石炭火力

石炭火力が減少に転じた。国際エネルギー機関(IEA)が、発表したグローバルCO2排出量2019レポートで、暦年2019年にインドの石炭火力発電が1973年以来初めて減少したと指摘。インドの電力供給のバックボーンである石炭火力発電所の発電。再生可能エネルギーの増加と経済の減速による電力需要の落ち着きを背景に大きな流れを生んでいる。
 石炭火力発電所からの発電は、前年度と比較して、2019-2020年の4月から12月にかけて3パーセント減少し、7800億ユニット(BU)になった。2006年から2007年にかけて4月から12月にかけて石炭火力発電による発電量の減少が初めて記録されたものとなる。
 IEAの報告書は「インドの排出量の増加は2019年に緩やかで、電力需要がほぼ安定していたため電力セクターからのCO2排出量がわずかに減少し、再生可能エネルギーの力強い成長により1973年以来初めて石炭火力発電が減少した」とている。
 「GDPの成長率、産業活動と消費の抑制、モンスーンの影響、電力会社の財政健全性により、今年の需要の伸びは落ち着いている。供給は、再生可能エネルギーと原子力が増える一方、火力発電は供給バランスを取るために使用されるため影響を受けやすい。火力発電による発電量の低下は、原子力発電所や水力発電所の発電量の増加によって相殺されている。特に水力発電は、同じ時期の4月から12月に16パーセント増加して130 BUになった。この期間の原子力発電所の発電量は25パーセント増加して36 BUになった。再生可能エネルギー源からの発電量も6パーセント増加。太陽光発電、バイオマス、小規模水力発電のパフォーマンスが向上している。この結果、2019年11月の時点で、火力発電所はインドの総発電容量の63%、その後に再生可能エネルギー(23%)、水力(12.43%)、原子力(2%)となった。

 インドは世界有数のエネルギー消費大国で、エネルギー輸入は年々増加している。海外電力調査会のまとめからその概要をみていく。2016年の一次エネルギー消費は中国、アメリカに次いで世界第3位で、エネルギー消費は増加し続けている。石炭、バイオエネルギー、天然ガス、水力などがあるが、国内需要を賄うことはできず、輸入が増え2016年のエネルギー自給率65%となっている。その)。2016年の一次エネルギー供給構成は、石炭44%、石油25%、バイオ燃料・廃棄物22%、天然ガス5%、水力1%、原子力1%。特徴は石炭の比率が大きいことと薪、藁、牛糞などの非商業エネルギーの利用が多いことだ。
 そのエネルギー構成の転換を目指しているのが現政権。国内資源を活用し、輸入依存度を低くしたい。温室効果ガス削減目標は2030年までに2005年比、国内総生産(GDP)1単位当たり33~35%削減を掲げている。インドのCO2排出量は20.7億トン(2015年)で、中国、アメリカに次いで多い第3位で、世界全体の6%に相当する。人口が多いので、一人当たりの排出量は1.6トン(2015年)と、世界平均の半分以下の水準で、これから増えていくことが懸念されている。先述の国際エネルギー機関の「世界エネルギー見通し」(2018年版)の中は、2040年の排出量は現行の政策を継続した場合で54億トンまで増加すると予想されている。
 大気汚染も深刻化。デリーのPM2.5の濃度は、世界保健機関(WHO)の基準値(年平均10マイクログラム/m3)を15倍も上回っている。2015年12月の法改正により、石炭火力発電所からのPMの排出規制が強化され、SO2、NOx、水銀の排出基準も設定された。再生可能エネルギーについては、「2022年までに1億7,500万kW」という目標を掲げている。その主力は太陽光で1億kW、風力6,000万kW、バイオマス1,000万kW、小水力500万kWと続く。太陽光の内訳は、ソーラーパーク等の大規模施設が6,000万kW、ルーフトップ設置型が4,000万kWとしている。これはモディ首相の10年来の構想だ。競争と輸入パネルの価格低下で太陽光の売電価格は下がり、2017年5月には1kWh当たり2.44ルピー(約4円)を記録した。風力発電所の建設でも、2017年度から競争入札が取り入れられている。2009年から固定価格買取制度(FIT)、2010年から配電会社などにその販売電力量の一定割合を再エネ電源から調達することを義務付ける「再エネ電源調達義務制度」を実施している。
 原子力は2027年までに1,688万kWに引き上げるとしている。2018年4月現在、原子力発電は7つのサイトにおいて、BWR 2基(計32万kW)およびPHWR18基(446万kW)、VVER1000(PWR)2基(200万kW)の合計22基678万kWが運転されている。水力、石炭火力などの代替電源が手当しにくい地域(西部、南部、北部)に優先的に立地し、地元の州電力会社に供給されている。インドは核拡散防止条約(NPT)に加盟せず、外国から原子燃料などの供給を受けることができなかったため原子力の利用が進んでいない。2008年に、「原子力供給国グループ(NSG)ガイドライン」が修正され、インドに対する原子力関連品目の供給が認められた。。2008年10月にはアメリカとインドとの間で原子力協定が締結され、フランス、ロシア、カザフスタン、イギリス、カナダ、オーストラリアなどの国々とも相次いで協定を結んだ。2017 年7月には日印原子力協定が発効。軽水炉とウラン燃料を海外から輸入する原子力発電を拡大している。中央電力庁(CEA)が2018年に公表した「国家電力計画」によると、2021年度末までに、原子力発電所の設備容量は1,008万kWに増加する。また、2026年度末には1,688万kWに達する見通し。
 2018年3月末現在の総発電設備容量は3億4,400万kWで、CEAの国家電力計画によると、電力需要の年平均伸び率を6.1%とする場合の2021年度の電力需要は、1兆5,660億kWh、最大電力を2億2,575万kWと想定されている。
 電気事業の中心は州営だ。デリー、ムンバイ、コルカタなどのインドの主要都市は、独立以前から民間の電力会社が電気を供給してきた。1970年代には、電源不足を解消する目的で、中央政府によって電力会社(火力公社、水力公社、原子力公社)が設立され、発電所が建設された。これに併せて、電源が不足する州に電気を送るため、州を跨ぐ送電線の建設や運用を行う国営送電会社(PGCIL)も設立された。インドでは、州をまたぐ送電線の約8割をPGCILが所有している。
北部、西部、東部、北東部、南部の5つの地域系統は、かつては異なる周波数で運用されていたが、地域間連系を進め2013年12月31日より1国1系統1周波数のナショナルグリッドが形成された。2019年2月現在は、再生可能エネルギーの増加に対応するため、再生可能エネルギーの発電量を常時監視するための「再エネ管理センター(REMC)」の設置が全国11カ所で進められている。
 インドでは長らく電力不足による停電が頻発していたため発電機を備えて対策を取っており、自家発による発電が総発電電力量の1割以上を占めている。消費電力量(自家発を含む)の部門別内訳は、2015年度で産業用42%、家庭用24%、農業(灌漑ポンプ)用17%、商業用9%、その他(上下水道・照明等の公共サービス、鉄道等)8%となり、農業用の比率が大きいのが特徴。料金未回収分等も含む配電ロスは全国平均で23%で、技術的損失に加え、盗電の影響が大きく、配電会社の財務状況を悪化させる原因となっている。配電ロスを低下させるためメーターの不正改竄を防止するためスマートメーターへの切り替えや、配電システムのIT化、盗電を防ぐため人口密集地域における配電線の地中化などが行われている。村落電化率は2018年4月末に100%に達し、世帯電化率は2019年2月末時点で99.9%となった。
 1991年のラオ政権発足後、インドは経済自由化路線に舵を切り、公的セクターが独占していた産業への民間参入や外資規制の緩和などの経済改革が行われた。この経済改革を機に、インドの電力部門でも電力自由化が始まった。1990年代後半から2000年代にかけての一連の電気事業改革では、配電部門の効率化や電気料金体系の整備に主眼が置かれるようになった。2003年には電力改革の基盤となる電気法が改正され、州電力局の分割や電気料金の合理化、水力発電以外の認可制の廃止、送配電系統へのオープンアクセス等が定められた。中央政府が提示した電力改革の枠組みを実行に移す権限は、州法を制定する州政府にある。発送電分離の形態などの供給体制は州によって異なる。積極的に発送電分離・民営化を実施した州もあれば、実質的に一体経営のままとなっている州など様々である。モディ首相を生んだグジャラートの電力改革はこの延長上にある。

