新型肺炎、インド人が飲んできた日本と違って苦いトニックウォーターとクロロキンについて調べてみました

全土封鎖のインドは一斉に光をともして団結した。2020年4月5日夜、人々が部屋の明かりを一斉に消してベランダなどから蝋燭の火やスマートフォンのライトで光を浮かび上がらせた。3月25日から全土が封鎖され食料品などの買い物を除いて外出が禁止されている人々の心に届いたのだろうか。モディ首相は4月3日の演説で「みんなでウイルスの拡大という暗闇に立ち向かおう」と呼びかけた。ウイルスの拡散も防がなければならないが人心の動揺も防がなければならない。ストレスや不満を和らげたいモディ首相も首相公邸でランプに火をともした。ツイッターには「健康や繁栄をもたらし、邪気を払うランプの光に敬意を表す」と書き込んだ。

 今年は春の祭りのホーリーを祝うことができなかった。ディワリはインドのヒンドゥー教のお祝いで別名「光のフェスティバル」とも呼ばれる。人々は祭日を迎えるにあたって家の大掃除をし、新しい洋服を整える。ヒンドゥー暦の7番目の月で、新月の日が祭りの日となる。収穫の時期でもあるため、豊穣と幸運の女神ラクシュミに祈りを捧げる。ヒンドゥーの背景が強く感じられる風習でモディ首相は国民の一体感を図る。イスラム教徒のモスクでの集会はクラスターの危険が指摘されている。酒でも飲んでうさを晴らしたい気分だが、ヒンドゥー教徒もイスラム教徒も飲酒でストレス発散はしない。

  ジントニックは蒸留酒のジンと清涼飲料水のトニック・ウォーターを混ぜたもの。イタリアの修道士が作ったとされるジンは18世紀の産業革命のロンドンのスラム街で広がる。重労働の疲れを癒すビールより安い飲み物。ハイボールもウイスキーとトニック・ウォーターで作る。日本では角ハイで庶民の飲み物になった。

海外のトニック・ウォーターには「キニーネ」という薬品が入っている。 キニーネの入ったトニック・ウォーターは、熱帯地方のイギリスの植民地でマラリア原虫対策の特効薬として飲まれてきた。 キニーネには独特の苦みがある。南米大陸のアンデス山脈に自生するキナ属キナノキの薬草から抽出する。日本では、キニーネの副作用のために自体は食品に添加できない。添加するときはキニーネを主成分とする「キナ抽出物」となる。これはキニーネとは別もの。

 キニーネはベトナム戦争当時のアメリカ軍の野戦病院でもマラリアの薬として使われた。キナノキは常緑の低木または高木で南米のアンデス山脈に約40種が分布し数種がキナとして薬用に利用される。樹皮のキナ皮から得られたキニーネはマラリアの特効薬として知られている。スペインのペルー総督チンチョン(Chinchon)伯爵夫人はマラリアにかかったがキナ皮を服用して全快した。その名を由来とする。イギリス植民地時代のインドでは、労働者がマラリアを恐れてトニック・ウォーターを飲んでいた。

 抗マラリア薬のキニーネは天然由来でコストが低く「マラリアの特効薬」となった。キニーネからの生産物は紫外線を当てると青白く発光するといわれる。天然物合成の観点からも注目されてきた。

 クロロキンは抗マラリア薬のひとつ。視覚障害などの副作用があり、日本では昭和50年(1975)に製造・販売中止となった。1934年にドイツの製薬メーカーであるバイエルがリン酸クロロキン(chloroquine)の合成に成功しマラリヤに対する治療薬として用いられてきた。クロロキンの抗マラリア作用はキニーネの十数倍から数十倍も強力だとされる。赤血球内の繁殖体に強く作用し熱帯熱マラリアはほとんどが治癒するとのこと。ウイルスの増殖を抑制する効果が報告されている。2020年には新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の治療薬として日本を含む複数の国で投与され、症状が改善した症例が報告された。

 クロロキンについてトランプ大統領は3月23日、「神からの贈り物」だと発言した。専門家は大規模な臨床試験が必要だとして慎重だが、トランプ氏は抗マラリア薬2種について緊急時の限定的な使用を許可した。フランスのオリビエ・ベラン(Olivier Veran)保健相は、最重症患者にのみクロロキンとヒドロキシクロロキンの使用を可能とすると述べた。一方で米アリゾナ州では今週、水生寄生生物を駆除する際に使用されるクロロキンの一種を服用した男性が死亡する例も発生している。

 トランプ大統領はモディ首相にヒドロキシクロロキン薬を送るよう要請したと述べた。ヒンドゥー紙は、インドが公式方針を変更し、COVID-19の治療に使用されている薬物であるヒドロキシクロロキンの輸出を、ドナルドトランプ大統領がモディ首相に米国が注文した薬物の量を発表するよう要請する数時間前に禁止したと伝えている。

 (追記20200408)インド外務省は2020年4月7日、新型コロナウイルスの治療薬として期待される抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」の禁輸措置を一部解除すると明らかにした。国内需要のために禁輸措置をとっていたものだ。トランプ大統領はモディ首相と4日に電話会談を行い、インドに輸出を要請し、輸出を禁じるインドの決定には報復する可能性も示していた。まったく脅しもここまでくると手に負えない。この脅しに屈したのかそうでないのか、感染状況が深刻な国や必要としている近隣諸国に適切な量を輸出するということだ。ロイター通信によると、ニューヨーク州などで、入院患者へのヒドロキシクロロキンの投与が急速に拡大しているとのこと。効果があるかどうかは不透明だとの指摘もある。ヒドロキシクロロキンは失明や心臓疾患など副作用のリスクも指摘されている。判断は難しいようだ。(まで追記)

 アビガンは、富士フイルム傘下の富山化学工業が開発した阻害剤の商品名で一般名はファビピラビル。インフルエンザ治療薬でタミフルより強い治療効果を有する。2020年2月22日、加藤勝信厚生労働大臣が新型コロナウイルス感染症の治療に用いる考えを示した。ウイルスを増殖させる酵素を阻害する。菅義偉官房長官は3日の記者会見で、約30カ国から外交ルートに提供要請が来ており希望する国に所要の量を無償で供与すべく調整を行っているとした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください