センザンコウは中間宿主なのか、インドにもいる穴掘りの名人は人間と離れて暮らしてきた

地元ではパンゴリンと呼んでいた。小さな優しい目を持つ大人しい動物で危険を感じると丸まってボールのようになる。密漁を取材したのはマレーシア半島の奥地だった。雲の子を散らすように逃げ、車のシャーシに隠れていたものもいた。人間都合の絶滅の危険をリポートで報告した。
 マレーセンザンコウは中国南部で食用にされ、鱗がリウマチに効く漢方薬として高値で売買される。密猟で個体数が激減し絶滅危惧種に指定されている。
 インドセンザンコウManis crassicaudataはアジアには3種が分布しているセンザンコウの一種。全長 1mほどあり、センザンコウの中でも大型。哺乳綱有鱗目センザンコウ科の動物。胴の鱗は龍のように長い尾を守る。大きく淡褐色をしてしたギターのピックのようなものが漢方薬に用いられる。センザンコウは日中は岩の割れ目や自分で掘った穴の中で過ごし、夜間に活動してシロアリやアリを捕食する。
 中国の香港大学と広西医科大学の研究者が、新型コロナウイルスに類似したウイルスが、センザンコウの仲間から発見されたと発表した。論文が2020年3月26日付けのイギリスの科学雑誌「ネイチャー」に掲載された。2017年から2019年に中国に密輸され、摘発されたマレーセンザンコウの31匹のうち8匹から新型コロナウイルスと類似したウイルスを発見したとのこと。遺伝子の配列が85%から92%の割合で一致。コロナウイルスはもともとコウモリの仲間が持っていたと考えられている。新型コロナウイルスの中間宿主がセンザンコウなのではないかということだ。
 マレーシアではコウモリも取材した。コウモリのコロナウイルスは、別の種類のコウモリや他の生物に感染しながら遺伝的な変異を繰り返し、ヒトへ感染するウイルスになる。2002年に27カ国で蔓延し死亡者774人を出したSARS(重症急性呼吸器症候群)の際に、コウモリについて調べた。コウモリは、そもそも種類が多く分布域も広い。長距離を飛ぶこともある。海を渡るものもあると聞いた。哺乳類の進化の中では原始的な動物で他の哺乳類の多くと共通の遺伝的特質を持っているため感染する能力を持ちやすい。冬眠して越冬するので寒さの中でもウイルスの住処になり寿命も長い。コウモリの住む洞窟に入った。空気は滞留し紫外線や熱で消毒されることもない閉鎖空間に集団で暮らしていた。臭かった。人間が簡単に捕まえるので食用にもされる。超音波を頼りに唾を飛ばしながら狭い空間の中を飛び交う。
 SARSはコウモリから中間宿主であるジャコウネコ(ハクビシン)を経てヒトに感染した。MERSのウイルスはコウモリからヒトコブラクダ経由と考えられている。今回の新型コロナウイルスが本当にセンザンコウ経由であることが分かれば大きな前進になる。
 マレーシアで被害がでたニパウイルス感染症も恐ろしい病気だった。1997年、マレーシア北部で養豚場労働者の間で急性脳炎が流行した。その後、1999年3月に患者が急増し、半数が死亡した。急性脳炎の多発は、Nipah virus(ニパウイルス)によるブタの感染とヒトでの脳炎であることが解明された。マレーシア政府は、感染源となったブタの屠殺処分を行い、ヒトへの感 染経路を遮断した。ウイルスが分離された患者の村の名前からニパウイルスと名付けられた。Nipah virusの自然宿主もコウモリだった。大規模経営の養豚業者がジャングルを切り開きブタがウイルスと遭遇しヒトへ感染が広がったと考えられている。コウモリの洞窟のふもとにる養豚場で立ちリポを収録した。
 センザンコウはその外見や行動から鱗のあるアリクイともいわれる。哺乳類で立派な鱗を持つのはセンザンコウだけ。昆虫を食べる長い舌、 シロアリ塚を掘る鉤爪も特徴的だ。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種となっている。サイの角と同様にセンザンコウの鱗に医薬成分があるわけではないという。「世界で一番密猟されている」とも言われている哺乳動物でアジアとアフリカに分布する8種全てが絶滅の危機にある。wwfによると2019年にアフリカから密輸されたウロコは97トンにもおよび、センザンコウ15万頭に相当するとのこと。
 自然環境の変化や密猟、都市化で人間ととあまり接触しなかったコウモリやセンザンコウとの接触が増えた。そして人間もコウモリのように狭い場所で唾を飛ばして生きている。ウイルスを抱えて渡り鳥よりも長距離を移動するようになった。

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