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国内景気をモディ政権は回復できるのだろうか。農業と建設、自動車と不況が連鎖する形となっている。2019年度(2019年4月~2020年3月)のGDP成長率の見通しも6.1%から5.0%に下方修正された。モディ第二次政権発足後も経済失速が続いている。新車販売は前年同月比で1続けて前年の実績を割りこみ、急上昇を続けていた国内航空旅客数の増加も減速している。インド経済の回復には時間がかかる。インド経済の成長の要因と、急速な低迷の理由を振り返り、中長期の見通しを考えたい。成長のひずみが生み出したノンバンク問題が玉ねぎの不信に苦しむ農家の生活を圧迫し個人消費が冷え込み、ローンでは売れなくなった自動車を作る工場への投資が冷え、建設も停滞するという、負の連鎖。景気刺激策の結果が数字に表れるまでの時間稼ぎの利下げはインフレとのバランスで選挙の国インドの政治を変える。いつか見た光景だ。ちがうのはインド一国の問題ではなくなっていることではあるが。
 問題が表面化してきたのはノンバンク問題。企業向け融資の低迷したのは、2018年夏に信販会社やリース会社など預金などを受け入れないノンバンクが債務不履行を引き起こし、金融機関は企業への融資に慎重になった。自動車ローンを借りることが難しくなり、自動車の販売が打撃を受けた。ホンダの現地会社は、2019年11月に2 週間、工場操業を停止した。マンモハン・シン政権の末期に見られたのとまったく同じ現象だ。個人消費は落ち込み、2019年4-6月(第1四半期)の民間最終消費支出は3.1%増(前年同期が7.3%増)どまり。8月のインド国内の乗用車販売台数は前年同月比で31.6%減少となった。
 構造的な成長の壁に追い打ちをかけたのが玉ねぎの不作だった。雨不足のため一部地域で作柄が悪化。2019年12月1日、イ ンド財務相は価格高騰の緊急対策として、トルコ、エジプト、アフガニスタンから緊急輸入の方針を表明した。公共部門での外国取引機関のMMTC(Metals and Minerals Trading Corporation)が輸入を実行した。年初には年初には1 キログラムあたり10ルピー(約15円)だった玉ねぎの価格は、地域によっては20倍に跳ね上がった。インド政治における玉ねぎの価格は、2010年マンモハン・シ ン政権の基盤を揺るがし、2014 年のインド人民党への政権交代につながったことは記憶に新しい。政権交代と経済との関わりで必ずセットになってでてくるのが宗教紛争の問題。インドでは今、イスラム教徒以外の不法移民に国籍を与える「改正国籍法」をきっかけにモディ政権がイスラム教徒を排除する姿勢だとしてデモが拡大し、盤石と思われていた政権の安定性に影を落としている。海外投資家の懸念が経済の低迷に拍車をかける結果となっている。
 インド政府は景気刺激策を打ち出している。2019年度7~9月期国内総生産は前年同期比4.5%増と6年半ぶりの低水準となったのをうけた措置だ。インド政府が2019年7月に公営銀行への7,000億ルピー(約1兆500億円)の公的資金投入や、自動車や住宅の新規購入を促す優遇措置といった景気刺激策を発表。2019年度予算案で発表した海外投資家のキャピタルゲインに対する増税を従来の水準へと戻すこととした。自動車登録時の車両登録料引き上げを2020年6月まで延期。住宅建設支援の新基金を設立。高給ホテルなどの宿泊に課税される間接税も引き下げた。市場は政策金利引き下げ、財政出動を望んでいるため、インド中銀は金利引き下げによる金融緩和をするため、10月までの5会合連続で政策金利を1.35%引き下げ5.15%としたが、実際の貸出金利にまで効果は及んでいない。2019年12月の利下げを望む声は多かったが、インド中銀は金利の据え置きを決定した。2020年1月現在のインド・ルピーは1.5円台。ルピーは1.7円±0.2円で推移してきており、為替は低水準だといえる。
 (今後の見通し)
2019年後半に急激に減速したインド経済だが、2014年のモディ政権発足以降、インド経済は順調に成長し、2018年4-6月(第1四半期)には、GDP成長率8%にまで達していた。JBIC(国際協力銀行)が発表した調査では、中期的有望事業展開国ランキングで中国を抑え依然として1位をキープしている。2020年は農村部の需要が回復し、輸出不振が底を打ち、6.3%成長まで回復するとの予想もある。インド株式市場は2019年前半は、インド人民党の総選挙勝利を受けて上昇したが、その後は景気が減速し調整局面となった。8月以降政府が相次いで景気刺激策を打ち出し、年末にかけて上昇。主要株価指数のSENSEX指数は12月に過去最高値を更新し、年初来の上昇率は14%となった。米中通商協議の進展が難しく、中東情勢悪化に伴う原油高の影響もあり、2020年のの景気回復は緩やかで、2020年は5.9%程度の成長に回復すると見込まれている。
 インドの人口は2025年前後には中国を抜き、2030年には15.1億人、2050年には16.6億人まで増加すると予想されている。インドは30歳未満の人口が多く、生産年齢人口(15~64才)比率の増加が見込まれ、2040年頃まで人口ボーナスが続く見込みだ。 2016年にIMFが発表したインドの名目GDPは2.6兆ドル。これは中国の5分の120%、アメリカの10分の1。しかし、世界第2位の人口大国は若者が多く、スズキが成功したように海外の企業からみても伸び盛りの国。新興国の代表としてG20やBRICSでの存在感も強く、アフリカとの歴史的結びつきも強い。特に情報通信を中心に優秀で技術系人材が豊富だ。何度も繰り返し強調されてきたインド経済のポテンシャルと、成長の実績。これからどのような化学反応と潮流を生み出していくのだろうか。

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