またインド人
IBMが8年ぶりトップ交代を発表した。新CEOはインド出身のアービンド・クリシュナ上級副社長(57)。2019年1月30日、バージニア・ロメッティ最高経営責任者(CEO、62)が4月に退任し、クラウド事業を率いるクリシュナ氏がCEOに昇格すると発表した。成長が続くクラウド事業を重視することの現れともいえる。株式市場は好感し、同社の株価は30日の時間外取引で5%近く上昇した。IITインド工科大学カンプール校出身で、アメリカに留学後そのまま1990年にIBMに入社。IBMでは人工知能や量子コンピューターの研究も率いているほか、ソフトウエア大手、レッドハットの買収を指揮した。
それにしてもまたインド人。GoogleもMicrosoftもインド人だ。世界企業のインド人経営者まとめると大変なことになる。ここ数年立て続けにインド人が名高い世界企業の最高経営責任者(CEO)等に就任して世界を驚かせている。もはや日常茶飯事にもなりつつある。世界企業のトップに立つインド人経営者の中でも特に顕著なのはIT関連の企業だ。
Softbank -ニケシュ・アローラ氏(Nikesh Arora)
Google -サンダー・ピチャイ氏(Sundar Pichai)
Microsoft サティヤ・ナデラ氏(Satya Nadella)
Adobe systems -シャンタヌ・ナラヤン氏(Shantanu Narayen)
Master card -アジェイ・バンガ氏(Ajay Banga)
PepsiCo -インドラ・ヌーイ(Indra Nooyi)
ドイツ銀行(元) -アンシュ・ジェイン氏(Anshu Jain)
NOKIA -ラジーブ・スリ氏(Rajeev Suri)
SanDisc -サンジェイ・メロートラ(Sanjay Mehrotra)
二〇一五年にグーグルのCEO・最高執行責任者に就任したサンダー・ピチャイ氏。彼が生まれたインド南部にあるタミル人の両親の家には、自動車も電話もなかったという。ピチャイ氏はそこからIIT・インド工科大学を経て、奨学金でスタンフォード大学に留学。グーグルに入社後は、インターネット閲覧ソフトや、スマートフォンで一気に拡大したアンドロイドOSの事業に関わり、入社十一年でCEOとなった。
マイクロソフトのトップを務めるサティヤ・ナデラも、一九六七年にインド南部アンドラプラデシュ州ハイデラバードで生まれた。ナデラ氏がインド人であることは、サンスクリット語で「真理」を意味するサティヤという名前からわかる。クラウド技術の拡大で頭角を現し、ビル・ゲイツ、スティーブ・バルマーに次ぐ三代目のCEOになった。
ソフトバンクの副社長やヤフーの会長を務めたニケッシュ・アローラは、一九六八年インド北部のウッタルプラデシュ州で生まれた。ヒンドゥー教徒の沐浴で有名なバラナシにある大学で電気工学を学び、渡米。グーグルに就職後、孫正義会長からソフトバンクの後継者に指名され、百億円を超える年収も話題となった。
アドビのシャンタヌ・ナラヤン氏。1967年生まれ。ハイデラバード出身でマンガロール大学で電気工学学士号取得。サン・マイクロシステムズ社、1992年マイクロソフト入社、2012年2月マイクロソフトCEOにも就任している。PhotoshopやIllustrator等を開発したコンピュータ・ソフトウェア会社を率いる。
マスターカードのアジェイ・バンガ氏(Ajay Banga)は、プネ出身の1960年生まれ。IITアーメダバード校を卒業し、1981年ネスレの子会社入社(12年間)、PepciCo入社(2年間)を経て、シティグループ、アジア太平洋操作のCEOを務めたあと、2009年マスターカード入社、翌年の2010年にマスターカードCEO就任した。シク教のターバンがトレードマーク。
ペプシコPepsiCoのインドラ・ヌーイ(Indra Nooyi)は1955年にチェンナイで生まれた。2006年ペプシコCEOに就任。ペプシ・コーラで知られる食品業界第2位の会社を率いる。
NOKIAのラジーブ・スリ氏(Rajeev Suri)1967年にニューデリーで生まれた。2014年 NOKIA CEO就任。フィンランドの電気通信機器メーカーは携帯電話だけで終わるかと思いきや、世界のスマホ業界ではAppleやSAMSUNGと肩を並べ有力企業であることが、日本ではあまり知られていない。
SanDiscのサンジェイ・メロートラ(Sanjay Mehrotra)は1958年のカーンプル生まれ。日本でもSDカードでよく名前を目にするメモリの会社。
1911年設立のIBMはアメリカのIT企業で最も長い歴史があり、インドにもいち早く進出しているが、一度インドから撤退している。アマゾンなどとのクラウド事業の競争も激しく売上高は2012年以降、減少傾向が続いている。インド人のトップがまた流れを変えることになるのだろうか。