東方経済フォーラムで印露接近

 安倍首相とインドのモディ首相は2019年9月5日、東方経済フォーラムが開かれたロシア極東ウラジオストクで約45分間会談し、安倍首相の12月に訪印が決まった。安倍首相は、モディ首相の誕生日(9月17日)に祝意を表した。モディ首相は、「先日インド国防大臣が訪日して日印防衛相会談が開催され,防衛や戦略的関係構築につき意見交換できたことをうれしく思う,自分も安倍総理も同じ9月生まれであり,共に日印関係を前進させていきたい,日印物品役務相互提供協定(ACSA)の合意に向け前進していると承知しており,安倍総理大臣のインド訪問の前に閣僚級2+2を開催する準備ができている」旨、述べた。
 安倍首相からは,閣僚級「2+2」の早期実現,各軍種間協力を含む防衛協力,サイバー分野,IT分野,食品加工分野,健康医療分野,高速鉄道事業,人的交流などでの具体的な進展を得て,日印関係の幅を広げたいとの意向を表明した。
 モディ首相から,インド太平洋の共通ビジョンの実現に向けた取組、安全保障分野、デジタル分野、第3国協力といった分野での協力を具体化させていきたい旨、述べた。
 東方経済フォーラムでは、インドがロシアに急接近している。モディ首相は、2019年9月4日、ロシア極東ウラジオストクでの東方経済フォーラムに初参加してプーチン大統領と会談した。二人は、ロシアの最新鋭の砕氷船やLNGタンカーを建造する造船所を視察した。大型船で石油や天然ガスを世界に輸出したいプーチン氏は、モディ氏に投資を呼びかけた。インドは投資を求められる関係になってきたのだ。会談では、両国はロシア製兵器部品の共同生産、ロシアの石油や天然ガスの生産、液化天然ガスのインド向け輸出の拡大に向けた協力などで合意。インド初の有人宇宙飛行計画に向けた訓練をロシアで行う宇宙協力でも合意した。プーチン氏との会談後の共同発表でモディ首相は「インドの首相として初めて極東を訪れた。インドとロシアの信頼に基づいた特別な友好関係は新たな高みに至った」と述べた。プーチン氏も「インドとロシアの関係は真に戦略的で、格別に優先的な性質を持っている」と応じた。
 かつてはソ連と友好関係をもっていたインドは、ソ連崩壊後アメリカに接近し、最近は「自由で開かれたインド太平洋」構想の枠組みにも参加している。 しかし、トランプ大統領の登場後、対米関係は「悪化」してきている。2019年6月にはアメリカから「市場開放が不十分」として関税優遇措置を停止され、インドはアメリカ産のリンゴやアーモンドなど28品目に対する報復関税を課している
 ロシアは2014年に隣国ウクライナのクリミア半島を一方的に併合して以降、欧米との関係悪化が進み、翌15年からは「アジアへの玄関口」と位置づけるウラジオストクで毎年、東方経済フォーラムを開き、アジア諸国の投資呼び込みを図ってきた。2018年のゲストは、中国の習近平国家主席。今年はモディ首相だ。 ロシアは、インドとの最接近を図る。ジャム・カシミール州の自治権を剥奪問題では、各国がインドを批判する中、インド支持を表明。インドは有望なエネルギーの輸出先だ。

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