檸檬

「胸に残り離れない苦いレモンの匂い雨が降り止むまでは帰れない切り分けた果実の片方の様に」檸檬は、ミカン科ミカン属の常緑低木、柑橘類のなかでも主に酸味や香りを楽しむ香酸柑橘類。レモンの近縁種のシトロンの別名が枸櫞(くえん)で、クエン酸の名はこれに由来する。原産地はインドのヒマラヤ東部。樹高は3mほどになり、枝には棘がある。葉には厚みがあり菱形、もしくは楕円形で縁は鋸歯状。紫色の蕾を付け、白ないしピンクで強い香りのする5花弁の花を咲かせる。レモンは柑橘類の中では四季咲き性の強い品種で露地植えも栽培できるが鉢植えの方が早く開花結実する。増殖は主に接木・挿し木で行なわれ日本ではリスボン種とユーレカ種の栽培が多い。
 主な品種のうち、リスボンは大木になりトゲが多い。日本ではブランド名の「サンキスト」でも知られている。カリフォルニアの内陸部や広島県で栽培。多汁で香りの強い品種。ユーレカは耐寒性が弱いが品質は高い。ビアフランカはトゲなしレモンで果実の品種特性はユーレカに近い。日本へは戦前に広島県に導入され、生産量も増えて主力品種となっている。
 レモンの原産地はインドのヒマラヤ山麓である。レモンが栽培され始めた当初はシトロンと混同されることも多かったため、どの時期に栽培され始めたかについては不明な点も多いが、レモンの原種であるシトロンは古くから地中海沿岸において盛んに栽培されてきた。
 今ある柑橘類は、アジアとオーストラリアが一つの大陸であった時代の「マンダリン」「ザボン」「シトロン」という柑橘の3つの野生種の交配によって出来たもの。そのうちレモンは、そのほとんどを「シトロン」から受け継いでいる。
 現在のシトロンは、イタリア南部、コルシカ島、ギリシアで糖果用に栽培されている。果肉は淡黄色で酸味が強く、そのままでは美味しくない。果実は砂糖煮に、果汁は飲料とし、クエン酸の原料としたり、果皮や葉から香油を取る。
 シトロンの種子は、紀元前4000年前のメソポタミアの発掘現場から見つかっている。
 紀元前800年以前には、ヒンドゥー教の聖典にシトロンに関する記述がある。
 レモンの原産地はインドのヒマラヤ山麓の温暖な地域のようで、ブンタン類とシトロン類との交雑から生まれたと推測されている。インドからペルシア、バビロニアへと南下し、そこでユダヤ人に見いだされパレスチナへ伝えられた。紀元前300年頃、アレクサンダー大王の軍隊によって地中海へもたらされ、ヨーロッパに伝わり栽培された最初の柑橘類となり、地中海海域の柑橘栽培が拡大した。
 シトロンは供物としての需要が高く、ユダヤ収穫祭、仮庵の祭りには、ギンバイカと柳の枝で束ねたシュロの枝と、シトロンが必要だった。4世紀にシトロンが中国へ伝わった後、仏教徒は(ブッシュカン)を珍重。仏手柑は、シトロンの変種で、果実の先が何本もの指のように長く裂けていて、その指の部分を合わせた様子が合掌に似ている。インド由来の柑橘が、中国では、家庭や寺院の祭壇の供物として珍重されている。
 レモンの栽培を拡大たのが「壊血病」。1500年頃、ヴァスコ・ダ・ガマやマゼランの航海等で船員達を襲った壊血病で、歯肉が腫れ上がり何も食べられずに餓死したり、手足の痛みや歯肉の腫れに苦しみん船員は多い。長期航海船に壊血病はついて回った。イギリスの提督リチャード・ホーキンスによれば、彼が海軍にいた16世紀後半の20年間に1万人の船員が壊血病で死亡したという。原因はビタミンCの不足。ビタミンCは、タンパク質、コラーゲンの生成に不可欠だが、航海で生の果物や野菜なしで過ごすとコラーゲンが十分に生成されず、歯肉の出欠や腫れ、手足のこわばり等様々な症状が出始め、最終的には死に至る。そこで英国海軍は、レモン汁を支給。レモン汁は樽の中でオリーブ油の層の下に保存され、果汁のアスコルビン酸のほとんどが失われずに保てた。
 レモンが日本に持ち込まれたのは、新しい。『日本果物史年表』に、1875(明治8)年4月に「勧業寮,米国加州在住の総領事高木三郎の手により,アメリカからオレンジ,レモン,ストロベリー,ホップ等の種苗を導入」と記載されている。日本に伝わったのは開国後の明治のことで、数多くの舶来品の中にレモンも混じっていた。明治6年、ある外国人が静岡県の熱海に湯治に訪れた際、食膳に供されたレモンのタネを庭にまいたという逸話が残っている。岸田吟香の精錡水本店からレモン水を売り出したのは明治一〇年(一八七七)八月とされている。東京日日新聞の記者であった岸田吟香の経営する銀座三丁目の精錡水本店から発売された黎檬水がさかんに宣伝して評判を呼んだと伝えられている。
 南インドの家庭料理に「レモンライス」がある。黄色の鮮やかさが現地にいるような食欲を演出する。ナンやタンドリーチキンは北インドだが、「レモンライス」は南インドの料理。レモンの皮のすりおろしと絞り汁を使った「レモンチャーハン」で暑い南インドで食べるとさっぱりする。インディカ米を炊いたものに白レンズ豆とフェネグリークシードを加える。赤とうがらし、マスタードシード、カシューナッツとほかにも加えるスパイスや具材の種類は多い。レモンの皮のすりおろしは、チーズのすりおろし器でたくさん作れる。香りと酸味は、熱を加えるとなくなるのでほどほどに。味は見かけほどすっぱくはなく、ぱらっとしたインディカ米で軽い味わい。

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