史上最大のワクチン作戦の背景にはインドのポリオや天然痘の歴史と選挙箱それに拝火教徒のバイオ富豪の存在がある。

いつワクチンを入手できるのか。予防接種を受けた後、いつ通常の生活に戻ることができるのか。予防接種を受けた場合でも、マスクを着用する必要があるのか。ワクチン接種は痛いのか。副作用はあるのか。インドの動きが見逃せない。

#二種類のワクチン
 インドの医薬品規制当局が2021年1月3日会見でアストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンと地元のワクチン生産会社「バーラト・バイオテック」が開発したワクチンの、合わせて2種類の緊急使用を許可したと発表した。医療従事者などから優先的に接種を始め、ことし夏までに3億人に接種するとしている。モディ首相のツイッター「戦いを強化する決定的な転換点だ」。
 アストラゼネカなどが開発したワクチンはイギリス政府が2021年12月30日に承認している。地元のワクチン生産大手「セラム・インスティチュート・オブ・インディア」がアストラゼネカなどと契約しすでにおよそ5000万回分のワクチンを生産している。年内に生産量を月に1億回分に増やす計画だとしている。
 ワクチンにはイギリスの製薬大手アストラゼネカのものと、地元のワクチン生産会社「バーラト・バイオテック」が開発したワクチンの2種類がある。途上国など海外への安価な大量提供が実現するかにも注目が集まる。
 インドの医薬品管理局長であるVGSomani博士がインドの製薬規制当局である中央医薬品標準管理機構による「慎重な検討」の上に行われたと強調した。ほかにもファイザーとBioNTechや、ロシアのスプートニクVもある。イギリスはオックスフォード-アストラゼネカワクチンの緊急承認を与えた最初の国でアルゼンチンがすぐにそれに続いた。
 オックスフォード-アストラゼネカワクチンのしくみについて。アデノウイルスは、コロナウイルスと戦うために免疫系を刺激するのに役立つ。
 ワクチンの安全性と有効性について国民の間で疑問に直面する可能性がある。臨床試験プロトコルに関する政府の透明性の欠如に一部起因している。公衆衛生の監視機関であるAllIndia Drug Action Networkは、両方のワクチンの臨床試験の範囲と投与計画に関する詳細情報を要求する声明を直ちに発表した。
 Covaxinと呼ばれるBharatBiotechワクチンについて、グループは、まだ臨床試験中のワクチンを認可するために「科学的論理がトップの専門家を動機付けたものを理解するのに困惑している」としている。規制当局のソマニ博士は、ワクチンはこれまでに22,500人の試験参加者に投与されており、「安全であることがわかった」としている。
 ニューヨークタイムズからの引用。アストラゼネカワクチンとバーラトバイオテックワクチンはどちらも2回接種する必要があるとソマニ博士は述べている。


#ポリオと選挙箱

 オックスフォードワクチンを製造する契約を結んだインドの製薬会社であるセラムインスティテュートは、年末までに製造にコミットした4億回の投与量の約10分の1しか製造できなかった。政府は準備ができているとしている。
 全国的なポリオワクチン接種と新生児予防接種キャンペーンからの知識、および投票箱が配達されるインドの巨大な総選挙で採用されたスキルと柔軟性を活用できる。ビル&メリンダゲイツ財団からの3億ドルの支援もある。
 当初、セラムインスティテュートはアストラゼネカと協定を結び、低中所得国向けに10億回分のワクチンを製造した。ワクチンは、保管および輸送中に低温を必要とするワクチンよりも製造が安価で輸送が容易であるため、発展途上国にとって魅力的。セラムインスティテュートは、ワクチンを製造するための新しい施設を建設。すでに世界のために4000万から5000万を生み出したとのこと。最高経営責任者であるAdarPoonawallaは大部分はインドに与えられると語った。
 接種される最初の3000万人は医療提供者であり、次に警察や他の最前線の労働者。残りの2億7000万人については、当局は50歳以上の人々、または彼らをより脆弱にする可能性のある状態にある人々に焦点を当てる。インドは国民への予防接種に関して長い経験がある。最初の集団予防接種は、天然痘と戦うために1802年に行われた。その後も誤った情報と遅い受け入れに苦しんだ。