 世界の中でのインドのエネルギーはどうなのか。IEA=国際エネルギー機関は世界で去年1年間に、発電などエネルギー関連で排出された二酸化炭素の量が、過去、最も多かったおととしとほぼ同じで横ばいだったと発表した。先進国で石炭の使用が減り、風力や太陽光発電といった再生可能エネルギーの導入が増え、経済規模の大きい国々で去年の気候がおととしに比べれば穏やかだったこと、それに経済成長の減速が新興国での排出量の増加を和らげた。
 依然世界は中東の石油供給に大きく依存する。同地域は引き続き世界石油市場への最大の輸出地域であり、またLNGの重要な輸出地域でもある。これは、世界最大の通商航路の一つであるホルムズ海峡が、特に燃料の輸入依存度の高いンド、の大動脈としての地位を維持する。2040 年には石油の国際貿易量の 80%がアジア地域に向かうこととなり、その大部分はインドの輸入量が倍増することによって引き起こされる。
 バッテリーコスト低下のスピードが、電力市場と電気自動車にとって重要な変数である。 世界のエネルギー需要増の最大要因となっていくインドでより安価な蓄電池と太陽光発電との費用対効果の高い組み合わせが、今後数十年に亘って同国の電源構成をどう変化させるかをWEOは分析している。蓄電池は、インドが必要とする短期的柔軟性に適しており、昼時にピークを迎える太陽光発電の供給分を、需要のピークである夕刻に利用できる。公表政策シナリオでは、バッテリーコストの大幅な低下により、2040 年までに約 120GW の蓄電池が設置されるとしている。量産効果の拡大やバッテリー技術のブレイクスルーなどによって、コストがさらに急速に下落するとm太陽光と蓄電池の組み合わせは経済面、環境面において非常に魅力的な選択肢となり、同国の新規石炭火力発電所への投資額は大幅に押し下げられることとなる。

2020年2月13日、IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)が2007年、気候変動の知識を広めた活動が認められてゴア元米副大統領と共にノーベル平和賞を受賞した際の議長で、授賞式に出席した ラジェンドラ・パチャウリ氏が心臓病のためニューデリーの自宅で死去した。79歳。議長を2002年から2015年までの2期13年務めた。インドで生まれ、財閥タタ・グループのタタ・エネルギー研究所の所長や日本の財団法人・地球環境戦略研究機関の理事を務め、2007年の来日時には立命館大学から名誉博士号を授与され、2009年には日本政府から旭日重光章を叙勲された。自身が厳格なベジタリアンであり、地球温暖化を防止するためにも肉の消費を減らすことをすすめていた。日本のクールビズを称賛していた。###

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