ガガンヤーンへ

 月の大気は非常に薄いためパラシュートが使えない。放物線を描きながら降下していく軌跡が月面の直前で画面から消えた。止まったまま動かないモニターにじっと目をやる科学者たち。両手の指を組む、うつむく。インドによる無人探査機を初めて月の南極に軟着陸させる試みは通信途絶という形で「失敗」に終わった。2019年9月7日、ISROが発表。月面から2マイル(約3.2km)にも満たない上空で、インドの宇宙開発の父ことVikram Sarabhai、ヴィクラム・サラバイ氏にちなんだ名前が付けられた着陸機と管制室との通信が消えた。
 着陸の試みを見守っていたモディ首相は、責任者から報告を受けると、インドのNASAにあたるISRO(インド宇宙研究機関)の責任者にねぎらいの言葉をかけて、その場を後にした。「ISROへの信頼は失われていない。努力には価値があった。我々の宇宙開発の最高の瞬間はまだ先だ」。
 ISROの声明。「ヴィクラム着陸機は、高度35キロメートルから、予定通りの軌道に沿って降下した。着陸機に搭載されたすべてのシステムとセンサーは、この時点まで優れた機能を発揮した。可変推進技術などの多くの新しい技術を実証したL。ミッション目標の90~95パーセントが達成された。着陸機との通信は喪失したが、月の科学に対する貢献は続く」。
 着陸機を放出したあとも周回機は正常に機能し続けている。分解能0.3メートルのカメラなどのミッション機器を搭載した周回機の働きだけでも画期的だ。
 ISROは2019年、独自の宇宙ステーションを設置し、太陽と金星へのミッションを行う計画を明らかにしている。独立75年を記念し2022年に、サンスクリット語で宇宙輸送機を意味するガガンヤーンという名の有人宇宙飛行ミッションを行い、宇宙ステーションの開発に着手する予定だ。インド政府はガガンヤーンのために、1000億ルピー(約1500億円)の予算を計上している。(PHOTO ISRO)

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