危機は世界を変えてきた、コロナ危機はインドをどのように変えるのか
(政治)
政治の面で特筆されるのはモディ首相の指導力が発揮された点だ。諸外国の中には危機対応の中での首脳が果たす役割について低い評価が多い中で、モディ首相は、高い評価を得ている。23か国の評価の中でも極めて高い評価が与えられ、支持率も90%を越えるまでになった。この背景には、危機における現役政権への支持という面がまずある。危機対応を行っている与党の動きを野党が批判することは難しい。特にインド型の開発独裁のような形となっている現在のインドの現状では、新しい施策を次々に生み出せばそれに追随したり順応したりすることが手いっぱいとなり反対意見の方向には向いにくい。次に注目点としてあげらるのがインド人民党の一党支配に近いような議席配分である。今回の新型コロナウイルス危機は去年の選挙でインド人民党が圧勝した政治勢力構造の中で発生した。危機対応にあたる力のある安定政権が対応しその施策が政権への支持を加速するという形をとった。最大の注目点はモディ首相のコミュニケーション能力だろう。折り目、折り目にテレビで長い演説を行い。簡単な言葉でわかりやすくゆっくり規制の必要を訴えかけた。
(経済)
経済は成長の鈍化が深刻になっていた中で大規模な資金の投入が波状的に行われた。全面封鎖は選挙対策で盛り上げた経済からの下り坂にはきついもので海外の資金も逃げたが、政権側から見れば当然来るべき下りの波にコロナという口実が生まれ財政政策をとりやすくなったとも解釈できる。その内容は、いつものことながら農村、中小企業、商店など選挙対策にもなっているものだったが、それらがインドの国難としての位置づけの中で行われたために不満が生まれる余地はなかった。そのつけがタダでさえ財政赤字の国をどう導いていくのか。今後に課題を残している。ルピーも一時急落した。貿易赤字はさらに深刻な状況になるだろう。経済が形を変えるのはネットビジネスが加速するということだろう。ベゾス氏がインドを訪問し閉ざされた市場をこじ開けようしてしてなかなかうまくいかなかった通販も、ロックダウン生活を維持するためい中間層にとっては必要なものになってきた。失われた雇用をアマゾンが大量に募集すると発表もしている。リモート医療、ビッグデータを使ったビジネスなど他国より早く進むものとみられる。
(社会)
社会の変化が最も大きい。一方で街頭では厳しい規制が行われた。インド式マイナンバーのアダールが浸透する中での、感染防止移動追跡アプリの推奨と普及はプライバシーの意識が他国とは異なるインドでは社会のデジタル化を国家と一弾となって速度的に進む可能性がある。かつてインドのIT要人に世界のクラウド化とモノのインターネット化を聞いたときことがあるがそれが10年後になって実現していた。ネットとデータの展開は人材を生み出す社会構造とともにインドの特殊性に注目していくことは世界的にも重要になる。
(国際)
国際面ではアメリカとの距離感が本音レベルのものとしてわかった。トランプ大統領は自分が服用するマラリアの薬をよこすようインドに脅しをかけ、インドがそれに応じる姿勢を示した。大統領のインド訪問の直後のことでもあり、言いにくいこともいえる、けんかもするという友人関係は濃くなっていくものとみられる。法の支配だとか、民主主義とかの価値観外交よりもビジネスパートナーとしてのつながりが深くなる契機となった。中国との関係ではパキスタンへの中国の支援がみられたが、それを気に掛けるという段階では両国関係はなくなっているのだろう。AIIBがインドへのコロナ対策資金を拠出した。もとは武漢からのケララに感染がうつり他国同様風邪をもらった形なので、損害補償を求める動きもある。筋を通すインドらしい。国力の面では、アメリカの経済的打撃で、インドがアメリカを抜くの早まった。イメージとしては、10年後から8年後に縮まったという感じがある。3Gの時代がそこまで迫っている。日本との関係では、せっかくの年次交流がとだえ大きな打撃だ。危機をチャンスに思い切った外交を期待したい。
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