JAI

「JAIは勝利を意味する」。インドを含む20カ国の首脳らが参加した?G20大阪サミットが2019年6月28日から29日の2日間、大阪湾に浮かぶ人工島「 咲洲 」 の 国際見本市会場「インテックス大阪」を会場に開催された。G20サミットは今回で14回目を数えるが、日本での開催は初めて。
 G20は、先進7ヵ国と欧州連合に12の新興経済国を加えた経済と金融の国際会議。G20のもとになったG7は、米,英,仏,独,伊,日,加の7つの国・地域は財務大臣・中央銀行総裁会議を定期的に開催していた。1990年からアルゼンチン,韓国,オーストラリア,メキシコ,トルコ,ブラジル,インド,ロシア,インドネシア,サウジアラビア,中国,南アフリカ,EUを加え、G20以外の国も臨時で参加する。G20全体で世界のGDPの9割強,貿易額の8割を占め、会議にはIMF,世界銀行,国際エネルギー機関などの国際機関の代表も参加するミニ国連といった国際会議だ。2008年の世界金融危機と世界同時不況,2010年・2011年のユーロ危機,ソブリンリスクなど,連続する経済危機が続き、重い役割を担うようになった。
 日本は、2013年4月にワシントンで開催されたG20の財務相・中央銀行総裁会議で、日本銀行・黒田東彦総裁がデフレ脱却のためのアベノミクスで大規模な金融緩和を打ち出した。G20のなかでも大きな財政赤字を抱える日本が,財政規律に反する金融緩和政策を採用することに警戒感も広がったこともあるが、9月にサンクトペテルブルグで開催されたG20の首脳会合では財政健全化に向けた具体的な取組に評価が寄せられた。経済中心の国際会議ではあるが、主要国の規模の頃合いのよい交渉の場となっている。
 同盟関係にある日米と、その対抗関係にある中ロが、インドを取り込もうとしている。インドは全方位外交で双方と向きあった。
 モディ首相が、「(日米印それぞれの英語の頭文字をとった)JAIは我々の言葉で『勝利』を意味する。協力はますます深まっている」と述べたのは、日米印の参加国の首脳会談の冒頭でのこと。笑顔を交えて参加国の協力を訴えた。会談では3カ国が首脳会談を今後毎年開くことで合意し、中国を念頭に日米が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想を進めることでも一致した。中国はスリランカやネパールなどインド周辺国で影響力を強めている。それに対抗するには日米との協力が欠かせない。
 6月28日9時20分頃から約15分間、第2回日米印首脳会談を行った。三カ国は、インド太平洋地域において,自由,民主主義,法の支配といった基本的価値を共有するパートナー。自由で開かれたインド太平洋の維持・推進における3か国の協力が極めて重要な意義を有することを改めて確認し、海洋安全保障,宇宙・サイバー空間を含む新たな領域における安全保障,質の高いインフラ投資の推進等を含む様々な分野で協力を推進していくことで一致した。
 米印の首脳会議では、冒頭でトランプ大統領は「インドとの関係が今ほど良い時期はなかったと思う」と述べた。しかし、インドとアメリカとの関係は難しい局面に入ってきている。米国がインドの市場開放が不十分だとして関税優遇措置を停止したことに対し、インドは報復として米国から輸入するリンゴやアーモンドなど28品目を対象に関税を引き上げた。原油の約1割をイランから輸入するインドは、米国のイラン制裁にも賛同できない事情がある。
 インドは中露との関係強化も進めた。インドがロシア製最新鋭地対空ミサイルS400を購入することにしている。インド、中国、ロシアの3カ国は保護主義や単独行動主義や不法な制裁を批判している。3カ国は反保護主義で一致したとインド外務省は発表し、中国政府も会談後の記者会見で「保護主義や単独行動主義が強まる中で、3カ国は協力分野を拡大することで一致した」とした。
 中ロ印3カ国の首脳会談が開かれたのは、2018年11月のアルゼンチンG20で12年ぶりに開かれた。2019年にキルギスで開かれた上海協力機構(SCO)会議でも顔を合わせている。中ロは今年が国交樹立70周年。4月にプーチン氏が中国を、6月に習近平国家主席がロシアを訪問するなど相次いで会談し、関係を強化している。インドは、その中に入るのか。日米、中露の双方と関係を強め国益を最大化するために連携する相手を使い分ける。冷戦時代に東西のどちらの陣営にも属さず非同盟の立場にあったインドの巧みな外交が始まっている。思いのほか、インドとロシアの絆は強い。
 G20は、日印首脳会談の場にもなった。
 2019年6月27日、午後1時50分から約20分間、安倍首相はモディ首相との首脳会談を行った。冒頭、安倍首相は、「改めて総選挙勝利をお祝いする。モディ首相と緊密に協力しG20大阪サミットを成功させたい。次回は私がインドを訪問する番であり楽しみにしている」と述べた。モディ首相は、「選挙後、最初に電話をしていただいた首脳である安倍首相に敬意を表する。令和の時代を迎えた日本と日本国民に祝福を伝えたい。10月の即位の礼にはインドの大統領が出席する。安倍総理大臣の訪印を楽しみにしている」と述べた。
 安倍首相は、「『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向け,閣僚級『2+2』の早期開催,質の高いインフラを通じた連結性協力,US-2を含む防衛・安保協力の具体化を進めたい。日印関係の裾野を広げる協力として,スタートアップ投資向けファンド構築,デジタル,宇宙,サイバー等を進めたい」と述べた。
 モディ首相は、「安全保障,デジタル,第三国協力,防災での協力を進展させていきたい」と述べた。両首脳は,高速鉄道事業の成功に向け,事業の進捗を確認し,事業の着実な進展を図ることで一致した。
 29日,午後0時25分頃から約80分間,河野太郎外務大臣がG20大阪サミット出席のため訪日中のジャイシャンカル・インド外務大臣と日印外相間戦略対話を行った。
 河野大臣は「外務大臣として再びお会いできうれしい」と新外相への挨拶を行った。「日印が果たす役割を国際社会に示す上で、合意した閣僚級2+2は重要で、早期開催に向けて調整していきたい。第三国やインド北東部での連結性強化に取り組むことは重要。日印関係の更なる深化のため,サイバー,宇宙分野の協力を促進していきたい。昨日の第2回日印米首脳会合開催を歓迎する。首脳会合で議論されたサイバーセキュリティーや質の高いインフラ投資について着実にフォローしたい。日米豪印の協力の進展を歓迎し、更に協力を深化したい。RCEPはインドを含む16か国で年内妥結を目指したい。インドの協力を強く求める。日本はNPT体制の維持・強化,CTBTの発効促進を重視,対話を続けたい」と述べた。
 ジャイシャンカル大臣は「日本とインドの関係をさらに強化したい。多忙の中も会談できることに意義がある,と述べた。「閣僚級2+2を早期に実現したい,地域の更なる発展のために連結性協力を具体化していくことが重要であり,日本との協力を強化していきたい。日印米首脳会合では大変よい議論が行われた,インドも日印米の枠組みを重視しており,日印米外相会合を行いたい」と述べた。
 会談の枠組みを増やす競争と、会談の回数を時間を増やす競争が過熱している。

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