月探査

火星の次は月。今度は日本と共同で月面を目指す。インド宇宙研究機関(ISRO)は2019年7月22日、南部アンドラプラデシュ州の宇宙センターから、無人月探査機「チャンドラヤーン2号」を打ち上げた。チャンドラヤーンはサンスクリット語で月に行く乗り物を意味するつまり「月号」だ。
月面着陸が9月に予定され、成功すれば、ソ連、米国、中国に次いで4か国目となる。

チャンドラヤーン2号は、月周回機と着陸機、月面探査車からなる。月の南極付近に着陸し、探査活動を行う。15日に打ち上げ予定だったが、直前に技術的障害が見つかり、延期されていた。
 インドは2008年に「チャンドラヤーン1号」を打ち上げ月の軌道に到達した。2013年には初の火星探査機も軌道投入に成功している。さらにインドは宇宙ステーションの建設も目指している。
 計画は、2007年11月12日、ロシア連邦宇宙局とインド宇宙研究機関が、チャンドラヤーン2号のプロジェクトで協力する協定に調印。国民会議派シン政権の下で、2008年9月18日に承認された。プロジェクトの費用はマンガルヤーンの時と異なり高額で約9000万ドルとされている。当初は、2013年にインドの月周回機と、ロシアの着陸機、月面探査車を打ち上げる予定だった。ロシア側のこの探査計画はルナグローブ 2と呼ばれていたが、2013年8月に計画が大幅に見直された。ロシアから独立し、インドの探査機だけを打ち上げる計画となった。背景にはロシアのフォボス・グルントミッションの失敗があるが、それ以上に技術の差が埋まり、政治上の地位の変化もある。2013年に予定されていた打ち上げが2017年から後ろにずれていくことになった。2013年8月の見直し前からインドが開発した月面探査車「プラギヤナン」に置き換える方針で開発が進められていた。
 宇宙船が月軌道に入ると、月面探査車を抱えた着陸機が月周回機から放出され、月面に着陸して、月面探査車が着陸機の中から外へ転がり出る。月面探査機は、車輪のついた小型車で月表面を移動し土や岩のサンプルを採取する。その場で科学的な分析を行いデータを周回機を通じて地球に送信する。アメリカ航空宇宙局と欧州宇宙機関も、月周回機に積む計測機器を提供している。
 着陸機はヴィクラムという。注目は、インドが初めて実施する月の南極域への軟着陸。南緯70度付近にある2つのクレーターに9月6~7日に着陸する予定。月の極域は、永久影と呼ばれるまったく日の当たらない場所があり、氷が存在する可能性がある。月の極域の水を資源として利用することができるか、2023年度打ち上げ目標の日印共同探査計画では、インド側が着陸機を、日本側は月面探査車と打ち上げロケットを担当し、JAXAとISROが共同で実施する計画になっている。ヴィクラムには、X線分光器、赤外線分光器、合成開口レーダー、光学カメラ、温度計などが搭載され、月の地質学や極域の地図作成などを行う。
 月面探査車はプラギヤナンという。6輪のローバーは、月面を500メートルほど走行する。着陸機とローバーの探査は地球時間で14日間の月の1日の間行われる。 プラギヤナンには月の地震である月震を観測する機器が搭載されている。アポロ計画の遺産を踏襲し50年間続けられてきた地球と月の距離計測にも貢献する月の南極域への着陸探査をめぐっては、中国の嫦娥4号が2018年に世界で初めて月の裏側へ着陸探査を行った。嫦娥5号は2020年頭に月の西側の「嵐の大洋」から玄武岩などのサンプルを採取し持ち帰る計画で火山活動が解明される可能性がある。中国は無人ロボット探査で一歩先を行く。JAXAとトヨタは月面「有人与圧ローバ」計画を進めている。
 チャンドラヤーン1号は、インド宇宙研究機関が、2008年10月22日に打ち上げた。月探査機の搭載機器が月面における水の存在を確定的とする成果を挙げた。インド人民党のバジパイ首相が2003年8月15日の独立記念日演説で2008年までに探査機を月へ送ると発表。 可視、近赤外線、低エネルギーX線、高エネルギーX線など月表面の観測を行った。観測機器の半分はNASAやESA、ブルガリア科学アカデミーのものだったが、打ち上げにはインド国産ロケットPSLVのブースター増強型であるPSLV-XLを使用した。アンドラプラデシュ州のサティシュ・ダワン宇宙センターから2008年10月22日に打ち上られ、11月8日に月周回軌道へと投入された。
 注目の一つは、探査機本体から切り離して月面に投下されるインパクター「Moon Impact Probe」(重量34kg)だった。ネルー首相の誕生日の2008年11月14日に探査機本体から切り離され月の南極に近いシャクルトン・クレーターに衝突した。インドは、アメリカ・旧ソ連・日本・欧州宇宙機関に続いて史上5番目に人工物を月面へ到達させることに成功。月面鉱物マッピングで水分子を広範囲に検出した。NASAがチャンドラヤーンの観測結果とそれ以前の観測結果を総合し、月における水の存在が確定的になったと発表した。チャンドラヤーン3号で月面からのサンプルリターンを行う構想もある。

https://www.isro.gov.in/chandrayaan2-mission
http://www.jaxa.jp/press/2017/12/20171206_isro_j.html

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