総選挙2024 南部に注目

ナレンドラ・モディ首相が岩盤を突き崩すことができなかった地域がインド南部だ。モディはこれまでで最高のチャンスを感じている。タミル・ナードゥ州、ケーララ州、テランガーナ州などの南部の州は、インドで最も経済的に成功している。しかし、民族的に多様な州の一つで奥が深く簡単ではない。モディ首相が率いる北部のヒンディー語を話すインド人民党を中心とした勢力に長年抵抗してきた強力な地域指導者がいるからだ。インド人民党は、南部へ攻略に力を入れている。モディ首相を含む政治家を次々に南部に送り込んでいる。地元政治家への不満を最大のチャンスとみて、強力な指導者としての力をアピールしている。

モディ首相は党への支持を集めるためオープントップのバスでタミル・ナドゥ州の首都チェンナイなどの都市を巡った。インド人民党が3分の2の多数派獲得という目標を達成するには南部の攻略が不可欠だ。一方でそれが実現すれば国家規模で反対派を一掃することになる。歴史的多数派というその野望は南インドを攻略できた場合にのみ達成できる。

人口7,000万人のタミル・ナドゥ州は、反BJP感情の拠点だ。2019年にインド人民党の議員を一人も選出せず、得票率は4%未満だった。しかし世論調査では、インド人民党がタミル・ナドゥ州で39議席中5議席を獲得するとの予想もある。他の南部州での獲得と合わせると歴史的な事態だ。

モディ首相は良い仕事をしているので今回はインド人民党に投票する、という人は少なくない。今回はBJPが勝つとの声もある。モディ首相が地域政党による政治の私物化を打破するとの期待もある。人々は変化を欲している。汚職に対して行動を起こしてほしいのだ。
しかし、そう簡単にことは進むだろうか。インド人民党が南北間の幅広い政治的、経済的、社会的分断を克服できるかどうか懐疑的な見方もある。多くの南インド人は、テルグ語やマラヤーラム語などの南部の言語とは無関係のヒンディー語を促進しようとするインド人民党の取り組みには反対だ。インド人民党の強硬なヒンズー教ナショナリズムも南部では魅力が限られている。地方指導者らはインド人民党のレトリックが宗教的緊張を煽っていると非難している。ケーララ州では人口のほぼ半数がイスラム教徒かキリスト教徒だ。北部のヒンドゥー教徒でタブーとされている牛肉食が広く普及している。宗教の受容を強制するとなると反発は大きい。

南部はインド人民党の南部への進出を連邦制の下での地域の自治の存続の脅威とみている。2014年の就任以来、モディ首相は地方税と州税を国税に置き換える改革で政治的・経済的権力を強めてきた。南部の動向は大きく動けばインドの歴史を変える転換点となる。
総選挙は投票が4月19日に始まり、6月4日に集計される。