【ニュースメモ】仏跡観光の国際空港

2021年10月20日、ウッタルプラーデシュ州クシナガラに国内29箇所目の国際空港が開港した。州内では州都ラクナウ、ヴァラナシに次ぐ3箇所目ということだ。海外からの出入国が可能な空港のことで税関、出入国管理、検疫所を備えた国際空港だ。3,200mの滑走路は大型機の乗り入れが可能で、インターネットで申請、クレジットカード決済で入国時に発給されるe-VISAも使える。

開港で注目を集めたのは仏教外交。スリランカからはナマル・ラジャパクサ氏率いる代表団がクシナガラでモディ首相と会談し、仏教外交を展開した。まだ国際的な目的地に接続されていないが、民間航空省のラジブ・バンサル長官は、タイがこの地域に最も多くの観光客を送り、そこからチャーター便を期待しているとしている。クシナガー空港の開港の傍らで、ナマル・ラジャパクサはモディにバガヴァッド・ギーターのシンハラ語-タミル語-英語訳を贈った。スリランカの代表団はまた、コロンボの南40kmにある有名な仏教寺院である「RajaguruSriSubhuthiMahaVihara」から遺物を持ち込んだ。開港日は釈迦の三道宝階降下を祝うAbhidhamma Day。

スリランカ航空の初飛行便が空港に着陸し、ナマル・ラジャパクサスポーツ大臣、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領の甥、マヒンダ・ラジャパクサ首相の息子を含む仏教僧とスリランカ大臣の大規模な派遣団を運んだ。般涅槃寺でのイベントでモディ氏と面会。その他、モンゴル、ミャンマー、ベトナム、カンボジア、タイ、ブータン、大韓民国、ネパール、日本など、仏教にゆかりがある12カ国から外交官が出席した。

国際空港開港は仏教の巡礼地をつなぐのに役立る。ルンビニ(ネパール)、サルナート、ブッダガヤを含む仏教の観光サーキットの中心に位置する。近くにはナーランダ、舎衛城、カピラヴァストゥもある。

モディの発言。
「より良い接続性を通して、仏陀に関連する場所の開発と信者のための施設の作成に特別な意味がある。仏陀の生誕地であるルンビニも遠くない。仏陀が最初の説教をしたサルナートも半径100-250km以内にある。仏陀が悟りを開いたブッダガヤも数時間の距離にある。空港の立ち上げにより、私はPoorvanchalの代表として、この地域へのコミットメントの1つも果たした」モディ首相はクシナガラ国際空港開港の理由を仏跡巡りの振興としている。

クシナガラはビハール州やネパールに近い人口2万人の小さな街でゴーラクプル空港も近い。ランドオペレーターの岡恭介さんによると、タージマハールのあるアグラやカーンプル、ヒンドゥー聖地のイラーハバードやアヨーディヤ、マトゥラーより先に国際空港の開港となったのは世界各国から巡礼者を見込んだものということだ。

クシナガラは釈尊涅槃の地。故郷ルンビニを目指した手前であるこの地でスーカラ=マッダヴァというキノコを食して下痢して亡くなったとされる。パリニッパーナ寺院の涅槃仏が有名。

来年初めにはウッタルプラデシュ州議会選挙がある。連邦閣僚もデリーから飛行機でやって来た。Jyotiraditya Scindia民間航空大臣、外務省のMeenakshi Lekhi、KishanReddy観光大臣、Kiren Rijiju法務大臣、Arjun RamMeghwal国務大臣が出席。航空業界では、民営化したエアインディアの動きも速い。モディ「エアインディアに関する決定は国内の航空部門に新しいエネルギーを与えるだろう」。

州首相のヨギ・アディティアナス「ウッタルプラデシュ州の9番目の空港であり、そのうち7つは過去7年間だけで設けられた。州は、2つの国際空港を含め、今後数年間でさらに11の空港を取得する予定だ」空港は11月26日からデリーから週4便を運航する来月SpiceJetによって開始される。12月18日から、スパイスジェットは空港をムンバイとコルカタに接続する。

クシナガラは釈尊入滅(涅槃)の地。お釈迦様が八十歳になられ、八大聖地のバイシャリ近郊で最後の雨安吾を過ごされた後、北に向かって布教の道を歩まれ、この地で涅槃に入ったとされる。遺跡は涅槃に入られた地に建つ涅槃堂の他、最後の説法地、最期に沐浴をされたヒランヤパティー河、荼毘塚があり、最近、お釈迦様の舎利を八つに分けた場所も比定された。涅槃堂の正面には沙羅双樹が立つ。

仏跡巡りは四大聖地または八大聖地を中心に巡る。四大聖地は釈尊本人が死ぬ直前に指定したものとして『大般涅槃経』に記されている。ルンビニ、ブッダガヤ、サールナート、そしてクシナガラ。

ランドオペレーターの岡さんに聞いた。
ルンビニは釈尊降誕の地。国連事務総長を務めたミャンマー人ウ=タントの提唱で聖地公園として整備。丹下健三がマスタープランを制定した。1997年に世界遺産登録。四大聖地及び八大聖地のなかでは唯一のネパール領で、インドとセットで巡礼する人が大半であることからインド政府公認ガイドがルンビニのみ入ることができるが、国境でインドVISAを取得することは不可能なため、VISAの権限には注意する必要がある。釈尊の育ったカピラ城もネパール説、インド説とあるがどちらも近くにある。

ブッダガヤは釈尊成道の地。仏跡巡礼者のために国際空港が置かれる。菩提樹や蓮池などがあり大菩薩寺とも呼ばれるマハーボディー寺院は2002年に世界遺産登録。ヒンドゥー教徒が管理してきた大菩薩寺を仏教徒のみで管理することを目指しインドの仏教指導者佐々井秀嶺氏が係争中。近郊のスジャータ村は乳粥で有名で巡礼の定番。

サールナートは釈尊が初めて教えを説いた初法転輪の地。ヴァラナシに隣接。2019年よりインドの最新超特急ヴァンデ=バラト=エクスプレスがデリーから8時間で到着するようになり陸路移動も。初法転輪の地に建つダーメーク=ストゥーパが有名。考古学博物館で仏教に関係するサールナートの出土品が展示されている。筆者はタイの仏像の印象が強い。

年間350万人の外国人が仏跡巡りに訪れ6割は仏教国で残りは仏教に強い興味を持つ欧米人。道路やホテルなどの整備が進む。インド国鉄の仏跡巡り専用列車のスタートを取材したことがある。Buddhist Circuit Tourist Trainは2週間に1本、7泊8日の旅を1等車1,155USドル、2等車945USドル。豪華列車で、寝ている間の夜中に移動。日本人は年間22万人がインドを訪れ2割近い4.2万人がサールナートを訪問。インド旅行を取り扱う老舗の会社の多くは仏教関係の社名。仏教遺跡にはサーンチー(マディヤ=プラーデシュ州)やアジャンタ(マハラーシュトラ州)、仏教だけではないが仏教の遺跡でもあるエローラ(マハラーシュトラ州)もある。

日本では仏教徒の数が減っているといわれるがインドの仏跡めぐりには根強い人気がある。インドが近くなればなるほど需要は高まるように思う。クシナガラの開港が日本の高齢者にやさしい観光開発につながるのか注目だ。

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