C-295 インド「国産」輸送機

インドの首都ニューデリーで26日、1950年の憲法公布を祝う共和国記念日に合わせた恒例の軍事パレードが実施された。モディ首相も見守る中、国内各地の民族衣装を着た人たちによる踊りや山車などが大通りを華やかに彩り、陸軍のバイクチーム「デア・デビルズ」もバイクに何人もが乗り大きく体を反らすパオフォーマンスで観客の目を楽しませたほか、パレードでは超音速巡航ミサイル「ブラモス」などが披露された。今年の共和国記念日の飛行には、IAFの戦闘機29機と輸送機8機、ヘリコプター13機、歴史的航空機1機の合計51機が参加した。この共和国記念日でとりわけ大きな注目を集めたのが空軍の輸送機の国産化である。

https://www.thehindu.com/news/national/tri-services-women-contingent-c-295-transport-aircraft-to-make-debut-at-republic-day-parade/article67755807.ece

C-295型機は、エアバスが、スペインのCASA社(後のEADS CASA)から引き継いで開発を継続しているターボプロップエンジン双発の中型戦術輸送機だ。基本の戦術輸送型のC-295Mのほか、カナダ空軍向けの捜索救難機CC-295などの派生型がある。

ターボプロップエンジンの実用輸送機は「ハーキュリーズ」の名前で知られるC-130Hが有名だがこちらはアメリカ空軍、海軍、海兵隊のほか、界各国でも採用され日本でも昭和56年度から購入している。戦術輸送機で完全武装の空挺隊員64人(通常の搭載人員は92名)を乗せることができる。こちらはロッキード・マーチン。C-295より胴体が長く運べる重さも3倍のパワーがある。共和国記念日ではC-295機とC-130機2機が梯形に並んで飛行した。

エアバスのC-295について、インド空軍はイギリスのAVROアヴロの後継機として56機取得すると決定。エアバスが最初の16機をスペイン・セビリア工場の最終組立ラインで製造し、「メイク・イン・インディア」プログラムの一環でタタ・アドバンスト・システムズ(TASL)が40機機体の製造・組立、地上・飛行試験、納入を実施する。全56機のメンテナンスまでを担当する。

エアバスが製造する最初の16機にはインドで独自に電子戦向けの機器が装備され、TASLは10年で残りの40機を納入する。インドの民間企業がインド国内で完全な形の航空機を製造する初めてのことだ。エアバスはタタ・グループだけではなく、バラット・エレクトロニクス、バラット・ダイナミクスなどの防衛関連企業、民間の中小企業を含む産業界との連携を進めている。

これはインドで民間部門が航空機FALを設立する初めての例である。インドの航空宇宙・防衛産業にとっての大きな節目となり「アートマ・ニルバー・バーラト」(インド自立)プログラムにも寄与する。タタ・アドバンスト・システムズ・リミテッド(TASL)とエアバスはグジャラート州バドダラにエアバスC295型機の最終組立ライン(FAL)複合施設を開設し、開設式にはモディ首相とスペインのペドロ・サンチェス・ペレス=カステホン大統領も出席し、タタ・サンズの社長であるN・チャンドラセカランとエアバス・ディフェンス・アンド・スペースのCEOであるマイケル・シェルホーンも同席した。最初の”国産”「Make in India」C295は2026年4月にバドーダラFALからロールアウトされる。

エアバスはインドとの包括的なサプライチェーンに毎年 1 億ドル以上を投資し、15.000 人以上の雇用を生み出しているという。一方で、バンガロールにあるエアバス・インディア独自のエンジニアリングおよびデジタルセンターは、世界中のエアバスの商用およびヘリコプターのプログラムに貢献しているという。

https://flyteam.jp/news/article/134264

C-295は、スペインのCASA(現・エアバスディフェンス)が1990年代前半に、既存のCN-235輸送機を改良発展させる形で生み出した。2022年2月時点で281機を受注し世界30か国以上で採用されている。

https://www.janes.com/osint-insights/defence-news/defence/serbia-receives-second-and-final-c295-airlifter

このスペイン生まれの汎用機について、エアバスは2022年2月セルビア国防省から2機受注したと発表した。この契約でセルビアは世界で36番目のカスタマーになった。セルビアでは旧ソ連製のアントノフAn-26中型輸送機を1機運用してきたが旧式化したため更新し、1機増やすとのことだ。

古くなるロシアの軍備からインドへのシフトが始まっているのかもしれない。

 

 

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