#バイオの大富豪

「世界最大」のインドのワクチン製造会社に注目が集まる中、アダール・プーナワラ最高経営責任者の妻ナターシャさんもトレンド、ということ。インド紙が伝えた。「インドのワクチン男」アダール・プーナワラの妻は誰ですか?グーグルトレンドは、インド人が彼の妻についてもっと知りたいと思っていることを示唆している。
 最も必要なもの、コロナウイルスのワクチンを提供するために働いている一人の男性は、プネに本拠を置くインドの血清研究所を率いるインドのワクチン男、アダールプーナワラ。インドのワクチンメーカーは、世界最大のワクチンメーカーの1つであり、Covishieldと呼ばれるオックスフォード-アストラゼネカのCOVID-19ワクチンショットの製造を担当している。
 声明の中で、アダールは彼の会社が現在月に5000万から6000万回のコビシールドを生産しており、生産は1月と2月の後に月に1億回に拡大されると述べた。
 グーグル検索クエリには、Adar Poonawallaの名前と、ワクチンに関するすべてのFAQが殺到。「Adar Poonawallaとは誰ですか?」、「Covishieldワクチンの費用はいくらですか?」、「ワクチンはいつですか?」インドで利用できますか?しかし、驚いたことに、インド人はAdarPoonawallaの妻であるNatashaPoonawallaについて知りたがっている。
 知識のない人にとって、ナターシャ・プーナワラはアダール・プーナワラの妻であり、彼女は独特のファッションテイストと社会的スキルで知られている。ナターシャプーナワラは、慈善家でもあり過去数か月間夫と一生懸命働いてきた。夫婦は正式にはプネーに住んでいますが、ムンバイにもバンガローがあり、親しい友人のためにいくつかのパーティーを主催。ナターシャとアダールは2006年12月15日に結婚、夫婦はサイラスとダリウスという2人の息子の両親。

#途上国への提供

 セラムインスティテュートオブインディアについて。バイオテクノロジーの会社。1966年(55年前)設立で創設者はサイラス・S・プーナワラ。2020年の時点で、同社は生産されたワクチンの投与量で世界最大のワクチン生産者であり、毎年約15億回のワクチンを生産している。開発された製品には、結核ワクチンTubervac(BCG)、ポリオのポリオ、および小児期の予防接種スケジュールのための他のワクチン接種がある。2012年にオランダの製薬会社であるBiltthovenbiologicalsを買収。オックスフォード大学と提携してChAdOx1nCoV-19という名前のワクチンを開発している製薬会社AstraZenecaと提携。インドおよびその他の低中所得国で1億のワクチンを提供。1回の投与あたりの価格は225ポンド(約3ドル)と推定されている。

#拝火教徒のワクチン王

 サイラス・S・プーナワラは1941年生まれの創業者。純資産は115億米ドル(2020年10月)。パドマシュリ(2005)賞を受けている。「インドのワクチン王」として知られている。プネに本社。パールシーの実業家。Poonawallaグループの会長。血清研究所。小児用ワクチンを製造するインドのバイオテクノロジー企業を育てた。彼の父は馬のブリーダーだった。長者番付で顔を出す。

#疫病の歴史


 脇村孝平先生の『飢饉・疫病・植民地統治――開発の中の英領インド』を改めて読みたい。「生活水準」「環境史の中の疾病史」「災害管理」「帝国医療」日本統治期台湾公衆衛生政策との比較。インドは感染症の宝庫といわれ様々な感染症のリスクがある。蚊が媒介するマラリアやデング熱、結核のような空気感染のもの、ガンジス川デルタ地帯が起源とされるコレラなど飲食物を介して経口感染する消化器感染症も。インドで患者の多いマラリア、結核、HIV/エイズは世界三大感染症。
 インドに海外特派員として赴任する前には長期滞在者に推奨されているワクチンを何度も注射した。しかしそれでもすべての感染症が防げるわけではない。野良犬や猿などの狂犬病を持っている可能性のある野生動物が街中に出没する。赴任中の2015年にはデング熱の大流行もあった。デング蚊を取材した。赴任中の感染症のエピソードは数多ある。
 英領インド時代の19世紀後半から20世紀初頭までに飢饉と疫病はなぜ多発したのか。植民地政府はどう対応したのか。対象の時期には経済成長が起こっていたにもかかわらず飢饉と疫病が頻発したことへの疑問はセンとも通じる。
 1918年のインフルエンザはいわゆる「スペイン風邪」は、藩王国も含めるとインドでの死者数は1700万人に達する規模だった。世界全体の約半数を占めたという推計もある。マラリアも死者が多い。
 感染症の原因となるウイルスや細菌などの病原微生物と人間の関係は、それを取り巻く環境と人間の関係が指摘される。英領インドでは鉄道や海運の発達による人の移動の増加した。都市の衛生環境の悪化、鉄道、灌漑用水路の建設による自然排水路の攪乱。開発により社会環境が大きく変化し「疾病環境」の悪化につながった。「開発原病」。パリの大改造前と同じ。
 英領インドではイギリス人と大多数を占めるインド人の社会では死亡率の動向に二重構造。台湾では伝統的な村落の治安・行政制度であった「保甲制度」を利用し伝染病対策は比較的末端まで行き届いた。英領インドの公衆衛生政策の特質は統治者と被統治者との間の「懸隔」。インド社会は奥深い。

以上まとめると、
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プーナワラ家は拝火教徒。ワクチン製造の背景にはインドの歴史がある。

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