼻母音もビンドゥで表される。

サンスクリットにない子音文字が追加されている。これらの文字は既存の文字の下に点(ヌクター)を打つことによって作られている。

 

サンスクリットは古代インドの文学語。梵語ともいう。インド=ヨーロッパ語族のインド=イラン語派に属する。最古の文献はバラモン教の経典ベーダで,そのなかでも最古の『リグ・ベーダ』 ?g-vedaは前十数世紀と推定される。前数世紀にはすでに日常の会話には用いられなくなっていた。ヨーロッパにおけるラテン語に似た地位を占める。デーバナーガリー文字で書かれる。ベーダの時期の形と,パーニニの文典に規定された形とには違いがあり,前者をベーダ語,後者を古典サンスクリット語と呼んで区別する。複雑な活用,曲用の体系を特徴とする。なお,旦那 (d?napati) ,卒塔婆 (st?pa) など漢訳仏典を通じて日本語に取入れられた単語が若干ある。

 

梵字は、インドで使用されるブラーフミー系文字に対して、日本や東アジアで歴史的・伝統的に用いられてきた総称的な漢訳名。「梵語(サンスクリット)を表記するための文字」の意だが、起源であるブラーフミー文字が「ブラフマー(梵天)の創造した文字」を意味するので、それを意訳したものとも解される。

密教と結びついて7-8世紀以降に東アジアに普及した悉曇文字(しったんもじ)のことを指すことが多い。

子音字と母音字があり、子音字に母音がつく場合子音字に点画を書き足す形になる。子音字のみだと子音+[a]の音を表す。

悉曇はサンスクリット siddha? の漢字音写である。「成就する」という意味の動詞語幹 sidhから「完成したもの」「成就したもの」を意味する。法隆寺に残る貝葉サンスクリット写本の一葉には、“siddha?” の表題で字母の一覧が記されている。

「悉曇」は「吉祥を成就する」の意であるとか、「万徳の仏果を成就する」の意であるとか説かれることがある。空海が悉曇章の冒頭に記される字母習得祈願の句「悉曇??覩」を「成就吉祥章」の意であると解説した。「成功がありますように (Be there success)」という意味。

インドでは紀元前後にセム系文字に由来するブラーフミー文字がグプタ文字から発達して6世紀ごろにシッダマートリカー文字となった。さらに7世紀頃ナーガリー文字に発達、10世紀にはデーヴァナーガリーとなった。

昔は紙はなく、ほとんど貝葉に書かれている。

梵字は天平年間(729年-749年)に日本に伝来したと見られる。漢訳された経典と共に伝来したが難解なために、文字自体を仏法の神聖な文字として崇めた。天平期には遣唐使や道?、鑑真らの唐僧が悉曇梵語に堪能で徐々に広まっていく。大安寺で唐僧仏哲と天竺僧菩提僊那が悉曇梵語の講義を行い日本人僧にも悉曇梵語の読み書きが浸透していく。

平安時代に最澄、空海らが悉曇梵語の経典を大量に唐から持ち帰る。彼らにより、真言として梵字は一般の人々の間にも広まった。

梵字(悉曇文字)は一字一字が諸仏諸尊をあらわしており、ひとつの梵字が複数の仏を表す。これを種子(しゅじ)または種字という。全ての梵字の中で基本となるのが「ア字(阿字)」である。「大日如来」を表す。真言宗では「阿字観」として瞑想にも利用される。

毛筆を用いた毛筆体のみならず、「朴筆(ぼくひつ)」と呼ばれる刷毛状の筆を用いた独特の朴筆体で書かれることも多い。

 

インドの言語は多様だ。ドラヴィダ語と印欧語の諸言語に加えて、中東及びヨーロッパの言葉を取り込んでいる。サンスクリットのほか、幾つかのインドの言語は、明瞭な個性を持つ。

インド憲法の条文(第343条)において「インドにおける連邦政府レベルでの唯一の公用語はデーヴァナーガリー表記のヒンディー語である」と規定されている。「言語州」という考えに基づき、社会・言語的な区分に応じて州の境界線が引かれている。各州の州政府は、州内の地方行政と教育に関してそれぞれ自身の裁量で1つ以上の州公用語を決める自由を持っている。その結果、インド国内では現在多数の言語が各地の州公用語となっている。

憲法においては第8付則に22言語が列挙されている。この22言語は決して「インドの公用語」というわけではない。22言語に含まれているサンスクリット語やシンディー語などが国内いずれの州・連邦直轄領の公用語にも採用されていない。

インド・アーリア語派の多くとドラヴィダ語族はともに SOV で、後置詞をもち、形容詞や名詞が修飾する名詞に先行するなど、類似した特徴を持っている。ジョーゼフ・グリーンバーグはこれらの言語を日本語などとともに類型23に含めている。

英語は、かつてインドがイギリスの植民地であったため、政府行政機構において準公用語の地位を保持している。1991年に実施された国勢調査の結果では、当時の調査人口の11%が英語を第一、第二、または第三言語として使用していると回答している。

インドでは多くの言語が今なお存在しており、2013年時点で、インド全土で870ほどの言語があるという調査結果もある。しかし、一方で過去50年間で230の言語が消滅したともされる。

クラブハウスで専門家を交えて議論する。