ACSA

来月中旬(16日)の安倍首相のインド訪問まであとひと月。日印の安全保障協力強化の動きが活発になっている。焦点はACSA(物品役務相互提供協定)だ。その下地となるのが、日印で初めての外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)である。
 10月には、日印防衛相が電話で会談。インド太平洋構想を巡る協力を確認している。河野太郎防衛相は2019年10月29日、インドのシン国防相と電話で協議し、日米が主導する「自由で開かれたインド太平洋」構想への協力を求め、2プラス2に向けた連携も確認した。(ACSA)の早期妥結を目指す方針も擦り合わせた。
 防衛省が2019年10月27日に公表した2019年の防衛白書では、GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の破棄決定、国際観艦式に参加しようとした海上自衛隊に韓国が自衛艦旗の旭日旗を降ろすよう求めた2018年10月の事件で、で冷え込む韓国の記述が減り、インドの厚みが増した。準同盟国となりつつあるインドは、2ページを割いて部隊間の交流などを紹介し「地域やグローバルな課題に対応できるパートナーとしての関係と基盤が強化されている」と紹介した。「準同盟国」の中での紹介順もオーストラリアに次ぐ二番手となった。 
 オーストラリアとの間では、日本で初の戦闘機の共同訓練を北海道で実施するなど海洋進出を図る中国を念頭に部隊間の実践的な連携を強化している。2019年9月11日、北海道の千歳基地上空での航空自衛隊とオーストラリア空軍による日本で初の合同戦闘機訓練を開始、25日には河野防衛相も視察した。中国の海洋進出を念頭に、日豪の協力深化により太平洋地域の安定を狙うとしている。一対一の対戦闘機訓練は、領空に入ってきた敵機への対処という実戦的な内容で、互いの戦術技能を習得した。日本とオーストラリアは2013年に情報保護協定を発効させている。ACSAが発効したのは2017年。2プラス2も定期的に開いてきた。
 ACSAは、自衛隊と他国軍が物資を融通する際の決済手続きを定めた協定のことだ。食料、燃料、弾薬、輸送、医療などを相互に提供できるようにする。国連平和維持活動(PKO)や共同訓練、大規模災害の支援の場などでの協力がたやすくなる。安保関連法の成立で、他国軍への弾薬提供、発進準備中の戦闘機への給油は、日本が直接攻撃されるケースのほか、他国への攻撃で日本の存立が脅かされる明白な危険がある「存立危機事態」日本の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」、国際社会の平和を脅かす戦争などに国際社会が対応する「国際平和共同対処事態」にも適用範囲が広がった。日本はアメリカ、オーストラリア、イギリス、フランスとの間でACSAを締結。カナダとは署名している。署名まで進めばインドが6カ国目となる。
 インドとは軍事情報保護協定、防衛装備品・技術移転協定を既に結んでいる。陸上自衛隊とインド陸軍はインドで対テロ実動訓練も実施している。「QUAD」と呼ばれる日米豪印4カ国の枠組みで2019年の国連総会の際に初めての外相会談も開いた。インド側は損得を慎重に計算するだろう。インドにとっての損得とQUAD以外の国々との関係を考慮に入れた損得だ。それが交渉の材料とされる。容易な仕事ではない。  ###

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

前の記事

巡礼の道

次の記事

兄弟政権