トヨタとスズキはインドで

トヨタ・スズキ

そもそもスズキがインドに進出したのはトヨタとの力関係からだったのだから、皮肉な話だ。
 スズキは、一九七八年に社長となった鈴木修氏が、コストダウンで価格を抑えた軽自動車「アルト」がヒットして会社の経営不振の苦境を抜け出したところだったが、技術面では、排ガス規制強化に対応するためトヨタからエンジン供給を受けるという状況で、とても日本国内での市場争いで上位を目指すのは難しく、リスクを覚悟での新興国の市場を模索していた。インドが受け入れを検討するのは、ルノーやプジョーのほか、日本からも、ダイハツを筆頭に、日産や三菱、富士重工業などの受け入れも検討されていたという。そうした中で、スズキは、トップの鈴木修氏が直接インド側との交渉にあたった。
 自動車メーカーのスズキがインドで成功しているのは、インド固有の事情に精通したからだろう。インドにおけるスズキの乗用車生産販売子会社であるマルチ・スズキは、インド自動車市場のシェアの約半分を占めている。自動車が速く颯爽と走るようにとインドの風の神「マルチ」の名前を冠したマルチ・スズキは、ホンダやトヨタに大きく水をあけている。モータリゼーションが加速するインドの自動車市場は二〇三〇年には年間一千万台規模になると予想されており、スズキが現在のシェアを維持できれば、インドだけで日本国内の全メーカーの総販売数に匹敵する五百万台という販売規模になることも夢ではない。
 スズキの「決断力」が力を発揮したのは、インドと日本での会社の立ち位置、つまりトヨタとの力関係を冷静に俯瞰し、ワンマン企業ならではの人情の部分も含む総合的な判断力で行動を起こしたからで、結果的に大きくライバル会社と差をつけることになった。
 トヨタ自動車とスズキは関係を一段と強化するため、互いに株式を持ち合う資本提携に踏み切ることを正式に発表した。次世代の自動車づくりで重要な鍵を握る自動運転技術の開発を協力して加速させるという。トヨタ自動車とスズキは、資本提携に踏み切ることを8月28日それぞれ開いた取締役会で決議。具体的にはトヨタがスズキの株式のおよそ5%を960億円で取得する一方、スズキも480億円を投じてトヨタの株式を取得する。海外の関係当局からの承認が得られ次第、実施するとしている。
 トヨタとスズキは、2017年2月に業務提携を結び、トヨタのハイブリッド車の技術をスズキに提供することや、スズキの主力市場であるインドで、互いに強みを持つ車を供給しあうことを決めるなど、協力関係を拡大してきた。一方で、自動運転の技術など次世代の車づくりに欠かせないAI=人工知能などを活用した先端技術の開発競争が激しくなり、グーグルやアップルなども相次いで参入し、自動車業界は大きな変革期を迎えている。両社は株式を持ち合うことで関係を強化し、自動運転など次世代の技術の開発を協力して加速させ、競争力を高めるという。

 車を所有せずに使うカーシェアリングなど、新たな使い方への対応もあり、つながることを意味する「コネクテッド」、自動運転の「オートノマス」、「シェアリング」、電動化の「エレクトリック」の頭文字をとってCASE(ケース)と呼ばれている。だからアメリカのIT企業のグーグルやアップル、配車事業大手のウーバーなどの新たなライバルとの競争が激しくなっている。
 海外メーカーでも、販売台数で去年まで3年連続で世界首位のドイツのフォルクスワーゲンとアメリカのフォードが2019年7月、自動運転と電気自動車の技術を共同で開発していくと発表。ドイツのBMWとメルセデス・ベンツのダイムラーも2019年2月、同様の共同開発のプランを発表している。
 トヨタ自動車とスズキは、3年前、2016年10月に提携の交渉を本格化させたという。成長著しいインド市場では、2020年ごろに電気自動車を投入することを目指し、トヨタがスズキに技術支援を行うという。インドでの販売を拡大のため、それぞれが強みを持つ車を相互に供給し合うことや、スズキの小型車をトヨタの工場で生産することでも合意。スズキがインドで生産する小型車を、トヨタのアフリカ市場向けに供給することも検討するという。2019年6月に、次世代の移動サービス関連でトヨタとソフトバンクが共同で設立した会社にスズキが出資することも決めた。
自動車市場の国盗り物語の台風の目になっているのは、どうやら巨大なインド市場のようだ。

