島々の花輪

モルディブは、インド洋の島国、インドとスリランカの南西に位置する。2019年4月の議会選挙で、親インド派のソリ大統領率いるMDP・モルディブ民主党が過半数を押さえて大勝した。親インド派の大統領選挙に続く勝利になる。2018年9月の大統領選で、ソリ氏が親中派で現職のヤミーン氏を破っている。中国の影響力が低下することになるのだろうか。
 選挙管理委員会はモルディブ民主党が全87議席中、60議席以上を獲得したと発表。議会で優勢だったヤミーン前大統領率いるモルディブ進歩党(PPM)が敗北した。
 モルディブは13年以降のヤミーン政権下で中国傾斜を強め「一帯一路」に加わり、資金や建設資材などを中国から調達し、2017年末には中国と自由貿易協定(FTA)も締結。輸入の対中依存度は、12年の4%から18年には17%に跳ね上がり、インドからの輸入比率の10%を上回った。
 18年11月に大統領に就いたソリ氏や与党MDP・モルディブ民主党は、ヤミーン氏の疑惑を指摘する。ヤミーン氏は19年2月、自身のマネーロンダリング疑惑を巡り出廷する証人に偽証を求めたとして一時逮捕された。モルディブ民主党は、ヤミーン氏が中国関連のインフラ事業で一部を横領したとみている。ソリ氏は、首都マレで「盗まれた資金を取り戻す。専門委員会に捜査権限を与える」と訴えている。
 インドのモディ首相は2018年12月、ニューデリー訪問中のモルディブのソリ大統領と会談し、財政支援として14億ドル(約1590億円)の融資枠を設けると表明している。イインドは支援を通じて中国をけん制し、モルディブを自国の影響圏に取り込む狙いがある。ソリ氏の初めての外遊先はインドだった。モディ氏は「インドはモルディブに財政支援や通貨スワップを提供する」と表明。両国はビザ発給要件の緩和や情報技術分野での協力でも合意した。

(ヤミーン)
 ヤミーン元大統領には直接会ったことがある。

中国は最近、マレに大使館を開き、関係強化を進めている。

(モルジブ)
 モルディブはモルジブともいわれる。現地名は別にある。英語名の「Maldives」は「島々の花輪」を意味するサンスクリット語に由来するといわれる。モルディブの珊瑚礁の島々が輪を描くように並んで浮かんでいる。花輪のようだ。
 もとは6世紀頃、セイロンから仏教徒の人々が移住してきた、といわれている。1153年、アラブ人がイスラム教を伝え、イスラム教国家となる。大航海時代の1558年、ポルトガルが首都のマレを占拠、オランダの保護国、イギリスの保護国という、公式通りの植民地時代を経て、1932年、最初の憲法が起草され、君主が世襲制から選挙制に移行した。1965年7月26日、スルターンを元首とする君主国(モルディブ・スルターン国)として独立。ナシル初代大統領、ガユーム大統領の時代の時代の1988年11月3日、傭兵部隊によるクーデターが勃発し、当時モルディブは軍を保有していなかったため、輸送機でインド軍部隊が投入され傭兵部隊は鎮圧された。2004年には、ガユーム大統領と野党勢力の対立でデモが拡大し、非常事態宣言が出され、12月26日、スマトラ島沖地震による津波の襲来を受け82名が死亡するなどの被害を受けた。2007年9には首都マレで、爆弾テロと見られる爆発があり、日本人2人を含む外国人観光客12人が負傷した。2015年9月にはヤミーン大統領の暗殺未遂事件も起きている政情不安の国。
 2018年12月17日、ソリ大統領がインドを訪問。前政権の放漫運営のため公務員への給与支払いもできないほど国家財政が苦しく、インドに財政支援を求め、インド側が、14億ドルの融資枠と通貨スワップを提供を承諾したという流れになる。前政権が試みた中国の経済圏への接近から一線を画し、再びインドの経済圏へ接近する形となっている。
 モルディブ諸島は、スリランカ南西のインド洋に浮かぶ26の環礁や約1,200の島々から成り、約200の島に人が住む。高温多湿の熱帯気候。海抜の最高が2.4mという平坦な地形で海面上昇と珊瑚礁の死滅で、国土消滅が心配されている。1m海面が上昇すると国土の80%が失われると言われる。2008年、ナシード大統領観光収入を使ってインドやスリランカ、オーストラリアなど海外の土地を購入し、国民が移住できる土地を確保する意向を表明し注目を集めた。主要作物はココナッツ、バナナ、タロイモ。ココナッツはコプラの原料となる商品作物である。主食の穀物は輸入している。漁業ではマグロ、カツオが最大の輸出品目となっているが、鉱物資源はない。観光では、基本的に1つの島に1つのホテルが存在する形式でホテルによって滞在する島を選び、ドーニーと呼ばれる木製のボートや、モーターボートで移動する。
 小さな島国モルディブに巨大な橋が建設された。橋の名前は「シナマーレ橋」。中国から出資されたので、中国・モルディブ友誼橋と呼ばれる。全長2.1kmの橋は、なんと首都マレ島からマレ国際空港があるフルレ島へ繋がっている。モルディブでは見たことないような大きな建設物。マレ島と国際空港間は船のみ移動だったが、橋を利用すれば、2島間を徒歩、バイク、車で移動が可能となった。
 モルディブはインド洋のリゾート地として知られ、日本からも年間約3万9000人が訪れる。この国は伝統的にインドとの結びつきが強いが、2013年から大統領の座にあったヤミーン氏のもと、中国との関係を強めた。ユーラシア大陸全域をカバーする経済圏「一帯一路」構想を掲げる中国にとって、モルディブはインド洋の要衝にあたる。
 ヤミーン政権発足の翌年の2014年、習近平国家主席がモルディブを訪問して2億ドル相当の「中国モルディブ友好橋」の建設を約束して以降、8億ドル相当の空港整備など巨大プロジェクトが相次いだ。ヤミーン政権は独裁的な傾向を強め、前大統領が亡命。2018年2月に非常事態を宣言。憲法を一時停止した。2016年10月にモルディブは英連邦からの脱退を宣言、理由は英連邦で人権侵害を批判されたからだ。大統領選では、野党の統一候補ソリ氏が、ヤミーン政権に不満を抱く幅広い層の支持を集め勝利。欧米諸国からも「民主主義の発展」のメッセージが相次いだ
日本との関係では、日本の援助で設けられた堤防がインド洋大津波の被害を抑えた。モルディブの旧国歌『ガオミィ サラーム』は『蛍の光』と同じスコットランド民謡の『オールド・ラング・サイン』の旋律を用いた曲だった。 ###

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