インドのクリスマス【改宗強要摩擦と洗礼名】
▷第三の宗教
全人口の約2%、約1730万人がカトリック信徒。プロテスタント各派、正教会を含めたキリスト教は第3の人口規模でシク教やジャイナ教、仏教より人口が多い。
▷ゴアのザビエル
16世紀の宗教改革にカトリック教会が対抗する形でアジアへの宣教を拡大。イエズス会が活躍した。日本人で初めてカトリック教徒となったヤジロウもゴアで洗礼を受けたとされる。フランシスコ・ザビエルが1545年に到着し1558年ゴア首都大司教区が成立する。イタリア人でイエズス会士ロベルト・デ・ノビリも1606年に到着し布教活動を始めた。
▷マザーテレサ
インドでカトリックの修道女として活動したマザー・テレサの慈善活動は有名。
▷ローマ法王の訪印
ローマ法王がインドを訪問したのは、1999年。ネルー競技場で約七万人を集めたミサを催した。ヒンドゥー教過激派の妨害行動に備え厳戒態勢が敷かれ、私は遠目にしか見ることができなかったが、インドの大群衆を前に手を振る法王の姿は深く脳裏に残っている。法王は「紀元後の最初の千年はヨーロッパ、その後の千年はアメリカ大陸とアフリカでキリスト教が根付いた。三回目の千年紀はこの広大で活気ある(アジアの)大陸で布教の大きな成果が目撃できるだろう」と語った。アジアをローマ・カトリック教会の伝道活動の中心とすると宣言した。歴史を記録するのは記者の大切な仕事。書きがいに高揚した原稿だった。
1999年1月9日、小渕恵三首相が、バチカン市国でローマ法王ヨハネ・パウロ二世と会見した。当時は、印パの核実験の直後のこと。首相は「インドやパキスタンの核実験の問題や、イラクや北朝鮮などの核開発疑惑の問題もある。日本としても核不拡散体制の強化を目指したい」と伝えた。法王は「日本は初めての被爆国として核の脅威を良く知っている。その立場から核廃絶及び人類の平和のために引き続き努力してほしい」と語った。
クリスマスはインドでもキリスト教徒の重要な祝日。デリーなど大都市では、セキュリティー対策がより厳重に実施される場合もある。観光施設が閉鎖され道路などが混雑することもある。
▷「改宗強要」摩擦
インドで広がる「反クリスマス」の動きも心配だ。ヒンズー至上主義の高まりで摩擦が拡大している。ヒンドゥー教徒が多数を占めるインドでクリスマス行事に反発する動きが相次いだ。「改宗を迫っている」との告発でキリスト教の神父らが逮捕される事態に2017年に発展したことがある。中部マディヤプラデシュ州で警察がクリスマスの聖歌を歌っていた神父や神学生ら32人を拘束した。全員釈放されたが警察署の外に置いてあった神父の乗用車も放火されたという。地元住民から神父らが住民に強制的に改宗やイエス・キリストへの崇拝を迫ったとして「反改宗法」に基づく告発が出ていた。地元紙インディアン・エクスプレスなどによると、告発者はインド人民党と関係が深いヒンズー至上主義団体「バジュラン・ダル」の一員だという。
インドのクリスマスの過ごし方は他の国と変わらない。ゲームをしたり踊ったり歌ったり。大都市ではボリウッドのスターのコンサートが開催され家族や友達と共にイベントに足を運ぶ。ギフトショップはプレゼントを選ぶ人たちであふれる。家族連れが多い。
▷洗礼名とカースト
クリスマスはキリスト教の創設者であるイエス・キリストの降誕祭で「誕生をお祝いする日」。キリストとミサを合わせた言葉。モミの木は、15世紀頃からドイツの冬至のお祭りや「モミの木に住む妖精が幸せを運んでくる」という言い伝えから始まった。ツリーの飾りつけやイルミネーションが浸透。キリストの誕生日ではない。
キリスト教徒は洗礼名を与えられる。カーストの支配から逃れられる。