トヨタとスズキはインドで” に対して2件のコメントがあります。

  1. 匿名 より:

    マルチ・スズキが26日発表した2019年4~6月期の単独決算は、税引き利益が143億ルピー(約230億円)と前年同期比27%減少した。国内の販売が落ち込んだ。一方で、人件費や製品の仕入れコストが増加した。マルチはインドの乗用車市場で50%超のシェアを持つが、4~6月の国内販売台数は19%減少、売上高は2055億ルピーと10%減。輸出を含む自動車販売台数は40万2594台と18%減少。国内販売の減少は金融機関の貸し渋りや景気減速も影響した。スズキが全額出資するインドの生産子会社スズキ・モーター・グジャラートから販売店に卸す車種も増え採算が悪化した。
    インドの乗用車販売は2018年夏から月次ベースで前年割れが続いている。マルチの2019年3月期は7期ぶりの減益。厳しい試練の時が続く。

  2. 匿名 より:

    スズキ、2020年3月期第1四半期決算を発表
    -国内での検査体制再構築による減産の影響に加え、インド四輪市場の低迷により減収減益-
    1.第1四半期決算の業績概況
    当第1四半期の業績は、国内での検査体制再構築による減産に加え、インドでの四輪全体市場低迷による販売減少の影響により、減収減益となりました。
    具体的な経営成績ですが、連結売上高は9,075億円と前年同期に比べ800億円(8.1%)減少しました。利益面では、営業利益は627億円と前年同期に比べ538億円(46.2%)減少、経常利益は724億円と前年同期に比べ607億円(45.6%)減少、親会社株主に帰属する四半期純利益は405億円と前年同期に比べ454億円(52.8%)減少しました。
    2.各セグメントの状況
    四輪事業につきましては、売上高は国内での検査体制再構築による減産の影響に加え、インド、パキスタン、インドネシアでの販売減少や為替円高の影響により8,171億円と前年同期に比べ835億円(9.3%)減少しました。営業利益は売上減少に加え、為替円高、諸経費等増加により546億円と前年同期に比べ548億円(50.1%)減少しました。
    二輪事業につきましては、売上高はインド、フィリピンでの販売増加等により656億円と前年同期に比べ13億円(2.0%)増加、営業利益は23億円と前年同期に比べ2億円(7.5%)増加しました。
    マリン事業他につきましては、大型船外機「DF350A」の北米を中心とした販売貢献等により売上高は248億円と前年同期に比べ22億円(9.9%)増加、営業利益は58億円と前年同期に比べ8億円(16.5%)増加しました。
    所在地別につきましては、日本およびアジアで減収減益となりました。営業利益につきましては、日本で261億円と前年同期に比べ246億円(48.6%)減少、アジアで220億円と前年同期に比べ316億円(59.0%)減少しました。
    3.連結業績予想
    連結業績予想につきましては現段階では据置とさせて頂きますが、見通しが厳しいことから、今後の動向も踏まえ、新たな予想を発表させて頂きます。
    (参考…期初予想)
    売上高 3兆9,000億円(前期比 0.7%増)
    営業利益 3,300億円(前期比 1.7%増)
    経常利益 3,400億円(前期比 10.4%減)
    親会社株主に帰属する当期純利益 2,000億円(前期比 11.9%増)
    (為替レート) 1米ドル=110円、1ユーロ=125円、1インドルピー=1.58円、100インドネシアルピア=0.77円、1タイバーツ=3.40円
    ※連結業績予想については、現時点で入手可能な情報及び仮定に基づき算出したもので、リスクや不確実性を含んでおり、当社としてその実現を約束する趣旨のものではありません。実際の業績は、さまざまな要因の変化により大きく異なることがありえますことをご承知おき下さい。
    ※実際の業績に影響を及ぼす可能性がある要因には、主要市場における経済情勢及び需要の動向、為替相場の変動(主に米ドル/円相場、ユーロ/円相場、インドルピー/円相場)などが含まれます。

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