コロナ後の新秩序の中で国連の新理事国となるならインドはPKOや製薬で国際貢献を強めるのか
インドはPKO大国だ。国際貢献を梃に国連の常任理事国入りを目指している。国連は新型コロナ対策のためにPKO派遣を停止している。6月末までとのことだ。2020年4月7日、国連平和維持活動の帰国や派遣をやめている。派遣員が感染源にならないための措置だと説明。カリブ海のハイチでコレラ感染拡大が起きた際、PKOに参加していたネパール部隊が感染源と発覚したことがあった。現在PKOは西アフリカのマリやレバノンなどで13の作戦展開。日本も南スーダンに4人を派遣。PKOは紛争が起きた地域で当事者で停戦合意が成立した後に、再び紛争が発生しないように停戦や選挙の監視の役割を担う。
安全保障理事会選挙でインドが非常任理事国に選出されると報じられている。インドは、1950ー1951年、1967ー1968年、1972ー1973年、1977ー1978年、1984ー1985年、1991ー1992年、直近では2011年に、理事会の非常任理事国として選出されている。国連総会は、COVID-19制限による新しい投票の取り決めの下で安全保障理事会の5つの非常任理事国の選挙を7月行うことを決定した。インドはアジアの唯一の候補者で勝利するとされている。非常任理事国の選挙は、当初6月17日に予定されていた。インドの立候補は、中国とパキスタンを含むアジア太平洋グループの55人のメンバーによって昨年6月に満場一致で承認されていた。任期は2021年1月から始まる。
伝統的にUNSCの選挙は総会ホールで行われ193の加盟国がそれぞれ秘密の投票用紙で投票する。今年はCOVID-19の大流行のため加盟国に選挙が行われる日付を通知する書簡を回覧し、有権者となる国が投票を行うために特定の時間枠内に指定された会場を訪れる。
カナダ、アイルランド、ノルウェーは、西ヨーロッパの議席を争い、メキシコはラテンアメリカの唯一の候補。インドは21世紀の地政学的現実を反映して安保理の常任理事国としての地位がふさわしいとしている。
2011年からの任期の際には、5か国の改選でインド、南アフリカ、ドイツ、ポルトガル、コロンビアが選出され、2年間つとめた。日本、オーストリア、トルコ、メキシコ、ウガンダと交代した。
トランプ大統領と丁々発止のインドだが、当時はオバマ政権と蜜月。オバマ大統領はインドの安保理常任理事国入りを支持した。インドを訪問中に表明した。世界経済の成長をけん引しているという認識と、世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉や地球温暖化問題まで国際的問題に対する影響力を増しているとした。オバマ大統領はインド国会で演説し「今後数年間に、インドが国連安保理の常任理事国になることを含めた国連改革を楽しみにしている。インドは国際舞台の主役だ」。
インドは国連平和維持活動(PKO)における自国の貢献を,国際社会に対して積極的にアピールしている。2010年9 月,国連第65回総会における演説の中で,クリシュナ(S.M. Krishna)インド外相は,「平和維持活動と平和構築は,平和と安全保障の維持における国連の旗艦的活動」であると位置づけた。
インドのPKOへの参加は,1956年の第1次国連緊急軍(UNEF I)に始まる。インドは朝鮮戦争の休戦協定に基づく「捕虜管理隊」で中立国捕虜交換委員会の一員として,捕虜管理隊を任され,捕虜の国籍特定と交換の任務にあたった。イギリスの奨励で独立後間もないインドが朝鮮問題の処理に関与することになった。イギリスはアメリカの朝鮮問題への過剰な介入を警戒した。インドの「中立国」としての役割。1956年11月、国連総会決議によって初めて創設された国連部隊でPKO の様式の基礎となった第1次国連緊急軍(UNEF I)にもインドは参加国10カ国のひとつとして選ばれた。インドにとっての「国連主義」は反植民地の意味合いをも含む「非同盟」と同義。
1992年6 月に発表されたガリ国連事務総長の「平和への課題」に打ち出された新しいPKO の形の中でもインドのPKOは存在感を示した。国連保護軍(UNPROFOR)は現地で取材した。インドは非同盟諸国としてのユーゴスラビアとの良好な関係を理由に国連の部隊派遣要請を断り、ナンビアール准将を司令官のみとして派遣する。
反乱勢力への対処能力に優れたインドのPKO。国連シエラレオネ・ミッション(UNAMSIL)では」インドはおよそ1,500人から成る1個大隊を派遣。2000年5月ジェイトリー司令官は,反政府勢力,革命統一戦線支配地域での作戦に失敗し500人以上の国連部隊が反政府勢力に捕えられた。インド兵223人およびイギリス,ロシアを含む11か国からの軍事監視員が人質として残された。3,100人に増派されたインド軍を中心とした国連部隊がジェイトリー司令官の指揮で人質救出に成功した。
インド軍は,1950年代から北東諸州,1980年代にはパンジャブ州,そして1990年代以降はカシミール地区で武装勢力に対処する活動を行ってきた。9.11事件以降,アフガニスタンやイラクにおける米軍の対反乱作戦が批判される中で、インドの反乱対処能力が軍事専門家の注目を集めている。伊豆山先生の研究から以上抜粋。
国際連合安全保障理事会(UNSC)は国際連合の主要機関の一つで世界の平和と安全の維持を目的とする。5カ国の「常任理事国(P5)」と総会で選ばれる10ヶ国の「非常任理事国」の計15か国から構成されている。非常任理事国の任期は2年。現在はアジア2、アフリカ3、中南米2、西ヨーロッパなど2、東ヨーロッパ1の配分になっている。毎年半数を改選し投票は国連加盟国の無記名投票。選出には3分の2の賛成が必要。日本は非常任理事国として11期務め延べ22年間にわたり世界最多。
2019年1月1日 – 2020年12月31日。ベルギー、ドイツ、ドミニカ共和国、インドネシア、 南アフリカ共和国。
2020年1月1日 – 2021年12月31日。ニジェール、チュニジア、ベトナム、セントビンセント・グレナディーン、 エストニア。
安全保障理事会の改革案は理事国の拡大のこと。G4諸国は常任理事国入りをお互いに支持する日本、ドイツ、インド、ブラジルの連合。日本・ドイツ・インド・ブラジルの常任理事国入りに周辺の国が反対している。南アジアではパキスタンがインドに反対している。
G4諸国のうち日本とドイツはそれぞれ国際連合の分担金の世界3位、4位の拠出国。インド、ブラジルは国際連合平和維持活動への2大兵力拠出国。インドは民主主義国家として最大の人口を持ち核保有国。コンセンサス連合は、1990年代、安保理拡大に反対した。コーヒークラブともいわれる。
新型コロナの中でインドが「国際貢献」を試みているのが「途上国の薬局」との呼び名もある製薬大国としての役割。原材料の多くは安価な中国からの輸入に依存している。インドは安価な後発医薬品(ジェネリック)の最大の供給国でトランプ大統領が新型コロナに対する「画期的な薬」と絶賛してインドに輸出を求めた抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」を多くの国に供給している。ただし、副作用や効能についての問題も指摘されている。ヒドロキシクロロキンは500万錠を近隣諸国のほか、インド洋諸国、アフリカ、ラテンアメリカ、中央アジアといった薬が手に入りにくい途上国に無償で提供している。モルディブやクウェートなどには痛み止めの薬品を援助したり緊急医療チームを派遣したりしている。
10年前と異なり、インドは大国となった。国際貢献の実績も大きい。理事国としての声はいっそう大きくなるだろう。
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