ジェット失速

かつてインド民間航空会社の国内線トップだったジェット・エアウェイズが、全面運航停止に追い込まれた。インディゴなどのLCC・格安航空会社に押され、経営危機が表面化し、給与も支払えない状態となり自主再建を断念。パイロットや保有の機体の引き取り先を巻き込んで航空業界の再編が進むことになる。ジェット・エアウェイズは、1993年にかつてのタタ航空以来の民間航空として運航を開始、国営エア・インディアとインディアン航空による独占状態に一石を投じた。2004年には、運航経験5年と保有20機という条件を満たして国際線に進出。2007年にはライバルだったエア・サハラを買収し、一時は航空機120機以上、国際線も含めて毎日600便以上を運航しインドを代表する民間エアラインへと成長した。私もよく利用した。
 インドの航空業界は、旅客数が年間20%以上のスピードで拡大。インド国内線旅客数は2003年に1,591万人だったが2018年には1億3,900万人。日本をすでに上回っている。しかし、値下げ競争に耐えられなくなったエアラインが撤退を余儀なくされてきた。国営のエア・インディアはインド政府の支援で生き残りを図ってきたが、ジェットは事実上見捨てられた。
 ジェットの経営は、きびしく、原油価格や、他の新興国に比べて割高な空港使用料などで、2013年の経営危機に陥り、UAEのアラブ首長国連邦のエティハード航空の出資を受けたこともある。最近では、インディゴやスパイス・ジェットなど、低運賃・低コスト運航のLCCとの競争で疲弊し、国際線進出や高コスト体質が経営を圧迫していた。2018年の原油高やルピー安が逆風となり、2019年に入ると、IOC・国営インド石油が代金未払を理由に給油を拒否。75機の大量発注をしていたボーイング737MAX-8型機がインドネシアやエチオピアで相次いで墜落した事故がとどめを刺した。 パイロットなどの給与が払えない状態にもかかわらず、LCCとの競争に耐えられる経営の合理化を経ず、エアバスA330やボーイング777などの大型機を次々と購入し、国際線に本格進出した判断にも批判が集まる。
 インドは長距離列車の運賃も安く、エアラインの競争は熾烈だ。IndiGo・インディゴは2006年に在米インド人とインド国内企業が出資して設立され運航を開始したLCC。2005年に設立準備としてエアバスA320型機を100機を発注し、初号機は、ニューデリー-インパール間を運航した。「定時制」「清潔な機内」「十分なサービス」というインドの航空業界の常識を覆す売り文句で、ジェットとキングフィッシャーを抜き、国内最大手となっている。再編の波は、民間と国営の在り方にも大きな影響を与える。

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