日本人も心配、感染爆発も心配、危機の折にこそ日印が助け合うことができる

インド洋大津波では日本が支援した。東日本大震災ではインドの支援を受けた。危機のときにこそ協力が欠かせない。アメリカはインドから薬を譲りうけることになったが、トランプ大統領からの強い圧力があった。日本は国内対策で精いっぱいではあるが、友好国との関係は自国のためにもやはり大切である。
 安倍首相が2020年4月10日、モディ首相と電話会談し感染拡大収束へ緊密に連携していくことを確認した。各国とも外訪ができないなか、電話外交を活発にしている。35分間の会談で、モディ首相は、集団感染が確認されたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」のインド人乗客・乗員への日本政府の支援に謝意を示した。安倍首相は、在留邦人のインドからの出国支援の継続を要請した。SARRC首脳のテレビ会議を開催し南アジア地域で指導力を発揮してていることも指摘した。
 国際線が運航停止となったインドには全日空と日本航空が臨時便を往復させている。10日の段階で計2342人が帰国した。茂木外相の2020年4月10日の衆院外務委員会での発言によると、国境封鎖などで滞在する国を出られなくなった世界各地の日本人計約4600人がチャーター機などで出国か帰国を終えたとのこと。ムンバイにも臨時便が飛ぶとのこと。


