敵視、暴力、女性攻撃、差別、厄禍に宗教が果たす役割は何か、生死を超越した時間をつなぐインドの施設

2020年5月12日、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が、宗教指導者たちに新型コロナウイルスとの戦いにおいて役割を果たすよう、呼びかけた。ビデオメッセージで感謝の意を表明しより大きな役割を果たすことができるとした。コロナ禍が生む、誤解、暴力、敵視、差別という心のウイルス。女性への暴力が増加していることを懸念。宗教は接触を前提とする。社会的距離を保ちながら、衛生面、礼拝、儀式、葬儀などの宗教的活動を続けるのは難しい。教育の機会も奪われている。宗教指導者に教育にも取り組むよう求めた。

 日本を初めて訪れたインド人は、東大寺の開眼供養を行ったボディセンナ。聖武天皇が大仏を建立したのは日本で大流行した天然痘の厄禍を払うため。735年から737年にかけて大流行した天然痘は当時の人口の4分の1以上の人の命を奪った。東大寺と盧舎那仏で天然痘の流行で荒れ果てた国土を回復させようとした。鎮護国家の思想。開墾地の私有を認める社会改革も進んだ。地方分権ではないが、国分寺と国分尼寺の建立も進んだ。危機に立ち向かう人々の結集軸といての精神的な拠り所となった。が、巨大な公共支出は財政を圧迫することにもなった。

 お水取りが行われていたころはまだ大丈夫な雰囲気だった。東大寺は2020年4月24日、高野山真言宗やカトリック大阪教区などと大仏殿前で共同会見を開いた。東大寺の狹川普文別当は「早期終息と感染により亡くなられた方々の追福菩提を共に祈りましょう」とのメッセージをホームページに掲載。会見には高野山真言宗の添田隆昭宗務総長やカトリック大阪教区の川邨裕明司祭らが参加した。

 3密を避けられない宗教施設。国内最大規模のモスク・東京ジャーミイ(東京都渋谷区)を訪れる人も少ない。江戸川区のヒンドゥ―教寺院は一般向けには閉鎖している。

 UNICEF=国連児童基金の2020年4月7日の声明。「各宗教は集会や儀式を行う際、各国の保健当局の指示に従い信者の健康と安全を守る。清潔さを重視する宗教の教えや聖典に沿って、衛生習慣の関心を高める」

 宗教が求める接触と、医学が求める非接触。マザーテレサが開いた「死を待つ人々の家」は、緊張のバランスの中で、生死を超越した時間をつないでいる。

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