中国とインドの二国間の経済関係がコロナを機にどう転換するのか

インド側は、中国に対して初動の誤りが拡大を招いたとの姿勢を示している。アメリカを始め同様の動きがある。中国側はこれに反発。自国の対策の不十分さを中国に責任転嫁していると主張。中国が海洋進出を活発化させる中、アメリカの空母はコロナ感染で活動縮小せざるを得ない状況に追い込まれている。

 新型コロナウイルスの感染拡大で甚大な損害を受けたとして、中国に損害賠償を求める動きが各地で広がっている。
 インドでは弁護士団体などが20兆ドルの賠償を求める請願書を国連人権理事会に提出した。アメリカ中西部のミズーリ州は4月下旬、中国当局がウイルスの危険性や感染情報を隠したため深刻な経済的影響が出たとして中国政府や共産党などを相手に損害賠償を求める訴訟をアメリカで起こした。トランプ政権による中国政府への賠償請求も取りざたされている。イギリスでは、シンクタンクのヘンリー・ジャクソン協会が経済的損失は先進7カ国に限っても最低4兆ドル(約425兆円)に上ると試算。中国政府が世界保健機関(WHO)に情報提供をしなかったことは国際保健規則に反すると指摘している。
 中国の環球時報は5月7日付朝刊で、ウイルスはいかなる国にも出現する可能性があり法的責任はなく世界的な疫病のいくつかは最初にアメリカで広まったがアメリカに賠償を求めた国はないとする大学教授の論評を掲載した。中国外務省の華春瑩報道局長は「有罪を推定しながら中国を調査したり賠償を求めたりすることには断固反対する」。

 一方で中国がインドに接近する動きもある。中国主導のアジアインフラ投資銀行AIIBは、インドの新型コロナウイルス対策に5億ドルの融資を承認した。2020年5月8日の声明は、インド政府の保健制度、医療器具の購入、研究に資金を投じるとしている。世界銀行との協調融資。

 中国の自動車大手、上海汽車(SAIC)のインド子会社MGモーター・インディアは4月29日、インドの医療機器メーカーと協力して人工呼吸器を増産すると発表。グジャラート州バドダラのエービー・インダストリーズが提携相手。「マックス・ベンチレーター」のブランド名で人工呼吸器を製造している。

 新型コロナでは中国のアフリカ外交も見逃せない。不十分な医療態勢は感染拡大のリスクを大きくしている。
 大航海時代にアフリカ南端の喜望峰の沖合を迂回してポルトガル人が進んだインド洋。中国もインド洋を西に向かいアフリカ東海岸に到達しインド洋一帯の支配を目指していた。鄭和はモザンビーク海峡を南下していたともいわれる。モーリシャスでは中華人民共和国建国前後に香港や台湾からの移動した。文化大革命の初期、タンザニアでは内陸部の銅を隣国のザンビアから運ぶタンザン鉄道を敷設するのに中国が数万の労働者を送り込んだ。「一帯一路」。「世界各地華僑華人人口統計」ではアフリカ全体で中国系の住民の数は約80万人。独立戦争と内戦が続いたアンゴラは25万人。アメリカ、イスラエル、中国、南アフリカと、ソ連、キューバの長い冷戦の代理戦争を経て中国だけが残った。人民解放軍が基地を置くジプチでは中国企業の進出が進む。ジプチからはエチオピアまでの中国主導の鉄道。中国によるエチオピア支援は、テドロス・アダノムWHO(世界保健機関)代表の言動で注目された。エチオピア出身の代表は中国寄りとされた。首都のアディスアベバと北京の間の航空路は便数も多い。

 インドの外資規制は中国が標的になった。隣接国からの投資に認可が必要になり、中国はWTOに違反しているという。インドが実質的に中国を狙い撃ちにした海外直接投資(FDI)の規制強化策。新型コロナウイルスの拡大で価値が下がったインド企業が外資に買収されるのを防ぐ。成長の鈍化に全土封鎖のダブルパンチに苦しむインドが中国からの投資をけん制する。中国との間では巨額の貿易赤字もある。

 過去2年間に中国の投資家がインドのスタートアップに注ぎ込んだ金額は約60億ドル(約6500億円)。国境を接する国からの将来のすべての取引に政府の承認を必要とする措置の対象国は以前はパキスタンとバングラデシュだけだった。インド産業・国内通商振興局は、新型コロナウイルス危機をめぐり「この機に乗じた買収を防ぐ」ために措置を講じるとコメント。新規制は「直接・間接保有を問わず、インド企業の現在または将来の外国直接投資の所有権移転」にも適用される。インド政府は原子力、防衛、宇宙産業の取引にのみ介入していた。不利益をもたらすような海外からの大型投資を警戒する。隣国といってもネパール、アフガニスタン、ブータン、スリランカはインド企業への投資に関心がない。中国の巨大企業であるAlibaba(アリババ)とTencent(テンセント)は近年、インドのスタートアップへの投資家として注目されている。金融サービス会社のPaytm(ペイティーエム)、eコマースの大手Flipkart(フリップカート)、ソーシャルメディアオペレーターのShareChat(シェアチャット)、フードデリバリー会社のZomato(ゾモト)。インドの大型スタートアップは中国の投資対象となっている。
 インド最大の銀行HDFCは中国銀行が同行の保有持分を1%以上引き上げたとした。ラフル・ガンディー外国企業がインド企業を支配することを防ぐよう主張した。

インドは新型コロナウイルスの中国製の検査キットの返品に動いた。精度にばらつきがあるという。2020年4月27日、感染後にできる抗体を調べる検査キットを返却する方針を明らかにした。インド政府は中国の2社から50万キット以上を調達し使い始めたが、検出数が少ないとの報告がありインドの医学研究評議会が精度を調べていた。

中国はこのテストキットに対するインドの批判は無責任だとする。中国側はインドの決定を懸念。2つの会社、広州Wondfo BiotechとZhuhai Livzon Diagnosticsが製造した機器を検証したとのこと。大使館報道官のJi Rongは声明で、特定の個人が中国の製品を「欠陥がある」と分類するのは不公平で無責任だとする。中国はインドがコロナウイルスと戦うのを助けようとしており品質を確認するため、輸入許可証の発行時にインドの医学研究機関によって検証されていたとする。(画像はHPより)

 インドの新興企業は中国のベンチャーキャピタルに大きく依存している。スタートアップを維持できる国内のベンチャーキャピタル産業がまだ発展していない。ただ中国へのより大きな依存はインドの長期的な経済的利益ではないという意識はある。
 特に医薬品有効成分を中国に依存していることは深刻だとの認識がある。インドは約68%を中国から輸入。コロナ対策の臨床試験が行われている抗マラリア薬であるヒドロキシクロロキンの生産に悪影響を及ぼした。
 コロナウイルスの危機、特に中国での発生の初期段階の不適切な管理は、インドや世界中の他の国々で、北京に対して非常に否定的な世論を生み出している。

 以前から問題が大きくなっていた二国間の経済関係がコロナを機にどう転換するのか、注意深く見る必要がある。

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