なぜ新型コロナで延期されていた突風がフランスからインドに来たのか?【どちらも頑固で交渉上手な印仏の世界一高い戦闘機ラファールは中国へのけん制か】
5機のラファールジェットがインドへの7,000 kmの旅でインドに向かった。空中給油される。UAEのシングルストップ。世界一高価とされるフランス製のインドの戦闘機「ラファール」。1機辺りの導入費用260億円超え。紆余曲折の末、世界で最も高価になってしまった。
フランスの外務大臣、ジャン=イヴ・ル・ドリアン氏は、インド空軍は9月末までに、フランスで製造された戦闘機「ラファール」の初号機を受けとるだろうと話していた。
2016年にインドとフランスの間で結ばれた契約に基づき、インドは36機(単座28機、複座8機)のラファールを、約88億ドル(約9540億円)で購入した。ブルガリアのF-16C/D block70/72導入価格に約2億ドル(約220億ドル)。それを上回る。契約金額には、36機の機体の保守パーツ、訓練費用、地上シミュレーター、空対空ミサイルや巡航ミサイルも含まれる。もともと一機80億円の戦闘機。インドはイスラエル製のヘルメット搭載ディスプレイ、レーダー警報受信機、電波妨害装置も要求。それも含めた価格。
なぜそれほどに高い買い物になったのか。もちろん、インドの軍事大国化がある。インドは、老朽化した旧ソ連製戦闘機を更新として、新しい126機の戦闘機を導入の国際入札を行ってきたことは別稿でも記した。アメリカのF-16、F/A-18E/F、フランスのラファール、ヨーロッパのタイフーン、スウェーデンのグリペン、ロシアのMiG-35。ラファールはすでにミラージュ2000の運用経験から導入コストが低く、フランスが技術移転に対しうるさくなかったから。ラファールの技術や装備のほどんどがアメリカの武器輸出規制外という。
当初、126機の費用は200億ドル程度だった。ところがインドがこだわる国産。126機の内、108機をインド国内でインド企業との合弁し生産を行いインド空軍に引き渡す契約になっていた。フランスはインド国内で生産されたラファールに対する品質を保証しないという。このあたり、どちらも契約を固めたい交渉上手同士の腹の探りあい。担当者はさぞ胃をいためたことだろう。2015年にフランスを訪問したモディ首相はが126機のラファール導入契約を破棄し新たに36機のラファール導入をするとやり直しを始めた。結局、フランス製の36機のラファールを輸入することで決着。インドはフランス以外とも商談を進め、装備の多国籍化。相手に競わせる方式を選んだ。
一機あたりの価格は263億円と世界一高い戦闘機になった。インドが望んでいた技術移転や国内生産は無くなった。
5 機のラファールジェットの最初の一隊は2020年7月29日にインドに到着する。ハリヤナ州のアンバラ空軍基地のインド空軍に加わる。フランスのインド大使館は、インド-フランス国防協力における「新たなマイルストーン」だとし、「美女と野獣」というタイトルの短いラファールの紹介ビデオを公開した。大使のJawed Ashrafはインドのパイロットに会い世界で最も先進的で強力な戦闘機を操縦する最初のパイロットになること祝福した。36機すべての納入は2021年末までに完了する予定。
最初のジェットは、空軍の復活した「ゴールデンアローズ」飛行隊としてアンバラに駐留する。ゴールデンアローズは1951年以降、カルギル戦争を含め多くの重要な作戦に関与してきた。空軍はゴールデンアローによって運用されていたミグ21を段階的に廃止し始め、飛行隊は2016年に解散した。それが最先端のラファールのために復活。ロシアからフランスへ。
ラファールはハンマーミサイルで能力を強化。中距離空対地兵器。ラダック東部などの山岳地帯の地形にも対応できるといわれる。航空機の到着は、5月末までに行われるはずだったが、インドとフランスの両方でのCovid-19の状況を考慮して2ヶ月延期されていた。
知り合いのインド人は、これで両面作戦にも対応できるようになるという。