林檎と柿

印度という名のりんごがある。明治初期に青森県弘前市の菊池九郎氏の庭園に撒かれた種から育成された品種。名称「印度」の由来は、インドではなくアメリカのインディアナ州の関連のもののよう。インディアナももとを糺せばインド由来。インドにはリンゴ文化は少なく、カシミールなど北部の高地で小ぶりのものが作られるだけ。
 青森の印度リンゴはかつて贈答用高級リンゴとして扱われたという。印度からの交配種として王林や陸奥、東光などが生まれた。紅玉や国光などと異なり酸味が少ない。やや縦長で、果肉がやや固く、水分は少なめ。印度りんごは晩生種で、10月中旬頃から収穫が始まる。保存性が高く、収穫後2ヶ月程貯蔵した後の方が甘味が強くなる。年が明けてから食べごろを迎える。
 青森の国産りんごが、そのインドに初輸出される。世界有数の消費国に期待が集まる。農産物の輸出拡大の一環。インドはりんごの新たな輸出先。インドに向けて輸出されるのは、青森県産の「ふじ」や「王林」など。農林水産省が10年前からインド政府と協議を続けてきた。2019年12月、試験的な輸出の許可が下りた。病害虫などの問題がなければ、本格的な輸出が認められる。国内のりんごの消費量が伸び悩む中、青森県などの産地では輸出の拡大に力を入れている。台湾や香港が主な輸出先。輸出を行う弘前市の商社「青森トレーディング」などが試験的に取り組む。
 インドの巨大な中間層はアメリカからのリンゴの輸入も始めている。
 柿の現地生産も始まっている。100年近い歴史を持つ日本の定番スナック。柿ピー、つまり柿の種。日本に来て柿の種が好きになるインド人が多い。インド人も好きなのだ。なぜ柿の種がインド人に人気があるのか?ヒンドゥー教やイスラム教の宗教上の理由から、牛肉や豚肉はもちろん、厳しいベジタリアンは卵も食べられない。そこへいくと柿の種は植物由来だ。宗教的タブーのないスナックだから国民的な食べ物になる可能性もある。シク教徒もジャイナ教徒もキリスト教徒も皆で楽しく輪を囲める。もともとインド人は辛いもの、刺激のあるものが好き。唐辛子はチリのこと。珍しい醤油の味つけで、サクサクパリッと食べられる。インド式煎餅のパパドもスパイスが効いていてこちらは日本人にファンが多い。南インドでは料理の付け合わせ、北インドでは食後、日本人はメインディッシュが来るまでのお通し変わりに好んで食する。柿の種はこれにナッツの風味が加わる。最近はインドでも晩酌をする人が増えてきた。柿の種は、安くて日持ちがよくて、携帯できるおつまみとしてお土産としても人気がある。 
 亀田製菓(新潟市江南区)がインドで柿の種の生産を開始。中国産の製品のインドへの輸出ではなく、現地で生産。新工場が設けられたのは首都ニューデリーに近いハリヤナ州。平屋建てで延べ床面積約6400平方メートル。2018年に着工、2019年10月に完成し、試運転を経て11月に本格製造を始めた。今月27日にセレモニーが開かれた。コメの販売、輸出を手掛けるインドの大手食品会社「LTフーズ」と合弁会社「ダワットカメダ」を設立。中国・青島の工場で試作品を作り、本格進出が可能だと乗り出した。
 インドで販売する柿の種「KARI KARI(カリカリ)」は日本向けより粒が一回り大きい。インディカ米でできており硬めの食感。チリガーリック、マサラ、ワサビ、ソルトペッパーの4種類。価格は70グラム入り50ルピー(約80円)と150グラム入り99ルピー(約150円)。すでにアメリカやタイでも販売されている柿の種はインドの巨大市場の定番のスナックになるのだろうか。

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