 ムンバイは世界第6位の巨大都市で感染爆発が心配される。ムンバイを含む西インドのマハラシュトラ州は、インドでの感染報告が多い地域となっている。マハラシュトラ州のウッダブ・タークレー州首相は2020年3月11日、感染者が州内で10人確認されたと発表している。ムンバイで2人、プネで8人。ムンバイには約600人の在留邦人が登録されている。プネも日系企業が多く在留邦人は約200人。ドバイへのツアー旅行からの帰国者が感染ルートと見られている。
貧困層への感染拡大が懸念される。ムンバイにはアジア最大のスラムと呼ばれる衛生環境が悪く医療体制も整っていないダラビ地域がある。100万人が生活しているこのスラムで、2020年4月10日までに22人の感染が確認され、3人が死亡している。
 2.1平方キロメートルの面積のダラビ地区は世界で最も人口が密集する地域の1つ。社会的距離を強制することは難しい。屋外排泄も残り、十分な医療施設もなくクラスターの発生が懸念される。10人近い家族が一つのベッドルームに暮らす。部屋の換気もよくない。スラム居住者の移動を制限してダラビ地域は封鎖された。感染地域の取材をした経験もあるが、ここは単独で入ってはいけない地域だろう。
 ムンバイでは700~800万人がスラムに暮らすといわれる。スラムの住民の75万人を対象にウイルスの検査を実施するとのこと。感染者が確認された地域では外出禁止、食料品などの生活必需品は地元政府が配達している。
 インドでは、気管・気管支・肺癌による死亡は0.85%と低い。非感染症の中では虚血性心疾患が死亡要因の1位で約15%を占める。糖尿病、慢性腎臓病も約2%と高い。いまだに多いのが感染症。「感染症」は2017年には26%にまで減少していたが、1990年には死亡要因の半分強を占めていた。インドでの公的医療機関は全体として医療体制の整備が進んでいない。
公的医療機関には、サフダルジャンSafdarjung Hospitalがある。第2次世界大戦中の軍用に1942年に設立され、1954年にインド政府に移管され1973年には医科大学を設立している。2018年時点で、総医師数は107万人、1万人あたり医師数は8人。保険制度は労働者を対象とした従業員国家保険と、貧困層を対象とした国家医療保険制度の2つがある。従業員国家保険は系列の病院で無償で外来受診と入院可能。保険料を納めるなど条件にあえば賃金の70%が給付され、労災、失業保険などの支給もある。貧困層対象の保険制度では、登録医療機関で無料手術の入院医療の制度がある。世帯年間30,000ルピーが上限とのこと。インドでは医師の社会的地位は高いが看護師の地位は低く医療水準向上を妨げている。医療サービスの市場規模は2015年には829億US$となった。医薬分業で医療用医薬品の包装も欧米と同じでパッケージされている。
 ジャスワント・シン元財務相がメディカル・ツーリズムを提案し、医療目的でインドを訪れる外国人観光客がイラク、イエメン、パキスタン、バングラディシュ、アフリカ諸国から訪れ、整形外科手術、美容整形外科手術、歯科治療を受けている。第12次五カ年計画(2012年~2017年)では、① 妊産婦死亡率を 212 人(出生 10 万対)から同 100 人に低減② 乳児死亡率を 44 人(出生千対)から同 25 人に低減③ 3歳以下の低体重児を40%から23%に低減④ 小児性別比を941から950に上昇⑤ 女性の貧血率を55%から28%に低減⑥ 合計特殊出生率を2.5から2.1に低減⑦ 貧困家庭の医療自己負担費の軽減、が目標として掲げられ、保健家族福祉省に約270,000千万ルピーが予算配分されたが、実際に支出されている額は大きく下回ったものと見られている。
 日本との間では、2016年11月11日に日印共同声明に署名。この際に、インド医療評議会(ICMR)と我が国国立感染症研究所(NIID)の間で,AMR(薬剤耐性)に関する研究を共同で行うことについて2016年4月に趣意書に署名した。2016年8月,全インド医科大学,大阪大学,大阪私立大学,鳥取大学,国立病院機構災害医療センターの間で,医療機器開発や災害救急医療等の協力を進める円卓会議を開催した。
 2020年4月6日、乗用車大手ホンダ・カーズ・インディアは、コロナの影響で資金繰りに苦しむ販売店を支援するため、店舗への前払いに応じる方針を示した。
 去年暮れの安倍首相の訪印は治安を理由に延期にされた。当面訪印は難しそうだが外交を停滞させることはできない。2020年3月27日、鈴木哲大使とC・S・モハパトラ財務省経済局次官補との間で,総額3,744億4,000万円を限度とする円借款9件に関する書簡の交換が行われた。
 主な内容の一つはグジャラートの地下鉄支援。交通渋滞が深刻なアーメダバードに地下鉄2路線(南北線・東西線)を建設する。南北の移動時間は約70分のところ約40分,東西の移動は約98分のところ約42分となる見込み。
 もう一つは貨物鉄道支援。デリー・ムンバイ間産業大動脈構想の実現に向けたもの。特に整備優先度が高いとされるグジャラート州,ラジャスタン州及びハリヤナ州の主要都市を結ぶ新線を建設する。全自動信号、通信システム、高速機関車を導入するための融資。これにより輸送列車数が33本から222本に増加する見込み。
 そして公衆衛生の支援も行っている。安全な飲料水供給。上水道設備の整備への融資だ。マディヤ・プラデシュ州北西部3県の上水道設備整備を支援する。
 ムンバイについては、交通渋滞緩和のための地下鉄建設への融資。総延長約34kmの輸送システム建設のために融資。ムンバイメトロ3号線により,列車運行数は767本,乗客輸送量は1日当たり1,380万人・kmとなる見込み。ムンバイでは道路建設も支援する。半島側のムンバイ中心部からムンバイ湾を挟んだ対岸のナビムンバイ地域を接続する海上道路を建設する。現地を訪れた人はすぐにわかると思うがここがボトルネックになっている。対象区間の旅客数は新たに年間約4,600万人が見込まれ、所要時間は最寄りの迂回路経由による約61分(2015年実績値)から約16分に短縮される見込み。インドが相手だからなのか、計画に具体性と数字がはっきりしていてわかりやすい。
 北東部のトリプラ州の国道の改良や、メガラヤ州の森林保全も支援する。グジャラート州ではマングローブ林及び防風林の造成も支援して融資。マハラシュトラ州では都市環境問題の改善のためのナグ川流域の下水道設備整備に融資した。
 金利は低い。償還期間は主に30年と長い。調達条件はひも付きなし。
 日本国内では本の交流もあった。東京五輪アーチェリー競技インド代表のホストタウンになっている黒部市に、インド大使館からインドを紹介する本が贈られた。新型コロナウイルスの影響で五輪は延期となったが、文化交流は進めようという。日本語十六冊、ヒンディー語八冊、英語二十六冊。ガンジーの伝記、仏教の紹介、インド神話、料理、ヨガなど。本は市内小学校を巡回する。

 日本人も心配、感染爆発も心配、危機の折にこそ日印が本当に助け合うことができる

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