コロナ後世界の非接触【4】ビリオネア財閥と組むFB
もともとトップがインド人のグーグル、インドの電子商取引を拡大しようとするアマゾンに対し、GAFAの「F」のフェイスブックがとった戦略で目を引いたのはインドの有力な新興財閥と組むことだった。
フェイスブックは今年四月、インド最大の通信会社リライアンス・ジオ・プラットフォームズに五七億ドル(約六一〇〇億円)の投資を行った。インドの六〇〇〇万といわれる零細ストアをデジタル化するという。「インド中の人々が買い物をする機会を広げる事業で協業」とフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は進出の狙いを説明した。フェイスブックは二〇一四年にインドの対話アプリ「ワッツアップ」を買収し市場を拡大した成功体験がありインドとの協業を積極的に進めている。
フェイスブックなどの大型投資を受けて、世界の長者番付にも異変が起きている。ブルームバーグのビリオネア・インデックスでは、世界裕福ランキングでリライアンスの会長のムケシュ・アンバニが番付のトップ四に入った。アマゾンのジェフ・ベゾス、マイクロソフトのビル・ゲイツ、フェイスブックのザッカーバーグに次ぐ位置だ。アンバニのムンバイ中心部の一等地にある自宅は、総工費八七〇億円で地上六〇階ほどの高さに二七階建の贅沢な造りが有名だ。リライアンスはタタ財閥やビルラ財閥に比べて歴史の浅い新興の財閥だが二代目のムケシュ・アンバニ氏が石油産業から通信産業に事業を拡大し急成長を続けている。
そのアンバニが今年七月に立ち上げたのがテレビ電話システムジオミート(JioMeet)。インド版のテレビ会議システムだ。日本では在宅勤務で利用がネット会議システムの利用が広がっているが、インドの場合はテレビ通話システムのすそ野はもっと広く、遠隔医療、バーチャル教室など可能性は無限に広がっている。フェイスブックはインドの企業と組むことで巨大な顧客を囲い込もうとしている。
さらにリライアンスは老舗の医薬品製造会社の薬の通販サイト運営会社を買収。外出禁止、電子商取引、薬品需要、地元の小売の吸収という流れはアマゾンとも一致する。
GAFAの二つ目の「A」のアップルもインドへの進出を図っている。これまでインドのスマホ市場は韓国サムソンの一人勝ちの状況から中国勢への主役の交代という流れになってきた。日本と違ってアップルのiPhoneは高級志向の価格設定もあってインドでは伸び悩んできたのだ。しかしインドでの反中感情の高まりが進出拡大のチャンスとなっている。