ベッド不足、ロックダウン一週間でただの思いつきではないインド式再生術の病院列車と屋形船を調べてみました

 新型コロナウイルスの感染拡大が医療体制を脅かしている。地域医療を支える病院で集団感染が発生し転院先の病院にも問題が波及。都市部ではベッド不足が現実味を増してきた。病院のベッド不足が深刻化するニューヨーク州には2020年3月30日に米海軍の病院船が到着した。緊急事態に病院船が果たす機能は大きい。2004年のインド洋大津波の際にも取材したことがある。ニューヨークの病院船「コンフォート」は750床のベッドがあり最大1000人の患者を収容できる。新型コロナウイルスに感染していない患者を受け入れる。

 インド鉄道省は3月28日、隔離病棟不足に備えて、列車を臨時の隔離病棟改造する計画を発表した。毎週170両の客車を隔離列車に改造する。インドは25日から21日間のロックダウン・外出禁止のさなかだが、生活に必要な買い物や食料品店、銀行などの営業は例外として認められている。

 全長7億7,925万kmに及ぶ鉄道のネットワークはインドの公共交通機関の生命線。年に80億人以上の乗客を運ぶ。ロックダウンの下でも鉄道は9,000本の旅客列車と3,000本の貨物列車が毎日運行し野菜、果物、牛乳などの食料品や医薬品などを運んでいる。

 インドの病院列車の歴史は長い。1991年7月にムンバイのチャトラパティシバジ空港から病院列車の運行が始まった。「ライフライン・エクスプレス」と呼ばれ外科手術癌やがんの治療まで行う。僻地医療に貢献している。インドのNGOが当局と交渉し、3両分の列車と水と電気を供給してもらうことになった。医師は近くの医科大学や病院からボランティアで参加。1か月間到着した土地で過ごす。20人の救急隊員が待機、120万人以上を治療した。歯医者、X線、薬局もあり、医療従事者の宿泊施設や無線LANも完備している。2007年にインド政府がHIV対策のために「レッドリボン・エクスプレス」と「サイエンス・エクスプレス」も始めている。

 公共の医療システムの空白を埋める文字通りの命の列車だ。インドの地方部では、政府が運営する地区病院が医療の中心。医療施設も医師も不足し全人口約13億4000万人の70%は医療へのアクセスが制限されている。国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)によると、2015年にインドで死亡した5歳未満の子どものうち約120万人は医療を受けられれば避けることができた死だった。

 ニューデリーで先月中旬イスラム教徒による宗教上の集会が開かれた。デリー政府が200人以上の集会を禁じるなか、3月中旬には1,000人以上が参加するイスラム教徒の集会が開かれた。警察官が数百人に新型コロナウイルス感染症の症状が見られるとして病院に「連行」した。集会にはマレーシア人やインドネシア人も参加していた。

 デリー首都圏政府のケジリワル首相は3月31日、集会に参加した24人の新型コロナウイルス感染が判明したと発表。400人以上が発熱やせきなどの症状で入院し、約1100人を隔離し経過観察していることも明らかにした。イスラム教徒の友人からは、神に祈ることと感染防止とは別ものだと訴える、開明派の宗教指導者の活動も聞く。集まらないようにと訴えているという。

 感染した人々をどこに収容するのか。病院列車はただの思いつきではないインド式再生術の一つに見える。

(追加20200418)ケララ州ではハウスボートを患者の隔離病棟に変えた。屋形船の所有者が同意した。ハウスボートはボーテルとも呼ばれるホステルとして利用される船。係留されているものもあれば、陸上に固定されているもの、旅客を乗せて就航するものもある。日本では氷川丸やスカンジナビアなどが知られるが、インドのハウスボートはもっと小さい。
 ケララ州のハウスボートは、米とスパイスをクッタナード地区からコチン港に運んでいた船が改造された。病院船は同僚のカメラマンが取材した。私が取材したのはカシミールのハウスボート。密室になるので危険も伴う。ケララの屋形船は「シー・クッタナード」の名で川下りの観光も知られている。屋形船は、長さが約20メートルあり、幅は5メートルの木造船。船体のアンジリの木の板はココナッツ繊維のロープでまとめられている。屋根は竹の棒とヤシの葉で、ボートの外側はカシューナッツオイルで塗装されている。
 ミニマムな生活は非常時に強さを見せる。

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