医療従事者の保護、コロナ危機がより厳しい国インドで導入された厳罰懲役7年から学ぶこと

医療従事者が疑われている。感染を拡大させているとの誤った認識だ。インドでは感染者が2万人を超え不安が広がっている。やりどころのない不満が、医師や看護師への暴力に向かう。あまりの不条理に対しインド政府は、医療従事者への暴力や嫌がらせに最長7年の懲役刑を科す方針を決めた。モディ首相はツイッターで「医療従事者はウイルスと勇敢に闘っている」と述べる。
 2020年4月22日、感染症法の改正が閣議決定され大統領令で成立。医療従事者への暴力に特化した罰則として6か月から最高で7年の懲役刑が設けられた。最高50万ルピー(約70万円)の罰金刑も定めた。保釈は認められない。コロナ戦士を守る厳しい法律となっている。

インドで確認されたCovid-19症例数は20,471人で、これまでに652人が死亡し、3,949人が回復。閣議では専用の治療施設と検査室を設置するための「インドCovid-19緊急対応および医療システム準備パッケージ」のRs 15,000クローの予算を承認した。
 インド医師会(IMA)がテレビ会議でインド人民党のアミット・シャー内相と会談。医師保護法の制定を求めた。ロックダウンが延長される中での要求だ。マハラシュトラ州ナグプールの封じ込めゾーンを訪れた医療従事者は、調査を行っている間、彼らが何人かの人々に唾を吐きかけられ、石で縛られ、虐待されたという。チェンナイでは2020年4月19日、医師の遺体を埋葬しようとした遺族を地元民が殴打・投石し重傷を負わせた。医師が入域するのを近隣住民が拒否したり、大家に退きを通告されたりしている。
 残忍さは警察官攻撃にもみられる。西ベンガルでは、封鎖の最中に救援物資が与えられなかったと主張する地元民との衝突で3人の警官が負傷。マディヤプラデシュ州のシェプール地区で警察官が家族のコロナウイルスの症状を確認できるように依頼。投石の攻撃を受けた。ムンバイでも警察官に石を投げた若者が逮捕された。ロックダウンの最中に必需品を買いに出かけていた貧しい人々を殴打したとされる警察官の事件も報道され動画がSNSにアップされている。

 インドでも地方自治体との対応のずれが生じている。こちらはもっと深刻な事態だ。政治的対立はインド人民党が率いる中央政府と西ベンガルのトリナムル会議派主導の政府の間で続き、ママタ・バナジー首相は中央政府が彼女の州に欠陥のある検査キットを派遣したと主張した。IT拠点のベンガルールがあるカルナタカ州政府は、2020年4月23日以降、州内のロックダウン基準の一部緩和を発表。ITサービスの必要最小限のスタッフと、特定の建設活動、梱包材の製造、宅配サービスなど運用の便宜を図った。電気技師、IT修理、配管工、自動車整備士、地元の大工などの自営業者が提供するサービスもロックダウンから免除された。ウッタル・プラデーシュ州のヨギ州首相は、他州で孤立した住民が希望すれば帰国させることを認めると発表した。アッサム政府は、4月25日から3日間立ち往生している人々の移動を許可すると発表した。モディ首相は4月27日の朝に各州首相との3度目のビデオ会議を開催し国の分裂回避に努める。モーニング・コンサルトの世論調査では2020年4月14日現在、モディ首相の支持率は68パーセント。政府系のメディアは世界で最も支持される指導者だと評する。

西ベンガルでは検査を行わないことへの不満も強まっている。西ベンガルはCOVID-19について7,034人を検査したが、アンドラプラデシュ州では6倍の41,512個の検査が行われているという。ママタ・バナジー州首相は西ベンガル州の低いテスト数についてインド医学研究評議会(ICMR)を非難。医療専門家グループが州首相に公開書簡を送り、COVID-19患者の死因についての「大規模なテスト不足」と「データの誤った報告」について懸念を表明。ベンガルやベンガル出身の医師たちが不十分な検査について特に西ベンガルで不安だと指摘した。西ベンガルは1日に約1,000のテストを実施する能力があるにもかかわらず、全国平均の100万あたり約156.9に対して、100万あたりわずか33.7のテストしか実施されていないという。西ベンガル州は15人の死亡が報告されているがデータについての疑問の声も上がっている。
 新型コロナウイルスがなくてもインドの医療現場は過酷だ。酷暑期には45℃を超える暑さとなる。冬には5℃前後まで気温が下がる。全土で水事情が悪く,上水道は1日に数時間程度しか供給されない。多くの家庭ではタンクを設けて水をため蛇口から出る水道水をそのまま飲用とすることはできない。腸チフス,パラチフス、細菌性赤痢,アメーバ赤痢,コレラ,A型肝炎,E型肝炎のほか、ジアルジアや回虫などの寄生虫疾患を含め消化器感染症が多い。デング熱やチクングニア熱、マラリア、結核にも注意が必要で、路上の犬にかみつかれると狂犬病の恐れもある

 実際に50人以上の医師、医療スタッフが検査で陽性だったという報道もある。病院での個人用保護具(PPE)の目覚しい不足で医師や医療スタッフが最も脆弱になる。2020年4月3日のインディア・トゥデイによると全インド医科学研究所(AIIMS)の医師も陽性反応を示したとのこと。

 ベンガルールでは、医療従事者が戸別訪問して人々の症状をチェックの際、攻撃。ボパールでは、緊急シフトから戻った医師が警察に止められウイルスをまき散らしたと警棒で殴打。ニューデリーでは、医師が地元の果物市場で買い物客に襲われた。
 アンベドカル大学デリーの社会学者、プリヤシャ・カウル氏は「新しいアンタッチャブル」と指摘する。カースト制度は、浄と不浄、純粋なものと汚染されているもの、触れられるものと触れられないものに基づいている。これは手に負えないもの。恐れられる必要があり、遠ざける必要がある人々の新しいカテゴリー
 医療従事者に集合住宅のバルコニーから拍手を送る人々の姿も見られた。2020年3月22日、家を出れない住民が医療従事者に対し団結と感謝を示しコビンド大統領や閣僚が中庭などで謝意を示した。インド陸軍の兵士や俳優のアミタブ・バッチャンも参加した。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください