電気自動車の低価格化はインドから始まるのか?【中国のあとを追うEV新興国のリキシャ】

 中国『Great Wall Motor』(長城汽車)の『ORA R1』が「世界で最も安い電気自動車」として話題になった。ORA R1のスペックはバージョンにもよるが価格 7.18万元、電池容量35kWh、航続距離(NEDC)351km、全長×全幅×全高が3495×1660×1560(mm)、最高出力35kW(約47.6PS)、最高速度102km/h、0-50km/h 加速5.6秒など。新車価格100万円程度で航続距離200km以上という。インドでの展開の可能性が様々に報じられた。
 「EV」価格破壊がインドから起きるのか。コロナの中でも自動車ショーには注目が集まった。2020年2月7日インドで2年に1度開かれる国際自動車ショー「オートエキスポ」では、実質100万円台前半で購入できる電気自動車(EV)を発表した地場大手のマヒンドラ・アンド・マヒンドラの多目的スポーツ車(SUV)。政府の補助金を使って82万5000ルピー(約127万円)。パワン・ゴエンカ社長。大気汚染の対策で厳しい排ガス規制が導入されるインドでEVの低価格化が進む。まだまだ価格が高い中国のEVより先行する。低価格の乗用車ナノで知られるタタ自動車もSUV「ネクソン」のEVを売り込む。約140万ルピーと中国よりは安い。タタ自のナタラジャン・チャンドラセカラン会長。17年発売のセダン「ティゴール」などのEV。マルチ・スズキはEVのコンセプト車を公開。
 インドの自動車市場は低迷。2019年の新車販売台数は約381万台と18年比で13%減少。ドイツに抜かれて世界5位に後退。金融機関の貸し渋りや経済成長の鈍化で個人消費が冷え込む。しかし充電ステーションなどインフラが整備されればEVの時代となる。低下価格化が実現すれば流れはインドから国外に広がる。
 2018年末時点の世界の電気自動車の数は510万台。前年比200万台増。世界最大のEV市場は中国で2番目がヨーロッパ。EV比率で世界トップのノルウェーでは2018年に販売された自動車の46%がEV。2013年に「National Electric Mobility Mission Plan 2020」を打ち出したインドは、2030年までに100%EV化という目標を掲げた(2016)。2018ー2019年、3輪車(リクシャー)を中心に国内のEV販売台数は76万台に上った。4輪のEV自動車販売は3600台。このあたりがインド式。移動は4輪でなくてもよい。2輪EV販売台数は12万7,000台。テスラ、BMW、アウディ、メルセデス・ベンツ、トヨタ、日産などの海外大手メーカーが輸入関税で足踏みする中、インド政府がタタ・モーターズやマヒンドラなど国産メーカーを支援する。
 2030年までに100%EV化目指すインドの中心的な役割を担うのがカルナタカ州。「EV・エネルギー貯蔵政策2017」で充電ステーション、EV製造特区、EVスタートアップ資金援助、人材育成、研究所の開設を支援。先進の人材は少なくないのがベンガルール。
 電気自動車の国内普及に向けて設置された自動車委員会(National Automotive Board)が推進する政策Faster Adoption and Manufacturing of Hybrid and Electric Vehicle(FAME)。補助金対象車種の多い州はマハラシュトラ州3万6,708台、グジャラート州3万1,577台、ウッタラカンド州2万8,985台。
 2019年8月、電気自動車のGST(物品・サービス税)が12%から5%に引き下げ、充電ステーションに課せられるGSTも18%から5%に引き下げ、自治体などが雇用するEバスの運転手のGSTも非課税となった。
 Reva Electric Car CompanyはベンガルルのMainiグループと米AEVとの合弁企業で2007年にリチウムイオン電池の電気自動車を発売。2010年5月にマヒンドラグループ傘下に入り2016年にセダンタイプのEV「eVelito」、商用カーゴ「eSupro」、4ドアタイプの「e2o Plus」を発表。Eリキシャの「Treo」「eAlfa Mini」も販売。デリーメトロにEリキシャを供給するSmartEと、シェアリングアプリのBlu Smartとも提携。
 タタはセダン「Tigor」。2010年1月、コンパクトSUVタイプのEV「Tata Nexon」を発表。1充電で193km走行、最短充電時間1時間(DCにて)であり、バッテリーは8年保証。バッテリーセルをTata Chemicalが、組み立てをTata Autocompが実施という、Tataグループによる統合的な生産で低価格を実現。
 チェンナイ拠点の商用車メーカーAshok LeylandはEVバス「Circuit」を販売。アーメダバード自治公社に納入。EVバスの商業化が進む。市バスのEV化は2024年には70~75%まで伸びると見込む。2018年1月にはイスラエルの空気アルミニウム電池メーカーPhinergyと提携。
 Eicher MotorsもEVバス「Skyline Pro」を販売。中国BYDとも技術提携。マディヤプラデシュ州インドール工場で生産、車体は9メートルでエアコン付き、1回の充電で177kmの走行が可能。2019年にはムンバイのバス公社BESTへのEVバスの40台の納車開始。

 電気自動車(EV)を除いた自動車への物品・サービス税(GST)の適用率(28%)が高水準に維持されている。雇用市場を支える製造業の安定成長が続かなければ、社会不安を引き起こす恐れがある。自動車業界の不景気が50万人の雇用減につながっているとも言われている。
 2030年までの完全EV化は野心的な目標だ。2030年までにEV化100%を40%に修正。公共交通ではEV100%目標を維持。インド自動車工業会がインド政府に提出した「2030年までに新車の40%をEV化、また公共交通機関では100%EV化を目指す」との意見書。
 イギリスとフランスは「2040年までにガソリン車とディーゼル車の発売を禁止する」という方針を打ち出している。これにはハイブリッド車やプラグインハイブリッド車が含まれ完全EV化は簡単ではない。ハイブリッド車が最適解という戦略もある。
 モディ首相は2019年電動車普及・振興政策として①購入補助(FAME2)、②関連部品の国産化(PMP;Phased Manufacturing Program for xEV)③2次電池産業の育成を打ち出した。脱・中国製電池を狙う。全量EV化は、2024年に3輪車、2025年に2輪車(150㏄以下)、2026年商用4輪車としている。4輪車は2030年のEV比率30%を掲げる。
 日本の2輪・3輪EVベンチャーである「テラ・モーターズ」はネパール、台湾、バングラディシュで販売事業を展開してきた。インドでは250店舗の販売網を構築し、3輪EVでは業界首位(19年の販売台数は1.5万台、シェア15%)にもなった。
 電気自動車は銘柄と技術のつながりがわかりやすく投資家の関心を集めやすい。国と国際関係も面白い。新興国がインフラの未整備状況を逆手に取り、先進的技術やサービスを導入することで先進国を一気に追い越す現象を「リープフロッグ現象」という。オートリキシャは民間タクシーとして大都市から農村に至るまで安価な庶民の主要な輸送手段となっている。決まったエリアで一定距離を走行するためEVに向いている。高級内燃機関から低価格コネクテッドへのゲーム・チェンジが進む。

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